佐藤樹一郎さんの「大分市の明日を語る会」に参加してきた | 日本と大分と指原莉乃の左翼的考察|ケンケンのブログ

佐藤樹一郎さんの「大分市の明日を語る会」に参加してきた

大分市長選に立候補を表明している佐藤樹一郎(きいちろう)さんの演説会なのか、「励ます会」なのか、「大分市の明日を語る会」という集会が1月31日に開かれた。主催者によれば参加者は約300人。

樹一郎氏は、僕の高校の1期生である(僕は12期生)。
主催団体「創樹会」は、高校同窓生有志でつくる、樹一郎氏の後援会組織である。参加者には同窓生でない人びとも見られたが、司会者や登壇者は高校の先輩たちで固められ、集会の終了後には、校歌や「雄城高賛歌」を流すというものだった。「雄城高賛歌」なんて、ごく狭い年代の同窓生しか覚えていないぞ(僕の年代で記憶している僕は例外的存在だ)
同級生が会の開催をネットで案内していたので(勝手に)行ってきた。
僕は樹一郎さんを応援する気はないが、どんなことを言うのかを聞いてみようと思ったのだ。

主催者あいさつに続いて、広瀬勝貞大分県知事があいさつ。
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広瀬氏の出席には、瞠目した。
「大分市政についてどうこう言うつもりはないが、たたかう相手もまだいないし、経産省の後輩だから励ましにきた」ということで、樹一郎氏入省当時の思い出をひとくさり。うまいことを言うもんだ。
釘宮磐大分市長が、知事選への出馬表明をして、広瀬氏優勢は動かなくても、油断すれば負けるくらいの力は釘宮氏にはある。樹一郎陣営の活動はほぼ自動的に広瀬氏の選挙活動ともなる。

ちょっと怖いと思ったのは、樹一郎氏が知事の話の間中、起立していたことだ。
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反対側の創樹会関係者がどうしていたかは見落としたが、「主役」が起立しているのに、そちらが着席していたとは考えにくい。
広瀬知事は、大分県内で圧倒的な力を持つ。広瀬氏は、経産省の先輩でもあり、経産省事務次官も務めた。

その後、樹一郎氏があいさつをして、後援会長(この人も高校同窓生で医師)のビデオメッセージを流して、同窓生の経営者や保育園長などをまじえて、パネルディスカッションという流れ。最後はガンバロー三唱でしめくくる。おいおい、これは演説会じゃないのか?決起集会だったのか?
ガンバロー三唱に先立っては、ガンバローのやり方を教える。わが同窓の先輩同輩たちの多くが選挙素人だから、そこから教えるというわけだ。いえ、僕はガンバローをしませんでしたよ(笑)

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(発言する佐藤樹一郎さん)

樹一郎氏は、大分を離れて長く、本人もあいさつで「大分のことで知らないことも多い」と述べた。まとまった演説をするほど、大分市政の現況と、それにかみあった氏なりの政見を語れるほどには政策も固まっていないから、政策形成フォーラムの意義を兼ね備えた会にしたのだと、僕は思った。
わが愛しの大分市観光大使(笑)が誰かも知らないのではないか、と思ったが、それを確かめることはしなかった。

樹一郎氏が語った政見の軸は
1.都市間競争に勝ち抜く大分市にする。大分市に立地する大企業が、国内から出て行っても大分市には残るようにする。
2.リニアモーターカーを、東京-大阪-四国-大分とつなぐ。
3.市民の意見をよく聞き、市民のために汗をかく市役所にする。

1.は、平松守彦・広瀬勝貞県政がやってきた政策の継承・拡大を意味する。釘宮市政もそれに追随してきたわけだから、この点で市政は変わらないことを意味する。広瀬県政・釘宮市政は、巨額の企業立地補助金を支出して、大企業誘致競争に加わってきた。企業誘致には成果をあげてきたようにも見えるが、巨額の立地補助金その他の優遇措置の数々は、費用対効果の点で問題がありすぎる。相次ぐ大量の「派遣切り」や工場閉鎖に対し、何一つ言わない。税制優遇を初めとして、立地大企業には大小さまざまな優遇措置をはりめぐらしていて、経営体力がありあまっている企業群に、そこまでやってやる、トリクルダウン理論にもとづく、呼び込み型経済政策の効果としては費用をかけすぎている。
新日鉄大分に優遇措置130215
(「しんぶん赤旗」2013年2月15日付より)

特に、国内から企業が出て行っても大分市にだけは残るようにする、との発言は重大である。これは、これまでの政策の継続のみならず、さらに大企業優遇政策の拡充を進めることの宣言で、「アベノミクス効果」が大分にまで波及しない構造を強化することの主張である。
都市間競争の名の下に、誤った国策を推進するということである。

2.について、前述の同級生は「リニアなんて非現実的だから、気にするなよ」と言っていたが、大分にとっては非現実的だが、東京-名古屋間のリニア新幹線着工は、現実の政治的争点である。どれだけ本省・経産省への忠誠を誓うことを重視しているのか。
豊予海峡架橋構想の復活を唱えるものでもあり、時代遅れの無駄な巨大公共事業をまた始めようという話には、正直、あきれるほどだ。
氏は、経産省時代に産業・エネルギー部門を歩いてきたことも語られた。なるほど、まごうかたなき原子力ムラの黒子役だったのね。

