先週土曜日、「理想的本箱」を視ることができませんでした。

 森茉莉さんは、森鴎外の二番目の奥さんの長女として生まれ、幼少期は贅沢な生活をしていましたが、関東大震災があり戦争があり、彼女も二度の離婚があり、45歳からは下北沢のアパートで一人暮らしでした。

 そして、40代半ばの頃に書かれたエッセイが「贅沢貧乏」です。

 豊かでない生活の中で、自分の中の贅沢さについて考え、「ほんものの贅沢」とは何か、心の贅沢というものをどうやって保ち続けたかが、この中に書かれています。

 森茉莉さんは、「赤貧」つまりかなりの貧乏だったようです。

 それでも貧乏臭さを嫌い、贅沢と豪華の持つ色彩が何より好きでした。

 この結果として、貧乏臭さを排除して豪華な雰囲気を取り入れるということが八畳一間で実践されていきます。

 具体的にはこういうことでした。

①   自分の好きな食事を作ること。

②   自分の体に付けるものを綺麗にしておくこと。

③   下手なおしゃれをすること。

④   自分のいる部屋を厳密に選んだもので飾ること。

⑤   楽しい空想のために歩くこと、何かを見ること。

 大金を使う贅沢には空想と想像の喜びがないと言います。

 更に、本当に贅沢な人間は贅沢を意識していないし、贅沢のできない人にそれを見せたいとも思わないものだとも言います。

 贅沢と言うのは高価なものを持っていることではなく贅沢な精神を持っていること。

 「自分の部屋を厳密に選んだもので飾ること」には重要な意味があり、こうすることによって、部屋にいる自分は、自分が好きな物だけに囲まれている空間に居ることになり、物を増やすことではなく物を減らすことにもなると言います。

 しかし実際の彼女は、生活能力のなさから「子どもがそのまま大きくなったような人」だったようです。