「俺は父さんと一緒に行くよ」
颯太ははっきりとそう言った。それを聞いた父の顔が喜びに染まると同時にリビングのドアが勢いよく開いた。三人とも驚くなかで入ってきたのは遥香だった。遥香は颯太の前に立つといきなり抱きつき、そして泣き出した。颯太は驚き思考が停止したように固まった。しかし大人二人の顔がニヤニヤした笑顔に変わるのを見て頭をフル回転させた。
「えっと、遥香。どうしたんだよ?」
そしてやっと絞り出せた言葉がこれだった。
颯太に尋ねられた遥香はしばらく泣き続けてその後颯太を睨み付けた。
「どうしたじゃないよ!何で黙って出ていこうとするの?」
遥香はすごい剣幕で颯太に尋ねた。
「だってみんなに会うと心が変わるかもしれないから。それは嫌だったんだよ」
颯太は気まずそうにそう言って、
「今も少し揺らいでる。」
と、続けた。すると遥香は、
「それは私たちが大事ってことじゃないの?何で大事なのに手放そうとするのよ?やっぱり私たちは颯太の重荷になってたってことなの?」
そう言って颯太に詰め寄った。颯太は
「違う!そんなことはない。俺はお前らと一緒にいるのはとても楽しかったしお前らのことを本当の家族だと思ってた」
と言って目を伏せた。
「じゃあなんで出ていこうとするの?」
遥香はなおも颯太に尋ねると、颯太は尋ね返した。
「逆に聞くけど何で俺が出ていこうとするがダメなんだ?自分の仕事が増えるからか?」
「そんなんじゃないよ!何で颯太はそういう風にひねくれて考えるの?」
「じゃあなんでなんだよ!他に思い付かないよ。何でなんだよ。何で俺をそんなに惑わすんだよ。教えてくれよ」
最後の方はほとんど聞こえなかったが遥香には何をいっているのかはわかった。
「なら教えてあげる。私は....私は颯太のことが大事なんだよ。何を犠牲にしてもいいくらいあんたのことが大事なのよ。だからずっとそばにいてほしい。そばにいて辛いときは私を頼ってほしい。だから私は颯太を引き留めるんだよ」
そう言ってもう一度颯太をやさしく抱きしめた。
そして颯太も意識せずに遥香を抱き締めていた。
