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皆さんは中国唐の詩人李賀(791~817)をご存じでしょうか。僕はこの詩人を大学の卒業論文に書いてからもう長い間ほったらかしにしていましたが、最近になって彼の詩に非常に興味を覚え始めています。

彼が生きた時代は有名な李白や杜甫たちが生きた時代よりは少し遅く、いわゆる中唐と言われる時代区分に属します。日本で言うと、皆さんご承知のようにほぼ平安時代が始まった頃ですね。

 

中国の詩(いわゆる漢詩)は伝統的に現実重視で、実際の経験や現実に対する慨嘆、歓喜、感想などを述べた現実主義的なものがほとんどです。その中においてわずか27歳で彗星の如く生き、そして去った李賀は、中国の詩史上非常に特異な詩人と言えます。きわめて理不尽な理由で出生の道を閉ざされ(当時は詩人であっても官吏にならなければ社会的な前途は保証されない非常に窮屈な社会でした)、前途を断ち切られた彼は「二十歳にして心すでに朽ちたり」(「贈陳商(陳商に送る)」)という鬱屈した生を送らざるを得ず、自分を理不尽に追い詰めた社会に対し「この世は悪意に満ちている」(荒井健氏の解釈)という恨みに満ちた思いから血の吹き出すような呪詛と目も眩むほど豪華絢爛な表現という極めてアイロニカルな構成で、夢や幻想、悲憤慷慨の思いなどを詠みました。そんな彼のことを後代の人々は「鬼才」(鬼とは幽霊のこと)と呼びました。次に挙げる作品はそんな彼の代表作の一つです。

 

蘇小小歌

 

幽蘭露      (幽蘭の露)

如啼眼      (啼ける眼の如し) 

無物結同心    (物として同心を結ぶ無く)

煙花不堪剪    (煙花は剪るに堪えず)

草如茵      (草は茵の如く) 

松如蓋      (松は蓋の如し)

風為裳      (風は裳と為り)

水為珮      (水は珮と為る)

油壁車      (油壁車)

久相待      (久しく相待つ)

冷翠燭      (冷ややかなる翠燭)

勞光彩      (光彩を労す)

西陵下      (西陵の下)

風雨晦      (風雨晦し)

 

蘇小小…5世紀に存在したという有名な歌姫

煙花…夕もやの中の花

茵…車の座席の敷物  蓋…車の上を覆う笠

裳…スカート  珮…帯につける玉飾り

油壁車…青いきれをかぶせた身分の高い人が乗る車

翠燭…鬼火  西陵…杭州の西湖にかかる西陵橋  晦…不気味な暗さ

(荒井健氏の注による)