また上正台本を読む 080128

今度は「帰ってきたウルトラマン」の
第5、6話の台本を読みました。
グドン、ツインテールが出るので有名な前後編です。

いや~これは傑作ですね。

この話は、東京に怪獣が出て、防衛軍の上層部が
怪獣を殺すため水爆級の爆弾を使用する決断をします。
主人公たちは、「動けない病人たちもいるんだから」と反対しますが、
防衛軍上層部は「東京がやられているのを黙ってみてられるか」と
メンツを優先して爆弾の使用を決定します。
「多少の犠牲者が出てもやむを得ない」というのが上層部の考え。

怪獣にやられても水爆を使っても、どっちみち東京は廃墟になるが
メンツを優先して水爆を使うという上層部の狂気。

こういう展開になると、上原氏の筆は冴えまくります。
(これは 氏が、戦争で犠牲にされた沖縄の出身だからとする
論考があるようですが、それはさておき)

人命の大切さなど毛ほども考えていない国の上層部の冷酷さ。
軍隊ってのは、庶民の命なんか
簡単に見捨てるんだよと訴える上原氏。

こういうテーマを子ども番組でやるという、
その気迫に圧倒されますね。

(もちろん為政者の側にもそれなりの苦悩はあるんでしょうが、
上原氏はけしてそちらの立場ではものを書かない。
スタンスがはっきりしているのだ。

こういう、一方の側だけに立った作劇は子ども番組だから
アリなものなのかもしれないが、こういう思い切ったことが
やれるので私は子ども番組を愛しているのかもしれない)

また、その前段で、
主人公の彼女のアキちゃんは、怪獣が暴れたので
地下街に閉じ込められてしまう。
その時 防衛軍は小型爆弾の使用を決める。
「爆弾は地上で使うから、地下に閉じ込められている人は安全」
という理屈だが、「死人が出てもかまわない」というのが本音。
結局小型爆弾は使われず、アキちゃんは救出される。
アキちゃんは実は自分が防衛軍の上層部に見殺しにされていたことも
知らず、見舞いに来た主人公に防衛軍に戻るよう言う。
裏切られていることも知らず、為政者を信じている庶民の哀れさ、
いじらしさが描かれている。

これは前後編という時間尺を生かしきった、
実に上原氏らしい名脚本だと思います。