【建設工業新聞10月27日1面記事から転載】

 国土交通省は緑地の開発を促すための施策を強化する。官民で一体となって緑地の整備を推進するため、緑化の目標や取り組みの方向性を示す新たな国の方針を定める。都市計画上で、緑地を含む「自然的環境」の整備や保全の位置付けも高める考え。まちづくりの計画段階から緑地の明確な方針を固めることで質と量の両面を確保する。
 26日に社会資本整備審議会(社整審、国交相の諮問機関)都市計画基本問題小委員会(委員長・谷口守筑波大学システム情報系社会工学域教授)を都内で開いた。政府が7月に閣議決定した「国土形成計画」に盛り込んだ「まちづくりGX」の推進に向け、国交省が取り組む施策の方向性を整理した。
 国の緑地に関する方針を定めた「緑の政策大綱」は、1994年に建設省が策定してから30年を迎える。国交省は緑地確保に向けた機運の高まりを受け、新たな基本方針を策定する方針。緑地の保全や緑化の目標、政府が実施すべき施策をまとめ、緑地整備を官民で進める体制を整える。
 都市緑地を質と量の両面で確保していくため、まちづくりの基礎となる都市計画の段階から、緑地の意義や必要性を十分に考慮した上で計画に位置付ける必要性も強調した。緑地の整備や保全に対する都市計画上の重要性を一層高め、不可欠な要素として扱う方向性を示した。
 今後の緑地確保に向けた具体的な施策も報告した。緑地開発への民間投資を促すため、開発事業者の取り組みを国が評価する制度の創設を検討。2024年度の運用に向けて評価の手法や項目を詰める。財政状況が厳しい自治体に代わり、国が指定した法人が緑地の買い入れや整備を行う制度の創設も検討する。
 国交相が認定する「民間都市再生事業」の認定基準に、緑の創出や再生可能エネルギーといった取り組みを加える方針も明示した。都市再生に貢献する公共施設や利便施設の整備費用だけでなく、緑化や再エネの利用、省エネ設備の導入に関する金融支援も強化する。
 出席した委員からは「認証制度の要件が多くなると、狭い敷地で空間の質を確保することが難しくなる。個別の敷地や事業者ではなく、エリア全体で認証を行う視点が必要だ」といった意見があった。国交省は委員からの意見を踏まえながら、具体的な施策を固めていく考えだ。