《危惧されるのは、深刻化する民意の二極分化であり、対立と分断の構図だ。基地に揺れる沖縄をこれ以上孤立させてはならない。》

沖縄に対立と分断を持ち込んだのは誰だ?
アメリカとそれに従属する日本政府だ。
沖縄の人たちでは断じてない。

【福井新聞】

◆機動隊「土人」発言 沖縄これ以上苦しめるな 
(2016年10月22日午前7時25分)

 【論説】悲しい日本の現実がまた浮き彫りになった。

 沖縄県民に対する機動隊員の差別的発言が問題化、それを擁護する政治家らのネット上の書き込みが相次ぐ。米軍基地問題で苦しむ沖縄の現状を国民が共有することは簡単ではない。しょせん「人ごと」とみなす風潮が漂う中で、公務中の警察官までが県民の心を踏みにじってどうするのか。

 耳を疑う言葉が飛び交ったのは、同県東村と国頭村にまたがる米軍北部訓練場のヘリパッド移設工事現場である。抗議活動をしていた市民らに、大阪府警から派遣されてきた若い機動隊員2人が暴言を吐いた。

 「触るなくそ、どこつかんどんじゃボケ、土人が」「黙れ、こら、シナ人」

 インターネット動画サイトに投稿された光景だが、ここまで汚い言葉でののしられるものなのか。「土人」も「シナ人」も差別用語である。デモ現場ではよく市民と警察官の衝突が起きるケースはある。警察官は危険な行為に発展しないよう、努めて冷静な対処が要求される。だがこれでは「官製」のヘイトスピーチ(憎悪表現)ではないか。

 県警の事情聴取に「思わず言ってしまった」などと答えているようだが、内側に潜む構造的な差別意識が「思わず出た」と非難されても仕方ないだろう。

 3年前、東京都心でオスプレイ配備反対のデモ行進を行っていた沖縄の全市町村長らが「非国民」「売国奴」「日本から出て行け」といった罵声を沿道から浴びせられたという。

 沖縄は歴史的にも、先の大戦後も苦難の道を歩み、地域の平和と人間の尊厳が損なわれてきた。今も米軍普天間飛行場の辺野古移設問題で苦しんでいる。民意を顧みない国の姿勢、ゆがんだナショナリズムを強める社会の意識構造が、こんな現場にも形を変えて顔を出すのではないのか。

 翁長雄志(おながたけし)知事は「言語道断だ。到底許されるものではない」と強い憤りをあらわにした。菅義偉官房長官は「発言は許すまじきこと」と述べ、坂口正芳警察庁長官も「不適切であり、極めて遺憾」と発言したのは当然であろう。

 しかし、大阪府の松井一郎知事が自身のツイッターで隊員をねぎらう書き込みをしたのには驚く。

 「表現が不適切だとしても、大阪府警の警官が一生懸命職務を遂行しているのが分かった。出張ご苦労様」と隊員を擁護。記者団にも「混乱を引き起こしているのはどちらか」と正当化した。ネット上では、これに同調するいやな空気が広がっている。

 危惧されるのは、深刻化する民意の二極分化であり、対立と分断の構図だ。基地に揺れる沖縄をこれ以上孤立させてはならない。

http://www.fukuishimbun.co.jp/sp/localnews/editorial/107321.html