初恋番長 090301


最近 書いた短いシナリオです。


題名「初恋番長」

登場人物
林修15  中学生 番長
野川恵15 林の同級生
岡昭15  林の同級生で相棒
牧忠35  林の担任教師
原武15  トナリ中の不良ボス
小橋守15 原の手下




○中学校・教室
   休み時間。林修15、岡昭15たち不良グ
   ループが後方隅の席に屯っている。
   林を中心に、歓声をあげながらエロ本
   を見る不良たち。
林「あーあ、学校にもこういうのがいればよ
 お」
岡「どいつもこいつも幼児体型」
   林と岡、ニヤニヤと周囲を見回す。
   離れた席の女子たち、口の動きだけで
   「やあね」と囁きあう。野川恵15、う
   なずき、林を見る。

○住宅街の道(夜)
   制服姿の恵が通学鞄を提げて歩いて来
   る。何気なく空地に目をやってぎょっ
   となる。誰かが倒れている。恵、恐る
   恐る近づいて驚く。
恵「林君!」

○公園(夜)
   恵、林に肩を貸しながら来て、ベンチ
   に座らせる。ハンカチを取り出し、一
   瞬ためらうが、林の額の傷の血を拭い
   てやる。恵の顔が間近に迫る。どぎま
   ぎする林。
林「貸せ」
   林、恵からハンカチを奪う。
恵「またトナリ中の人たちと喧嘩」
林「うっせえ」
恵「…じゃ…あたし…」
林「待て…送ってやる」
   林、よろよろと立ち上がる。

○住宅街の道(夜)
   歩いて来る二人。林はハンカチで額を
   押さえながら恵をチラチラ見る。
林「塾かよ」
恵「うん…前さ、私、見ちゃった。林君、駅
 の階段で、おばあさんおぶってあげてたで
 しょ。…優しいんだね」
   林、突然、恵をキッと睨み、怒鳴る。
林「テメエそれ誰にも言ってねえだろな!」
恵「言ってないけど…」
林「ばらしたらボコボコにすんぞ! あれは、
 その~、単なるウエイトトレで、そんなん
 じゃねえ!」
   林、走り去る。
恵「……」

○住宅街の道・別の路地(夜)
   林が走って来て、息荒く電柱にもたれ
   る。手にしたハンカチをじっと見る。

○中学校・校門(朝)
   登校時間。林が人待ち顔で立っている。
   恵が歩いて来る。林、懐から何か出そ
   うとする。しかし、恵に友人が追いつ
   き、恵、友人と一緒に歩き始める。
林「ちっ」

○中学校・教室
   教師の牧忠35が授業中。林、真剣な表
   情で授業を聞く恵に見とれている。隣
   席の岡が、林の視線をたどり、「え?」
   となる。授業終わりのチャイムが鳴る。
牧「今日はここまで。そうだ、プリントがあ
 るから、学科委員…野川か、取りに来てく
 れ」

○中学校・理科・学科室前
恵「失礼します」
   プリントの束を手に、恵が室内に一礼
   して出てくる。待ち伏せていた林。
恵「(ギョッとして)な、なに?」
林「これ」
   と懐からハンカチを出す。
林「洗ったけど血の痕取れねえ。わりい」
   恵、受け取ろうとする。そこへ岡が通
   りかかる。林、慌ててハンカチを自分
   のポケットに隠す。
岡「あ、オサムっち。何だ野川テメー、エロ
 本のことチクんなかったろな」
   と因縁をつける。
林「ヤメろ。エロ本見ようぜ」
   林、岡の肩を掴み行ってしまう。岡、
   林の態度に戸惑う。見送る恵。

○中学校・屋上
   林と岡がフェンスにもたれて校門の方
   を見ている。岡、言いにくそうに、
岡「オサムっちってさあ…今、惚れてる女と
 かいんの?」
   林、突然ムキになって答える。
林「い、いるわけねーだろ! いいからお前
 先帰れ!」
岡「なんだよう」
   岡、不服そうに帰って行く。林、校門
   に視線を戻す。恵が友人たちと下校し
   ていく。じっと見る林。
林「言えっかよ…惚れたなんてよ…」
   林、内ポケットからハンカチを取り出
   して見つめ、ギュッと握る。

