日本製鉄大分地区の温室効果ガス排出量 〜COP27によせてー | 日本と大分と指原莉乃の左翼的考察|ケンケンのブログ

日本製鉄大分地区の温室効果ガス排出量 〜COP27によせてー

気候ネットワークが公表している、2018年の事業所別の温室効果ガス排出量では、新日鉄住金大分製鉄所(現日本製鉄九州製鉄所大分地区)は全国第5位、全国の7.4%を占める、1527万トン-CO2(CO2に温室効果ガスを換算)となっている。
2018年の大分県内温室効果ガス排出量は、3109.3万トン-CO2だ。

(新日鉄住金は、2020年に企業名を「日本製鉄」に変更している。面倒なので、名称変更前の新日鉄住金についても現日鉄と表記する)






現日鉄大分の温室効果ガス排出量は、2018年には大分県内排出量の49%と実に半分近くを占める計算になる。
2008年の温室効果ガス排出量について、311直後の時期に同様の計算を出したことがあるが、そのときは35.7%だった。「3分の1以上」という言い方を僕はずっと使ってきた。



この計算に用いたのは速報値だったから、確定値で今、計算してみると

新日鉄住金大分の2008年の温室効果ガス排出量は、1332万トン-CO2

2008年の大分県内温室効果ガス排出量は、4045.8万トン-CO2


2008年の日鉄大分の排出量が大分県内排出量に占める割合は確定値で32.9%だったことになる

10年で、日鉄大分の温室効果ガス排出量は微増し、大分県内温室効果ガス排出量はかなり低減していることで、新日鉄住金大分の排出量の比率が増えたわけだ。


大分県環境白書 表2.3-1

https://www.pref.oita.jp/uploaded/attachment/1042953.pdf


現日鉄大分は、同社内で、最も後でできた高炉のある工場で、設備投資や設備更新をするならまず大分に、人員削減も大分が最後というところだ。現日鉄の工場が規模縮小や廃止になることで、大分製鉄所の鉄鋼生産はむしろ増えることになる。

大分県内排出量は、他の削減努力や経済の停滞で減り、現日鉄大分の排出量は微増したことで、県内排出量の半分近くを日鉄大分が占める事態になっている、ということだ。


日本経団連が定める、温室効果ガス排出量抑制は生産単位ごとに自主目標が定められる。いわば生産性に似た、排出抑制法だ。つまり、増産があれば温室効果ガスは増えてしまう仕組みになっている。

地方自治体は、それぞれ温室効果ガス排出量削減目標を持って取り組んでいるが、そこで産業部門は、日本経団連の自主目標の取り組みがあるから、と最初から除外されている。自治体による啓発キャンペーンもいきおい、家庭部門を中心としたものになる。すなわち、公の目標として定められたものでは、増産そのものは野放し、というのが実情だ。


2021年に日鉄が発表した「中期経営計画」(10年計画)では、カーボンニュートラルへの対応は、広畑地区(姫路市)の電炉新設以外に具体策がなく、鉄鋼生産での還元材に石炭でなく水素を用いる新技術や、CO2回収・貯留(CCUS)などの新技術・手法を用いるとされた。10年で実用化できるかどうかわからないものを投資家向けの文書で中心に位置づけでみせねばならない、温室効果ガスやカーボンニュートラルをめぐる製鉄会社の苦しさがあらわれている。

大規模なリストラがこの数年、日本製鉄では行われてきたが、大分地区はほとんど無傷だった。

細かい論評は、以前に書いたFacebook記事に譲るが、カーボンニュートラル社会が公式の目標となった段階で、製鉄会社は存亡の危機にある。カーボンニュートラルとは鉄をできるだけ使わない社会となる蓋然性が高いからだ。




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第27回気候変動枠組み条約締約国会議(COP27)が、今年はエジプトのシャルムエルシェイクで開かれている。COPは、温暖化防止〇〇会議と開催他の地名を入れた通称で呼ばれることもあるが、日本では知られていない地名でしかも言いにくい、覚えにくい地名で、COP27を「温暖化防止シャルムエルシェイク会議」とはメディアも呼びにくいようだ。

大分の地域経済で、日本製鉄とその関連産業への依存度は高い。どうすればいいのか、は実は一筋縄ではいかない。
ただ、日鉄と鉄鋼連盟の言いなりの政策を日本政府がとってきたことで、日鉄と鉄鋼連盟は自らの首を絞める結果になった。
対抗運動が大企業の活動に規制をかけることは、アンチビジネスどころか、短期利益に縛られる企業の中長期利益を擁護するものだ。これは、火力発電でも、原発でも、再生可能エネルギーでも、基本的に同じである。