最後にしっぽをふってくれた 100105


実家で飼っていた犬が、昨日死んだそうだ。
20年くらい飼っていた老犬だった。
最後の半月ほどは、歩けなくなり、おむつをしていた。

私は家族の中で、この犬との交流が薄いほうだった。
もともとあまり犬が好きじゃないのだ。
両親や弟は、よく散歩に連れて行っていたが、私は無関心だった。
「コロ」という名前だったので、てっきりオスだと思っていたら、
メスだということも最近知ったくらいだった。

この犬は元は野良犬で、父親の職場だった学校に紛れ込んできたのを
父が連れ帰り、飼うことにしたのだった。
最後まで母におむつを替えてもらうなどかわいがられていたので、
野良犬出身犬としては幸せな一生だったと思う。

私はこの正月、3日まで実家で過ごした。
3日の夕方、東京に戻る際、母親が「コロちゃんもう元気なくなってきたから、
最後のお別れをしていったら。」というので、犬を見ると、
寝たきりの犬は、私の為にしっぽをふった。
おそらく、母親が私を大切にするので、「この背の高い人は母親にとって
大事な人間らしい」ということを推測して、私にサービスしたんだと思う。
その翌日、犬は亡くなったわけである。

父親は「いい子だったなあ。最後も正月休みを避けて亡くなって……」
と偲んでいるという。
犬はまぎれもなく我が家の家族だったし、死というものがどういうものかを
私に教えてくれたような気がする。
今頃天国で楽しく駆け回っていると思う。