○ゲームセンター
   林が仲間と格闘ゲームに興じている。
   と、後からブレザー制服姿の小橋守15
   が忍び寄り、椅子に掛けてあった林の
   学ランを奪って逃げる。岡が気付き、
岡「おい待て! (仲間に)オサムっちの学
 ランかっぱらわれた! トナリ中の奴だ!」
林「!」
   林と仲間たち、小橋を追う。

○商店街の四つ角
   各方向から走ってきた林の仲間、合流
   する。
岡「いねえ」
仲間A「こっちもだ」
仲間B「なんで学ランなんか」
林「……(まずいという表情)」

○トナリ中・不良たちのアジト
   5人のブレザー制服姿の不良が屯して
   いる。小橋がボスの原武15に林の学ラ
   ンを差し出す。
原「マモ、やるじゃねーか。ズタズタにして
 返してやる。奴への挑戦状だ!」
小橋「それより面白えモンが」
   小橋、ニヤリとして学ランの内ポケッ
   トからハンカチを引き出す。
原「女モンじゃねえか…なんで野郎が?」
小橋「たぶん、(小指立て)コレのかと」
原「おい、誰のか調べろ!」

○中学校周辺の道A
   トナリ中の不良たちが、林の中学の女
   子にハンカチを見せて訊いている。

○中学校周辺の道B
   ここでもトナリ中の連中が訊いている。

○学習塾の玄関
   恵が出てくる。トナリ中の不良がとり
   囲む。
恵「な、なに…」

○川原(夕)
   原、小橋らトナリ中の不良たち3人と
   林、岡が対峙している。
林「まだ懲りねえのか? ぶっとばされてえ
 のかよ。こんなとこに呼び出しやがって」
原「フン。こっちはお前に感謝してもらいた
 くってよ」
林「?」
原「連れて来い!」
   物陰から、原の手下2人が恵の両腕を
   掴んで現われる。
林「野川…」
原「オメエこいつに惚れてんだろ。でも言え
 ねえで困ってる。だからコクらせてやろう
 てんだよ」
   林、露見されてショックの表情。
   岡、驚き、林を見る。
小橋「いよっ、勇気を出して初めての告白!」
原の子分「とんだロリコン番長だぜ!」
   と囃し立てる。
林「バカ言え。誰がそんなブス」
原「じゃ、これがどうなってもいいんだな」
   原、ハンカチを取り出し、破り始める。
恵「やめてっ。お母さんの形見なの!」
原「ほれほれ、破れちゃう、どうする?」
   林を見てニヤリとする原。
林「やめろ!」
原「いいじゃねえか。ブスのハンカチの一枚
 や二枚」
林「やめろってんだ…惚れてるからって、ど
 うだってんだァ!」
   林、原に殴りかかっていく。岡も続く。
   2対5の大乱闘。林と岡が勝ち、原一
   派は散り散りに逃げていく。
   林、取り返したハンカチを恵に渡す。
林「ホラ。ちょっと破れたけど…」
恵「アリガト(受け取る)」
林「じゃあな」
   林、去りかけるが、
恵「ね、さっき何て言ったの」
林「忘れたよバカヤロー」
恵「よく聞こえなかったんだもん」
林「……」
岡「ダメだよオサムっち。女にはさ、バシー
 ッと言わねーと」
林「二回も言えっかバーロー。ほら行くぞ」
岡「しょうがねえなあ。(恵に)またちゃん
 と言わせっからさ。気ぃつけて帰れよ」
   去っていく林と岡を見送る恵。ふっと
   微笑む。
   夕陽の中を、林と岡がじゃれあいなが
   ら歩いていく。
               おわり