アベノミクスが息切れ?【消費税10%増税に反対!】 | 日本と大分と指原莉乃の左翼的考察|ケンケンのブログ

アベノミクスが息切れ?【消費税10%増税に反対!】

ここに来て、アベノミクスが息切れしている。消費税10%への引き上げを先送りしなければならないほどに。

 

あまり知られていないことだが、これまでの消費税導入や引き上げ分の税収は、法人減税や富裕層減税の穴埋めに使われてきた。消費税は、社会保障の財源として必要だというのは、国民の支持をとりつけるためのレトリックに過ぎず、日本の財政の実情として事実に反する。まずはこの事実を確認したい。

(以上はネット上で拡散されている画像)

 

アベノミクスの効果とは、1つは株価上昇による企業や資産家・投資家の含み益やキャピタルゲインの増大、すなわちバブル効果であった。1980年代末のバブル経済とはバブルの規模が桁違いに小さいためミニバブル効果と表現しておく。つまり、「擬制資本」と呼ばれる部分の貨幣価値が増大し、含み益や売却益が生じ、そのお金がそれなりの経済効果をもたらした、ということだ。

もう1つは公共投資の拡大、すなわち昔ながらの土木ケインズ主義の発動であった。これは、直接的に関係企業にお金をバラまく効果がある。

ところが頼みの株価が下降気味だ。ミニバブルがはじけてしまえば、アベノミクス効果は命脈を絶たれてしまう。

公共投資の経済効果は、民主党政権以前にさんざん批判されてきたように、限定的なものだ。

アベノミクスの誤算は、投資家・資産家・大企業にもたらされた含み益が、庶民にトリクルダウン(したたり落ちる)しなかったことである。少々、資産家の個人消費は上向いたことも以前あったようだが、ここのところ、勤労者所得は実質マイナスで、個人消費も全体として縮小傾向で、実質GDPもマイナス成長となってしまった。

失業率は低下したが、非正規雇用が増加して、実質個人所得は減少となった。

麻生太郎財務相や在任中の甘利明前経済再生担当相が、大企業が賃上げや国内設備投資に消極的なのをたびたび批判しているのはそういうことだ。アベノミクス効果が、金融バブル効果にとどまり、実体経済を改善するにいたっていないのは、それで利益を取得した大企業や投資家・資産家が、従業員、下請け企業にその果実を還元せず、設備投資は多くが海外に振り向け、内部留保を積み増した。

すなわち、アベノミクス効果が安倍政権の意図に反してトリクルダウン(したたり落ちる)しないのは、政権の口先介入にもかかわらず、日本の大企業や資産家・投資家がトリクルダウンを拒否し、蓄積と海外投資と投機に回しているからである。

トリクルダウン政策が、それなりの効果をあげた時代はあったが、現在の日本では有効性が薄れたのが、アベノミクスが息切れを見せ始めている現況である。だから、消費増税を先送りして景気の腰折れを予防するのだ。

1989年の消費税導入以来、一貫してとられているのが、大企業と富裕層を優遇することで投資を誘発する、という考え方である。法人減税と富裕層減税の財源を消費税に求める、という税制改革が行われてきたのには、この考え方を基盤にしている。

日本で「失われた20年」と呼ばれる呼ばれる時期は、この方向での税制改革を進めていった時期に重なる。

アベノミクスの新しさは、「異次元の金融緩和」と自称する、大規模なインフレ政策をとったことである。詳細は省くが、これで株価バブルの誘発に成功して、アベノミクス効果と言われるものが生じた。

これを、財政バランスをとることを放棄した積極財政政策で補強する。公共事業の大盤振る舞いだ。

ここまではリフレーション経済理論=インフレ目標設定理論を、政府の政策体系として採用したことを意味する。

リフレ派エコノミストは、なべて消費増税に批判的だ。消費増税は、個人消費を冷やし、デフレ要因となるため、リフレ政策と矛盾するからだ。

ところが、安倍政権はリフレ政策と消費増税を両立させようとした。それは、ともにトリクルダウン政策だから必要だと政権に認識されたのだろう。

消費増税+法人減税・富裕層減税の思想は、新自由主義(市場原理主義)政策と親和的だ。所得再分配政策は、市場原理を弱めるものとされる。市場原理主義では、インフレは市場の撹乱要因としてインフレ退治を重視されてきた。

アベノミクスはこの矛盾する政策体系を接ぎ木しようとした。それはともに大企業・富裕層を優遇する政策だから、その矛盾を抱えながら走ってきた。

この矛盾がほころびを見せてきているのがアベノミクスの現況である。いくら、大企業・富裕層優遇をしても、大企業・富裕層がその果実を庶民に還元しようとしないから。GDPの大半を占める個人消費が拡大しなければ景気の好循環は成立しない。麻生太郎財務相は、そうした企業行動を「守銭奴」と、いつもの失言癖と同様の言葉遣いで非難はするが、政権はこの課題の解決の有効策を示すことはしない。今なおトリクルダウンを期待しているのだろうか?

アベノミクスは、いわばカンフル剤を矢継ぎ早に大量にうつことで、経済効果をあげたものだ。カンフル剤の効果があるうちに健康を回復する必要があるが、肝腎の健康回復はイマイチ進まず、カンフル剤による効果をさらに強めようということだ。だから息切れしてしまう。公共事業も乗数効果の高くない巨大事業よりは、乗数効果の大きい生活基盤整備関連事業にシフトすれば、投資額が減少しても経済効果は確保できる。

消費増税について言えば、ここで大企業・富裕層優遇税制を強めても、大企業・富裕層から庶民へのトリクルダウンは期待できない。逆進性のある税制を強化することは、家計を圧迫し、個人消費を冷やし、景気を悪化させる。

今の日本に必要なのは所得再分配である。企業行動でトリクルダウンが起こらないなら、公的制度で大企業・富裕層の富を庶民に配分することが、日本経済の回復の良策である。したがって社会保障の充実の財源は、大企業・富裕層への課税強化でまかなうべきだ。タックスヘイブン対策を国際協調で行い、課税逃れの道をふさぐことも当然に含まれるべきだ。

庶民の生活を保障することで、個人消費を刺激し、高い経済効果をもたらすことができる。

 日本の官庁エコノミストには、所得再分配政策は労働紀律を緩める悪で、大企業・富裕層優遇のトリクルダウン政策が善だという思い込みがあるように思われる。その偏ったイデオロギーに、なぜそんなにこだわるのか?

 

アベノミクス効果は、株価バブルの効果のある都会(株を保有したり売買したりする投資家や企業の所在地)にわずかにあるのだが、地方に波及していない。

わが大分を選挙区とする自民政治家たちは、アベノミクス効果が大分に波及していないことを認めながら、だから自分がアベノミクス効果を大分まで持ってくるとして得票してきた。その根拠のない約束は、これまでの負の実績に照らして考えるべきなのである。

 

ゆえに、僕は消費増税の先送りだけでなく、消費増税に将来的にも反対だ。

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