【日本科学者会議大分支部声明】「戦争の準備」ではなく、「平和の準備」を | 日本と大分と指原莉乃の左翼的考察|ケンケンのブログ

【日本科学者会議大分支部声明】「戦争の準備」ではなく、「平和の準備」を

僕の所属している日本科学者会議大分支部が、安保3文書、軍拡予算、陸上自衛隊大分分屯地敷戸弾薬庫での長射程ミサイル保管庫の新設に反対・抗議する声明をプレスリリースしました。

以下に掲載します。

 

 

立憲主義と暮らしを踏みにじる「異次元」の軍拡に反対

 「戦争の準備」ではなく、「平和の準備」を

2023  4  18 

日本科学者会議大分支部

 

 1. 「異次元」の大軍拡予算 

軍事費を前年度比 1.3 倍化する大軍拡予算が 3 月末に成立した。今後 5 年間では、1.6 倍、総額43 兆円の軍事費、10 年後には GDP  2%(年 10 兆円超)の軍事費を政府は計画している。こうした巨大な軍事費は、昨年 12 月に防衛省が策定した安全保障関連 3 文書(「国家安全保障戦略」「国家防衛戦略」「防衛力整備計画」)を具体化したものであるが、政府は国会の実質審議も経ないまま閣議決定を行ない、さらにはこの計画をバイデン米国大統領に約束し、大統領から満足の返答を得た。米国優先・国会(国民)軽視の首相の姿勢は、大軍拡政策が米国の意向に基づくものであるこ

とを示している。

 

 2. 子育て予算は吹き飛ばされ、軍事優先で社会がゆがめられる 

この大軍拡の財源として、増税、歳出削減、国債増発が必要だとし、今年度予算においても、政府・与党が公約していたはずの、子ども関連予算の大幅拡大が見送られるほか、生活関連予算の削減が行われている。「大砲かバターか」の古典的な争点の再浮上である。学術研究の関連では、大学や研究機関の基礎的な研究費の抑制が継続される一方、軍事関連の研究開発予算は約 3 倍とすることが今年度予算に盛り込まれ、軍事研究への研究者の誘導が強化される方向である。

 

 3. 「敵基地攻撃能力」整備は、憲法と立憲主義の破壊 

安保 3 文書では、「敵基地攻撃能力」を「反撃能力」と言い換えて、その整備がうたわれている。

安保法制は、憲法違反の集団的自衛権(他国間の戦争への参戦権)の限定的な行使を容認したが、その後も、政府は「専守防衛」を堅持するとしてきた。安保 3 文書は政府の従来の憲法解釈をも踏み越えて、先制攻撃を発動しうる内容となっており、憲法と立憲主義の破壊をさらに進めるものとなっている。その最初の具体化である今年度予算では、巡航ミサイル「トマホーク」など長射程のミサ

イル配備を盛り込んでいる。安保法制で公然と行われた立憲主義の破壊が、学術会議会員の任命拒否事件などとともに、法治主義を踏みにじり、平和主義のみならず、国民の生活や権利をもおびや

かすものにまでなっている。

 

 4. 敷戸弾薬庫の大拡充は、県民を核攻撃の危険にさらす 

安保 3 文書の中には、全国 300 の自衛隊基地について核攻撃被害も想定した強靭化計画が組み込まれている。その一つが、陸上自衛隊大分分屯地の敷戸弾薬庫の大拡充であり、「敵基地攻撃能力」を担う、長射程のミサイルを保管する可能性のある施設を新設する予算も盛り込まれている。敷戸弾薬庫は、住宅地のど真ん中にあり、保育園、小中高校、大学、病院その他に隣接しているだけでな

く、大分駅へ約 6km、別府駅へも約 16kmに過ぎず、一般道・大分自動車道でのミサイルなどの輸送による危険も考慮すれば、多数の大分県民が戦争の犠牲になりかねない危険を内蔵している。

もちろん、その危険は平時においても格段に高まる。

 

 5. 軍拡のエスカレーションではなく、外交による「平和の準備」が現実的な安全保障 

ロシアのウクライナ侵略による不安が、中国の脅威と結びつけられる世論誘導が行われている。

しかし、米中戦争に日本が参戦するという無謀な想定にもとづく異次元の大軍拡計画は、軍拡の相互エスカレーションを招き、抑止の名の下にかえって戦争の危険を増大させる愚策である。岸田政権の「台湾有事は日本有事」という言明は、「専守防衛」の枠を超え、安保法制整備にあたって示された「限定的な集団的自衛権の行使」の限定すら撤廃しかねないものである。

ロシアによるウクライナ侵略は断じて許されないが、NATO の東方拡大による封じ込め政策が、ロシアの暴発を招いた、という面では、ロシア・ウクライナ戦争は NATO の外交的失敗であること

を直視し、外交による平和解決こそが戦争回避の道であるという教訓が引き出されねばならない。

 

 6. 戦争では誰も得しない 

米中戦争への日本の参戦は、日米中いずれにも生産や流通の混乱のために多大の犠牲や経済的損害が発生する。もとより、日本国憲法の平和主義原則と人権尊重原則は、深く結びついたものであ

り、アジア太平洋戦争が多大の軍事的被害と経済的損害をもたらしたことの反省にもとづくものであることを私たち日本国民は忘れるべきではない。

ロシアによるウクライナ侵略の短期的な帰趨がどうなろうとも、中長期的には、国際社会でのロシアの信頼が失墜したことは、ロシアの国益を大きく毀損したことは明らかである。

 

 7. 戦争の準備ではなく、外交や文化による平和の準備を 

中国、台湾、米国、日本各国の経済的な相互依存関係は深く、国民相互間の文化的理解も可能である。ロシアのウクライナ侵略や中国の脅威を口実に、米国の言いなりに軍備拡大を進めることは、憲法の平和主義に反し、日本の安全を脅かすだけでなく、国民生活や人権をも圧迫するものである。

異次元の軍備拡大路線に反対と抗議の意を表明するとともに、経済関係での結びつきの深さを踏まえ活かした、外交や文化交流による「平和の準備」の強化を求めるものである。

 

以上

 
 

 


 

大分合同新聞4月19日付の記事(電子版は会員限定記事)

https://www.oita-press.co.jp/1010000000/2023/04/19/JD0062277494