忘れられない「犬の顔」がある。
実家は犬を飼っている。両親は犬を我が子同様に可愛がっている。
たまにしか帰省しないが、帰省したときこんなできごとがあった。
私はその犬の爪をいじっていた。
そのときは知らなかったが、犬というのは、爪をいじられるのはキライらしい。
犬はしばらく我慢していたのだろうが、私がずっといじっているので
ついに爪をいじる私の手にかみつこうとした。
私はあわてて手をのけたので、ことなきを得たが、そのときだ。
犬が「こんなことしちゃったけどこの人怒ったかな?」という不安そうな顔で
私をちらっと見たのだ。
たぶん犬は、私がこの家の息子ということを察知していて、そいつに対して
怒りをみせたことで、家の中での自分の立場がまずくなるのではと
ちょっと不安になったのだと思う。
そういう気持ちがすごく伝わってくる「チラ見」だった。
それを見たとき、「あっ、犬って人間並みの感情があるんだ」と感じた。

話は続くが、そのときショックだったのは、私が
「今 この犬 俺を噛もうとした」と父に言ったら
「うちのコロちゃんは噛もうとしたりしない!」と本気で怒り出した。
私の言うことよりも犬のほうを信用していることがわかり、
とてもショックだった。
やはり人間「遠くの息子より近くの飼い犬」だねえ。