大学野球 東洋―慶応 感想追記  20110614

第60回全日本大学野球選手権・決勝戦の感想の追記です。

延長10回表、東洋大の投手・藤岡は、二死走者なしから
慶応大の二番バッター金田に四球を出した時、足を痛めた。
慶応大の次のバッターは、宮本真己(4年・慶応高出)。
ここでの宮本の態度がよかった。
宮本は、バントの構えをしなかった。

二死であるから、実際にはバントはしないにしても、
足を痛めている投手に対し、バントの構えをしてダッシュさせ、
投手を揺さぶるのは、いわば常套手段であるが、宮本はフェアなプレーに徹した。
結果は見逃し三振であったが、宮本が姑息な手段をとらなかったことは
大いに称えたい。

試合後の両軍あいさつで、慶応大の四番・伊藤は、藤岡に声をかけ、
二人はしばらく言葉を交わしていたが、そのような気持ちのいい試合になったのは、
両チームがフェアなプレーに徹したということもあるだろう。

あれを思い出した。

ロス五輪であったか、柔道の決勝戦で、エジプトのラシュワン選手が
日本の山下の痛めているほうの足を攻めず、フェアプレーとして称えられたことが
あった。
(ただし、ラシュワンが痛めていない足を攻めたほうが、山下は痛めている足で
踏ん張らねばならず、より効果的だったとする見方もある)

さらに、あまり関係ないが、こんな逸話も思い出した。

左投手の江夏投手は、二塁ランナーの三盗を警戒するのが苦手だった。
そこで、気のおけない仲である阪急の福本豊選手にこう泣きついた。
「頼むから三盗はやめてくれ。背中のランナーなんかよう見えん」
福本は承知した。

それで試合の時、ピッチャー江夏、二塁ランナー福本という状況になった。
監督から三盗のサインが出るが、福本は江夏との約束があるから、
サインに気づかないふりをして、走らない。
そんな時に限って、江夏が打者に手こずり、なかなか打ちとれない。
とうとう福本は江夏に怒鳴ったという。
「はよ打ち取れや! サインに気づかんふりを続けるのも大変なんやで!」

昔のプロ野球には、こうした「あぶさん」の一コマのような逸話が
数多くあったようです。