(シナリオ)6羽のかもめ「扶養家族」「個人的事情」091202
作・倉本聰
「扶養家族」
劇団の座付き作家・桜田と、座員女優のかおり。
同棲中のこのカップルが猛烈なケンカをしている。
(桜田はかおりのヒモ)
座員俳優の大介はスナックに桜田を連れ出し、ケンカの理由を訊く。
ケンカの原因は、同棲開始記念日のプレゼントにあった。
稼ぎのいいかおりは桜田に高級コートをプレゼントした。
でもそのコートに値札が取り忘れて付いたままになっていた。
一方桜田は露店で買った500円のペンダントをプレゼントとして
用意していた。相手が高級コートをくれたのに、と思うと渡せなかったという。
それがケンカの原因。ヒモである自分の立場に桜田は傷ついていた。
大介と桜田がそんな話をしていると、ヤクザ(室田日出男)が
ちょっかい出して来て、大介と桜田は室田のなじみの店、果ては
室田の自宅へと強引に連れて行かれる。
大いにびびる大介と桜田。
ところが実は、室田はトルコ嬢Aのヒモで、Aが大介のファンなので
Aの誕生日のプレゼント代わりに逢わせてやろうと室田は大介を
無理やり連れて来たのだった。
室田も、ヒモである自分の立場にみじめさを感じているのだった。
大介・桜田の行方がわからなくなり、かもめ座のみんな、そしてかおりも
心配していた。
帰宅した桜田はかおりと仲直りするのだった。
(怖い感じで登場した室田が実は……という、このシリーズの
定番パターン。かおりを演じたのは夏純子。僕が夏純子のファンだという
ことも、このドラマを観たい理由のひとつである)
「個人的事情」
大介が、東芝劇場の主役に抜擢される。名誉ある番組。台本の出来も良い。
強く推してくれたのはテレビ局の制作部長(中条静夫)だった。
ところが、台本を読んだ大介は番組を降りたいと言い出す。
作品の終盤に、大介演じる息子が母親にきついことを言う場面があり、自分の
母親がこの場面を見たら傷つくだろうと大介は心配し、降板を申し出たのだ。
部長は大介の降板希望を聞いて激怒。
やむなく大介は、「兄が死んだので葬式などで多忙」というウソの理由で
降板する。
ところが部長がそれを聞き、大介の実家に喪服を着て行ってしまった。
部長は(当然死んでなどいない)大介の兄(大滝秀治)と対面し、目を白黒。
ところが実は、中条と大滝は小学生時代の同級生だった。
小学校以来の再会を喜び合う中条と大滝。
大介の母(大滝の母)は、「息子を大きな番組に抜擢していただき
ありがとうございます」と中条に礼を言う。
中条は大介が降板を願い出た心情を理解する。
でも中条は大介を東芝劇場に出したい。
そこで中条は大滝に、「家族に見せたくない番組が放送される時、
その番組を見せないための秘策」を伝授する。
それはテレビの真空管をこっそりと外して、故障させてしまうというものだ。
大滝はその作戦でいくことにし、大介は晴れて東芝劇場に出演する。
そして迎えた放送の日。放送後、大介が実家に電話すると大滝が出て、
真空管外し作戦は母親にバレ、ドラマを家族で観てしまったという。
ところが問題のセリフの時、母親は居眠りしていたので大丈夫だったという。
ほっとする大介だった。
(これまた傑作。互いに相手の気持ちを大切にしようとする、善人たちが
織りなす悲喜劇が描かれている。「出てくるのは善人だけ、でも困ったことが
起きてしまう」というのは、「男はつらいよ」の例を引くまでもなく、
最良のドラマと私は考えている)
作・倉本聰
「扶養家族」
劇団の座付き作家・桜田と、座員女優のかおり。
同棲中のこのカップルが猛烈なケンカをしている。
(桜田はかおりのヒモ)
座員俳優の大介はスナックに桜田を連れ出し、ケンカの理由を訊く。
ケンカの原因は、同棲開始記念日のプレゼントにあった。
稼ぎのいいかおりは桜田に高級コートをプレゼントした。
でもそのコートに値札が取り忘れて付いたままになっていた。
一方桜田は露店で買った500円のペンダントをプレゼントとして
用意していた。相手が高級コートをくれたのに、と思うと渡せなかったという。
それがケンカの原因。ヒモである自分の立場に桜田は傷ついていた。
大介と桜田がそんな話をしていると、ヤクザ(室田日出男)が
ちょっかい出して来て、大介と桜田は室田のなじみの店、果ては
室田の自宅へと強引に連れて行かれる。
大いにびびる大介と桜田。
ところが実は、室田はトルコ嬢Aのヒモで、Aが大介のファンなので
Aの誕生日のプレゼント代わりに逢わせてやろうと室田は大介を
無理やり連れて来たのだった。
室田も、ヒモである自分の立場にみじめさを感じているのだった。
大介・桜田の行方がわからなくなり、かもめ座のみんな、そしてかおりも
心配していた。
帰宅した桜田はかおりと仲直りするのだった。
(怖い感じで登場した室田が実は……という、このシリーズの
定番パターン。かおりを演じたのは夏純子。僕が夏純子のファンだという
ことも、このドラマを観たい理由のひとつである)
「個人的事情」
大介が、東芝劇場の主役に抜擢される。名誉ある番組。台本の出来も良い。
強く推してくれたのはテレビ局の制作部長(中条静夫)だった。
ところが、台本を読んだ大介は番組を降りたいと言い出す。
作品の終盤に、大介演じる息子が母親にきついことを言う場面があり、自分の
母親がこの場面を見たら傷つくだろうと大介は心配し、降板を申し出たのだ。
部長は大介の降板希望を聞いて激怒。
やむなく大介は、「兄が死んだので葬式などで多忙」というウソの理由で
降板する。
ところが部長がそれを聞き、大介の実家に喪服を着て行ってしまった。
部長は(当然死んでなどいない)大介の兄(大滝秀治)と対面し、目を白黒。
ところが実は、中条と大滝は小学生時代の同級生だった。
小学校以来の再会を喜び合う中条と大滝。
大介の母(大滝の母)は、「息子を大きな番組に抜擢していただき
ありがとうございます」と中条に礼を言う。
中条は大介が降板を願い出た心情を理解する。
でも中条は大介を東芝劇場に出したい。
そこで中条は大滝に、「家族に見せたくない番組が放送される時、
その番組を見せないための秘策」を伝授する。
それはテレビの真空管をこっそりと外して、故障させてしまうというものだ。
大滝はその作戦でいくことにし、大介は晴れて東芝劇場に出演する。
そして迎えた放送の日。放送後、大介が実家に電話すると大滝が出て、
真空管外し作戦は母親にバレ、ドラマを家族で観てしまったという。
ところが問題のセリフの時、母親は居眠りしていたので大丈夫だったという。
ほっとする大介だった。
(これまた傑作。互いに相手の気持ちを大切にしようとする、善人たちが
織りなす悲喜劇が描かれている。「出てくるのは善人だけ、でも困ったことが
起きてしまう」というのは、「男はつらいよ」の例を引くまでもなく、
最良のドラマと私は考えている)