能登半島地震/土木学会らが調査報告、新耐震建物も被害多く・旧基準の損壊深刻

 

日刊工業新聞2024年1月10日1面から転載

 

 能登半島地震を受け、土木学会地震工学委員会(酒井久和委員長)が被害状況などに関する調査結果の報告会を、9日にオンラインで開いた。石川県能登半島にある建物の被害状況を報告した金沢大学の村田晶助教は、1981年の新耐震基準制定前に建てられた建物の損壊が極めて深刻な状況にあると説明。同年以降の新耐震基準に基づき増改築された住宅も被害が多発していると報告した。


 報告会は「令和6年能登半島地震(マグニチュード〈M〉7・6)に関する速報会」と題し、土木学会海岸工学委員会や日本地震工学会、地盤工学会と共同で開催。酒井委員長は冒頭のあいさつで「(過去の大規模災害を教訓に各地で)対策を進めてきたものの、今回大きな被害が発生した。報告会でさまざまな知見を共有し、新たな課題を見いだしてほしい」と呼び掛けた。
 各学会に所属する学識者が能登半島を中心とする被災地で調査した被害状況などをまとめた。▽津波▽建物▽地盤▽橋梁▽城郭(金沢城)-の各テーマ別に報告した。


 倒壊・損壊が相次いだ木造住宅を中心とする建物被害の報告では、石川県珠洲市、穴水町などで1~2秒と短い周期の小刻みな地震動による影響を受けやすい住宅の被害が深刻だったと説明。新耐震基準制定後に増改築された住宅も損壊などの被害が多かったことを伝えた。


 周期3秒の長く強い揺れが観測された珠洲市の正院地区では、神社や寺の被害が集中したと報告。全体的に以前からの地震で建物に蓄積された疲労の影響があるとの見方も示した。
 一方、2000年以降に新築された建物の大部分は震動に起因する損壊が軽微だったことも伝えた。