土木用語のメモ【河川編③】参考:河川砂防技術基準

【河川堤防の施工段階と関連工程】
河川堤防の施工には準備・仮設、基礎地盤処理、築堤の3段階があり、関連工程には次のような要点がある。
(1)施工段階
①準備・仮設:測量、丁張り工、工事用道路、排水処理施設など。
②基礎地盤処理:地盤表面処理、排水処理、不陸整正など。
③築堤:盛土材料の敷均し・締固めなど。


(2)関連工程と要点
①法面:通常の方法では、締固め不足となり弱点となりやすい。
②堤防拡築:既設堤部との接着部を弱点にしないことが重要である。
③軟弱地盤対策:堤体盛土に伴う圧密沈下や安定の問題がある。一般的には緩速載荷工法や押さえ盛土工法が主体であるが、長い工期が取れない場合は、地盤改良工法などの対策工法を検討する必要がある。

【法面及び堤防拡築の施工並びに軟弱地盤対策】
(1)法面の施工
法面及び法肩部は締め固め不足となりやすい部分である。一方、降雨や洪水時には水流のエネルギーを直接受ける部分でもあり、法面崩壊を防ぐために締め固めを十分に行うことが必要とされる。
①丁張り:法面仕上がりの丁張りは法肩、法先に約10m間隔に杭を打ち、この丁張りを基準に仕上げる。曲線部など複雑な箇所は5m程度を標準とし、必要な場合はそれ以下とする。
②表層の処理:堤防法面が急な場合は、表層すべりをおこしやすいので、堤体と表層が一体になるように締め固める。
③異質材料:表層部の材料に堤体と異質な材料を使用するときは、両方の材料を適宜混合して締め固め、異層の境界をはっきり残さないようにすり付ける必要がある。
④法覆工:盛土による堤防の法面が、降雨や流水などによる法崩れや洗堀に対して安全となるよう、芝等によって覆うものとする。


(2)堤防拡築の施工
拡築工事は既設堤防に腹付け及び嵩上げを行って、堤体断面を増加するものである。
①施工順序:拡築工事では一般的に、腹付を施工した後、嵩上げを行う。
②腹付けと段切り:腹付けを行う接着面は、旧堤防との接合を高めるため、旧堤防法面部を最小幅1.0m程度の階段上に段切りを行い、なじませるようにする。1段あたりの段切り高さは、転圧厚の倍数で、最小高50cm程度とし、また、水平部分には2~5%で外向きの勾配をつけることが多い。
③転圧厚:既設堤防に腹付して堤防断面を大きくする場合は、築堤と同様、1層の締め固め後の仕上がり厚さは30cm以下で施工する。
④裏腹付け:腹付は一般に安定している表法面を生かして、旧堤防の裏法面に行うのが原則である。


(3)軟弱地盤対策と留意点
基礎地盤が軟弱地盤の場合、堤体盛土の施工に伴う圧密沈下や支持力不足による著しい破壊や変形を生じる危険性がある。軟弱地盤対策には一般的な築堤工法を改良するものとして、表層処理工法、緩速裁荷工法、押さえ盛土後方などがあり、軟弱層を改良する工法では、置換工法、圧密促進工法としてバーチカルドレーン工法、締め固め工法としてサンドコンパクションパイル工法、固結工法として深層混合処理工法などがある。


一般的に、バーチカルドレーン工法は、載荷重工法よりも圧密沈下を早く促進させることができるが、表層処理工法やサンドコンパクションパイル工法と同様に盛土下に透水層を作る工法なので、河川水の浸透に対しては好ましくなく、計画する場合は併せて、表法面側の基礎地盤の止水を十分に行う必要がある。
①動態観測:軟弱地盤上における盛土の施工にあたっては、沈下や変形等の挙動が予測されたものか照合し、予測外の場合は原因の究明とそれに対する対策を施す必要があるので、動態観測を行いながら工事を進めていく。
②緩速盛土:軟弱地盤上の盛土の施工においては、安定をはかるため、徐々に盛土を行うことによって、残留沈下を少なくすることが望ましい。
③置換工法:水田や草地などの湿地盛土を行う場合には、一般には事前に溝を掘って排水させるが、軟弱の程度に応じて土を置き換えるなどの検討が必要である。