9.については、誰でも言うような無内容だけど、聴衆のなかには釘宮市政批判として聞いた方もいるかもしれない。
広瀬知事が、大荒れの住民説明会の翌日に、「住民多数の理解は得られた」と宣言したときの衝撃を、僕は忘れない。
http://ameblo.jp/uedaken-ichi/entry-11278308317.html

パネルディスカッションでの、パネリストたちやフロアからの発言には、提言や要望の類が多く、ここでふれる必要を感じない。参加者の樹一郎氏への好感度を高める効果は持ったが。
フロアから、僕も発言した。一発目は手が挙がりにくいから、僕が手を挙げて発言することになった。こんな異分子を最初に発言させないようにサクラを用意したほうがいいよ、同輩・先輩諸氏よ(笑)

最初にフロアに発言を求めたのは、教育がテーマのときだったので、司会者の問いは「大分の教育をよくするために必要なことは?」だった。
僕の発言は
「今、教育に必要なのは競争の緩和だ。合同選抜が理想の制度だったとは思わないが、競争を緩和する効果があった。今は生徒たちは輪切りにされて競争が激しすぎる」
というものだ。
樹一郎氏は、合同選抜についてあいまいな言葉遣いながら否定的な評価をし、「競争は必要だ」と反論した。
合同選抜とは、大分以外の人びとには耳なじみのない用語だし、大分人でも若い人びとは知らないだろう。大分市中西部の複数の県立の進学校が共同で入試を行い、生徒の学力水準が均等になるように振り分ける制度だ。制度の名目は「新設校の育成」だが、進学校間の学校間格差をなくすことで、高校受験競争の緩和効果もあったが、一部の生徒が希望しない高校に振り分けられることの矛盾も大きかった。樹一郎氏は、主として矛盾のほうにフォーカスした話をした。
合同選抜のことは、大分雄城台高校卒業生にとって、のどにささった骨のようなものである。雄城高は育成の対象とされた新設校(1973年開校)で、郊外に設置されたため、設置された稙田(わさだ)地区の人口がまだ少なかった初期は望まぬ振り分けで入学を余儀なくされた者も多かった。しかし、希望せざる進学先で学校創造をなしとげ、活気のある高校生活を送ったことが、雄城高同窓生の年長者たちの誇りでもあった。
その後、合同選抜は解体され、学校ごとに入試が行われるようなると、進学校間に格差が生まれ、生徒は学力水準ごとの輪切りで進学先が決まるようになる。その中で、雄城台高校は地位を下げ「県下有数の進学校」の座を失った。
自民党の推薦もとりつけた佐藤樹一郎氏を、東大卒のキャリア官僚だったから担ぐ人びとは、競争教育に賛成の人びとが多いと思われる。が、合同選抜の解体で母校の地位が低下したことを嘆くのも雄城高同窓生のつねなのである。
競争の緩和の訴えはアウェー感を持ちながらの発言で、正直、論点を誤ったと思った。が、雄城高の現状を意識して合同選抜を引き合いに出したことは存外に効果的だったようで、パネリストとして壇上にいた知人の創樹会幹部は「あいつは、自分は受験勝ち組のくせに」と嘆いていたらしい。(こんな情報が僕自身の耳に届くとは、地方の世間の狭さよ 笑)
そうえいえば、樹一郎氏の反論の後、まばらながら拍手が起こったが、拍手をした人びとは、僕に集会をクラッシュされかねないと危機感を持ったのかもしれない。
その後、碩田中学校区の小学校統合で苦労された方が発言した際には、「まちなか居住を勧めるというのに、大分市はまちなかの小学校をつぶす。おかしい」と不規則発言もした。
司会者が「いいですか?」というのには「よくないです」と応じた。

その嘆きの先輩には、終わりしなに「あの程度ですませてくれてありがとう」と、妙な礼を言われた。中心市街地についての市民意見交換会で、激しく市を批判する僕の姿や、僕の主張をよく知る方はそういうかも(笑)
僕がテーマ設定の文脈を無視して、東名リニア新幹線批判でも初めていたら、本当に集会をクラッシュされたかも、という危機感を持った?
この後、もう一度、観光をテーマしたとき、発言をしているのだけど、そのときは協調的提言ですませた。あのとき、あの先輩はひやひやしたのだろう。
ちなみにそのときの発言内容は「観光大使のファンだ」と前置きして(会場のリアクションが薄かったなあ。フロアにいた麻生栄作県議だけがはっきりとしたリアクションをとった)、大企業工場群の観光活用、市内名所が大分市民がめぐることの経済効果、農林水産業危機の訴えとセットのグリーンツーリズム推進といったものとした。

政策の各論はなくても、佐藤樹一郎さんの考え方はよくわかった。
トリクルダウン経済政策の信奉者で、市場競争原理を過度に重視し、環境破壊の無駄な公共事業を推進し、経産省時代は産業・エネルギー畑を歩いてきた方である。

終了後、お知らせをしていた同級生から「来るとは思わなかった」と言われた。そうだろう。応援する気のない政治家の演説会を聴きに来るなど、普通はしない。
その同級生からは「佐藤樹一郎でググったらケンケンのブログが上のほうに来るんだ。困ってるんだ」と愚痴られた。批判ブログ記事が検索の上の方に来て、ほかは新聞記事とかじゃあ、後援者としてはたまったもんじゃないよね(笑)
オフィシャルページを検索上位にあげるように対策してくれ、とエールを送った。
こうしてリンクをはって、検索順位を上げるのに貢献したけど、この記事をアップすること自体が、その妨害行為だからなあ(苦笑)