土木用語のメモ【砂防編①】 

 

砂防えん堤

 

 砂防基本計画に基づく砂防施設配置計画の構成並びに使用される工種について、以下のように整理されている。 

 

1.砂防施設配置計画と砂防の主な工種

 

(1)山腹 ・土砂生産抑制施設→山腹基礎工、山腹緑化工、山腹斜面補強工、山腹保育工

 

(2)渓床・渓岸 ・土砂生産抑制施設→砂防えん堤、床固工、帯工、護岸工、渓流保全工

 

(3)渓流・河川 ・土砂流送制御施設→砂防えん堤、床固工、帯工、護岸工、水制工、渓流保全工、道流工、遊砂工 

 

2.砂防えん堤の目的、機能及び設置位置

  砂防えん堤の設置目的は、土砂生産抑制に土砂流送制御を加えて計画されることが多い。砂防えん堤の目的、機能及び原則的な設置位置の関係は、以下の通り。 

 

(1)土砂生産抑制 ・山腹崩壊などの発生または拡大防止または軽減→崩壊の恐れがある山腹の直下流 ・渓床の縦浸食の防止または軽減→縦浸食域の直下流 ・渓床に堆積した不安定土砂の流出の防止または軽減→不安定な渓床堆積物の直下流

 

(2)土砂流送制御 ・土砂の流出制御あるいは調節→その谷幅が広がっている狭窄部、支川合流点直下流部など ・土石流の捕捉あるいは減勢→同上 

 

3.砂防えん堤の型式と構造

  砂防えん堤の形式には、透過型と不透過型がある。透過型砂防えん堤の場合は、格子構造により大粒径の石を固定して土砂流出を調整する機能や、土石流によって透過部を閉塞させて土石流を捕捉する機能がある。砂防えん堤の構造には重力式、アーチ式などがあり、材料にはコンクリート、鋼材、ソイルセメントなどがある。 

 

4.砂防えん堤の構造と計画

  砂防えん堤の計画にあたっては、設置目的に応じて規模、形式、構造などを選定し、計画する必要がある。一般的には、重力式コンクリートのものが多く、その構造と機能、計画と施工についての留意点等を以下に示す。

 

(1)重力式コンクリートえん堤の構造  堤体天端部には水通し及び袖を設け、堤体には必要に応じ水抜きを設ける。えん堤の下流部には前庭保護工を設ける。前庭保護工は、副えん堤と水褥池(ウォータークッション)による減勢工、水叩き、側壁護岸、垂直壁、護床工等から構成される。

 

 (2)各部の構造と機能、計画と施工についての留意点

①水通しの機能:水通しは、砂防えん堤の上流側からの水や土砂を安全に越流させるために設ける。

 

②水通しの位置:砂防えん堤の水通しの中心の位置は、原則として現河床の中央とし、基礎と両岸の地質が対象であれば、堤体の中央部分に設けることが基本である。

 

③水通しの断面:水通し断面は、一般に(逆)台形で、対象流量を越流させるのに十分な大きさとする。

 

④堤体の断面:砂防えん堤の堤体下流の法勾配は、落下砂礫による衝撃や摩耗を考慮すると垂直に近い形状とすることが望ましいが、一般に1:0.2を標準とする。

 

⑤堤体の天端幅:砂防えん堤の天端幅はえん堤付近の河床構成材料が砂混じり砂混じり砂利~玉石混じり砂利の場合1.5~2.5m、玉石~転石の場合3.0~4.0mとしている。 

 

⑥堤体の根入れ:主えん堤の基礎の根入れはは、基礎地盤が岩盤の場合は1m以上とし、砂礫の場合は2m以上とする。

 

⑦袖の機能と構造:堤体の袖は、洪水を越流させないことを原則とし、土石などの流下による衝撃力で破壊されないように強固な構造とする。

 

⑧袖の勾配:えん堤の袖の勾配は、洪水が万一越流しても流水が両岸に向かわないように、原則として両岸に向かって上り勾配とする。 

 

⑨前庭保護工の機能:前庭保護工は、えん堤を越流した落下水、落下砂礫による基礎地盤やえん堤下流部の洗堀を防止し、えん堤が破壊されないように設けられる構造物である。

 

⑩水褥地(ウォータークッション):本えん堤と前庭保護工の副えん堤との間にできる水褥地は、本えん堤から落下する水のエネルギーを拡散・減勢させるものである。

 

⑪水叩き:えん堤下流の洗堀を防止し、えん堤基礎の安定及び両岸の崩壊防止の機能がある。副えん堤を設けない場合は、水叩き下流部に垂直壁を設ける。

 

⑫水抜き:水抜きは、主に施工中の流水の切り替えや堆砂後の浸透水を抜いて、砂防えん堤にかかる水圧を軽減するために設ける。 

 

⑬えん堤の基礎地盤:えん堤の基礎地盤は、原則として岩盤とする。やむを得ず砂礫基礎とする場合は、出来る限りえん堤を15m未満とし、均一な地盤を選ぶことが原則である。

 

5.重力式コンクリートえん堤の施工(コンクリートの打設) 

(1)えん堤のブロック割り コンクリート打設にあたってはブロック割りを行い、その規模はえん堤軸方向に横目地を兼ねて9~15m程度で計画し、1リフトの高さは硬化熱を考慮して通常0.75~2.0mとしている。 

(2)えん堤の施工順序 砂礫基礎で水叩き及び副えん堤併用の場合のコンクリート打設は、一般的に下のような順序で施工する。 

 

施工順序:①えん堤本体基礎部→②副えん堤→③側壁護岸→④水叩き→⑤えん堤本体残部