20代新鋭の成長力士も参戦
■横綱、大関陣が土俵に戻ってもV争い混戦
2026年大相撲名古屋場所は7月12日に初日を迎える。休場していた横綱、大関陣が揃って万全な体調で土俵に戻ってこれるのか、いずれにしても優勝争いは混戦になりそう。一方で大関とりレースにも注目が集まりそうだ。次の大関候補の一番手は関脇に復帰する若隆景 (31歳・荒汐)になる。
2横綱2大関が休場するという異例の事態の中で、夏場所の土俵は終盤に入って、1差に7人がひしめく大混戦となった。最後は12勝3敗の大関霧島と小結若隆景の優勝決定戦にもつれ込んで、若隆景が逆転優勝を飾った。
大関候補最有力の若隆景
早くから大関候補と言われてきた若隆景だったが、2度目の幕内優勝を果たし、さらに大関とりの起点もしっかりとつくった。ケガの再発がなく、7月の名古屋場所でも2ケタ勝ち越しの成績ならば、年内の大関昇進も見えてくる。
2023年春場所に関脇で右膝の大ケガをして3場所連続休場で幕下まで落ちた。そこから這い上がって25年7月場所に再び関脇に復帰、結果は負け越して前頭上位で3場所もがまんの相撲を取ることに。ここで力を蓄えて小結に戻り、夏場所で逆転優勝を果たし賜杯を抱いた。
幕内勝率を6割1分2厘にアップさせた。これは大関琴桜、大関霧島の5割9分を上回る成績である。終盤の気迫ある精神力、相撲の強さに加えて自信もみなぎっていた。持ち前の下から攻める「自分の相撲を取り切る」ことを貫いていけば、大関・若隆景の誕生は時間の問題だろう。
■熱海富士、琴勝峰、義ノ富士も起点づくり
二番手グループにいるのは、7月の名古屋場所で三役、前頭上位に座る20代の若手力士たちだ。
熱海富士(23歳・伊勢ケ浜)は三役で2場所連続の9勝6敗。大きな体を生かしての押し出し、寄り切りを得意としているので安定感がある。来場所に大きく勝ち越すと、9月の秋場所は大関とりのチャンスが到来する。所属する伊勢ケ浜部屋には、小結に昇進する義ノ富士や前頭上位に上がってくる伯乃富士のほか、錦富士や再入幕を確実にしている尊富士もいて同部屋での出世争いも熱くなっている。
同部屋には将来を期待されている逸材の旭富士もいる。序の口、序二段、三段目を全勝Vで名古屋場所では幕下上位に番付を上げてくる。ここでも全勝優勝することになれば9月の秋場所では十両入りする可能性もある。さらに十両を2場所で通過すれば、年内にも新入幕を果たすことになるかもしれない。後輩のスピード出世に刺激を受けて、部屋では番付最上位にいる熱海富士としては「自分が先陣を切って大関昇進を決めたい」、という心境になって闘志を燃やしてくるのは間違いない。
琴勝峰(26歳・佐渡ヶ獄)は初の関脇で9勝6敗。前場所は前頭上位で11勝4敗、これで3場所連続の勝ち越し、力をつけているのは確かだ。昨年の7月場所では前頭15枚目の位置にありながら13勝2敗で初優勝。威力のある突き押しを武器としているが、四つ相撲でも勝てる万能力士。幕内勝率はまだ5割を切っているものの、相撲内容をみると着実に強くなっている。
義ノ富士(24歳・伊勢ケ浜)は十両を2場所で通過した逸材で、前頭2枚目で11勝4敗の好成績を残し初の三役入りを確実にした。横綱、大関陣に休場が多かったとはいえ、前頭上位で5日目から9連勝は安定した力がなければ達成できない。
入幕後の6場所のうち5場所は勝ち越している。負け越した場所でも7勝8敗と善戦した。1年間で殊勲、技能、敢闘賞の三賞を五つ、金星も3個、番付上位陣に対しても苦手意識はないようで、まだ、幕内では90戦の経験しかないが幕内勝率は6割に達している。名古屋場所は昨年11勝しており相性がいい。三役でも着実に白星を積み上げていく相撲を取りそう。まず、大関への起点をつくり、大関とりのチャンスをねらう。
王鵬(26歳・大獄)は前頭3枚目で後半から6連勝、9勝6敗で来場所は小結復帰が濃厚だ。大関とりに向けて三役に定着して勢いをつけられるか、正念場になる。
前頭10枚目の伯乃富士(22歳・伊勢ケ浜)は左足手術後の不安を払拭して幕内で自己最多の11勝4敗の好成績を残した。入幕後、5場所連続勝ち越しをマーク、順当に前頭筆頭まで番付を上げてきたが、その後は途中休場もあって2場所連続で5勝止まりだった。体調が回復すれば前頭上位に上がっても通用する力はある。名古屋場所で2ケタ勝ち越しを達成すれば新三役入りも可能だ。
琴栄峰(22歳・佐渡ヶ獄)は取組前に足を高く上げて四股を踏む「美しさ」が評判となり、ファンが急増中。成績も2場所連続勝ち越しを決めて成長著しい。 前頭13枚目で優勝争いに加わり、終盤には大関や三役陣との対戦が組まれた。まだ力は及ばなかったものの、チャレンジャーとしての存在感を強くアピールした。関脇の兄・琴勝峰と刺激し合いながら、まず年内に三役入りをめざすことになる。
藤ノ川(21歳・伊勢ノ海)は小兵ながら押し出し、すくい投げなど多彩な技で直近は前頭上位で7勝、8勝と善戦。人気力士の宇良(33・木瀬)は終盤に入っても優勝争いに参戦、力強い相撲も見せつけて2ケタ勝ち越しを決めた。いずれもまずは三役入りを期待したい。
■大関陥落の安青錦、10勝以上で特例復帰なるか
春場所に負け越し、さらに夏場所で全休して大関からの陥落が決まった安青錦(22歳・安治川)。左足小指の骨折によって大関在位3場所で関脇に降格することになった。来場所に10勝以上すれば大関に戻れるが、回復度が気になる。骨折は治って体調も回復状態にあるというが、低い姿勢から攻める相撲の安青錦にとっては足指の強さは必要不可欠なもの。万全な体調ならば2ケタ白星は可能だが、各力士も安青錦対策に取り組んできているので、けっして楽観視はできない。7月場所では3日目までの序盤戦の動きに注目したい。
1969年に2場所連続負け越しで大関陥落、というルールになった。ただし、翌場所に関脇で10勝以上すれば大関復帰となる特例措置も採用された。この制度によって、これまでに延べ29人のうち三重ノ海・貴ノ浪・武双山・栃東(2回)・栃ノ心・貴景勝の延べ7人が大関復帰を果たしている。しかし特例復帰で大関に戻ってきた確率は25%にとどまり、しかもクリアしても10勝でのぎりぎりセーフ復帰が7例のうち5例もある。2019年9月場所に貴景勝が関脇で12勝3敗の好成績で特例復帰したのを最後に大関に戻れたケースはない。厳しい条件ではあるが、安青錦が体調万全で土俵に戻ってくるならば突破できるのではないか。



