5日後、由衣の肩の傷もなんとか良くなっていた。
魔の山はあの日すぐに消えてしまったのだが、マンモスは由衣にお願いされ、
蜀の陣地に残っていた。
「これがわが妻、月英の設計図を基にして、技術者のうらかた氏に作らせたからくり動物です。」
孔明は木で作った7体の体の大きな動物を指差していった。
それは獅子や虎の形をしていて、車輪も付いていた。
その時、からくり動物の背中のハッチが開き、一人の男が出てきた。
「私が、技術者のうらかたです。やりがいのある仕事でした。」
「あれっ?どこかでお会いしませんでしたか?」由衣は懐かしそうに言った。
「そうですか?気のせいでしょう。」うらかた氏はニコニコ笑った。
由衣は首をひねって考えた。(う~ん、この優しそうな笑顔には見覚えがあるんだけどなぁ・・・、
この時代に知り合いはいないし、やっぱ気のせいかぁ・・・?)
側に居た孔明が口を開いた。
「これを押していけば、猛獣達は驚くと思うのですが、敵の兵士は驚きません。そこでぜひあの巨大象の加勢をお願いしたいのです。」
「分かりました、ただ、あの象は苦しい時に皆を励ますための面白い事が言えない人は嫌いらしいんです。」
「なんですか、それは?」孔明は怪訝そうな顔をした。
「この原稿を読んでもらえます?」由衣は原稿を孔明に渡した。
夕方、明日の戦いの為の会議が始まった。
「会議の前に、今日は皆に今迄のお礼が言いたい。」孔明が話し始めた。
「みんな、今まで、よくこんなつまらない私に付いて来てくれた、心から感謝している、ありがとう。」
皆はニガ笑いをした。
「私なりに笑いの努力はしているのだが、どうも飲み込みが悪くて・・・。」
クスクスと笑い始める者も居た。
「みんな、努力するから、私が面白くなるまで待ってもらえないか?」
その時、魏延が大声で言った。
「孔明様、待ちますぞ!いつまでも、いつまでも。」
皆は爆笑した。
その日の会議はいつになく明るかった。
そう、今迄の孔明の会議は重苦しかったのである。
翌日、由衣を乗せたマンモスを先頭に、からくり動物が続き、その後に蜀の兵士が続く陣立てで、戦は始まった。
南蛮の部隊は大パニックになった。
猛獣達がマンモスを怖がったのである。
戦いは蜀の圧勝で終わった。
戦いが終わった後、魔の山がまた現れ、雪が降り始めた。
マンモスとのお別れの時が来たのである。
「死なないでね、マンモス・・・。」由衣が言った。
(マンモスは長生きだ。それに魔の山はこことは時間の流れが違う。縁があったらまた会おう、由衣。)
「うん、ありがとう・・・。」由衣は涙ぐんだ。
(由衣、泣くな!私は明るい別れが大好きだ。)
「うん、でも・・・。」由衣の目から大粒の涙があふれ始めた。
(そうだ由衣、あれを言ってくれ!)
「えっ、あれって?」
(あれだよ、ほらっ、お礼の・・・)
「・・・、あっ!!」由衣は叫んだ。
由衣はマンモスに敬礼して言った。
「ありがとうございマンモス!!」
「プォ~、プォ~!」マンモスは大喜びで両足を上げて踊った。
孔明と蜀の皆はあっけにとられて、由衣とマンモスを見ていた。
マンモスが去った後、由衣も大空高く飛んで行った。
また、由衣の新しい旅を始めるために。