こんにちは!植田涼介です。
明石の静かな路地裏にある古い喫茶店に入ると、マスターが一人ひとりの雰囲気を見て選んでくれる独特な珈琲カップに出会えます。厚手の陶器でできた深みのある紺色だったり、薄手で滑らかな質感のやわらかな白だったり。同じ珈琲を注いでいても、器の形や色合いによって手にしたときの感触も、目に飛び込んでくる印象も全く違って見えるのが不思議なところです。
私たちは社会や職場で過ごす中で、自分という存在を無理に「扱いやすい汎用的なカップ」の中に押し込めようとしてしまうことがあります。周りの期待に応えようとするあまり、自分本来が持っている凹凸や独特の手触りを削り落とし、誰もが納得する平均的な形を演じようと無理をしてしまうのです。
企業の人材育成や個人のキャリア支援に携わる中で、自分の本当の魅力を見失ってしまっている方にたくさん出会ってきました。自分にはこれといった特徴がないと思い込み、他人の素晴らしい実績や華やかな経歴ばかりを羨んで自分を卑下してしまうのです。
しかし、古い喫茶店のカップがそれぞれに異なる手触りと表情を持っているように、人にも本来、誰一人として同じ形や色はありません。これまでの人生で通過してきた失敗のキズや、一見すると何の役にも立たないような趣味の知識、愚直に積み重ねてきた小さなこだわり。そうした不揃いな要素の掛け合わせこそが、あなたという人間を形作る世界でたった一つの器になります。
自分という器を他人の真似をして塗り替える必要はありません。形が少し歪であったとしても、そこに注ぎ込まれる経験や想いの深さは、あなただけの味わいとなって周りの人々にやさしく伝わっていきます。
明石の街で心地よい潮風を感じながら自分自身と向き合うように、まずは自分という器の手触りを素直に確かめてみること。不器用でも自分らしい形を受け入れたとき、目の前にある日常や仕事の景色は、より豊かで魅力的な色合いへと変わり始めるはずです。