どうして20年も賃金があがらないのでしょうか?

理由は、チコちゃん風にいうと「お客が去ったから」です。

その理由をときあかします。

かつて、「いざなぎ景気」と言われた時代がありました。1965年11月~1970年7月の57カ月間におよぶ戦後最長の消費主導型景気拡大のよき時代でした。5年間で名目国民総生産(GNP)が2倍以上となり、 1968年には西ドイツを抜き自由世界第2位となりました。その後「バブル景気」(1986~1991年)、「いざなみ景気」(2002~2008年)と続きます。

この景気がどのようにしてもたらされたかについて、わたしは次のように推測しています。

堺屋太一さんが1976年に「団塊の世代」という本を出版しました。1947年から1949年までに生まれた世代を「第一次ベビーブーム」といいますが、堺屋さんはこれを「団塊の世代」と名付けました。昭和20年敗戦とともに兵隊さんが戦地から引き揚げ、やっと平和な暮らしが実感し始めた頃に生まれた人たちです。いま会社の第一線の幹部として働く皆さんのお父さんに当たる方たちです。

グラフは現在(2023年)の日本の年齢別人口数です。(国のデータより図化・上坂)

この世代のピークを赤線で示すと今年ちょうど75歳です。

この「団塊の世代」が、日本の景気動向に深い関わり合いがあるとわたしは考えています。

「いざなぎ景気」(1965~1970年)は、「団塊の世代」が18歳で会社に入り自分でお給料を稼ぎ、自由にお金が使えるようになったときです。「バブル景気」は39歳で会社の第一線でバリバリ働き給料もどんどん上がり、住宅を購入し自動車、家電製品を買い替えた時です。そして、「いざなみ景気」(2002~2008年)は55歳から61歳にかけての頃で退職金をもらい住宅の建て替えやゴルフ、旅行などにお金を使った時期です。

しかし、退職後の生活はどうでしょうか。年金生活者となり、お金を節約し余計なものをいっさい買わなくなります。かつて大きな需要を生み出してきたこの「団塊の世代」が財布のひもを固くしぼるだけではありません。もうひとつ大きな要因があります。(つづく)