自分が出した、大阪府の青少年条例改正のパブコメに送った意見(の一部)を貼ってみます。



1.

 意見募集手続終了後、もう一度青少年問題協議会を開催し、寄せられた意見を検討する機会を設けることを強く求めます。


 意見募集手続は、法律等の改正において広く意見を求め、よりよい制度を作るためのものですが、現在の運用では、意見を募集したあとその検討を担当部署内でするのみで、事実上応募された意見が法律・制度等に反映されることはほとんどないのが現状です。


 今回の青少年健全育成条例改正にあたっては、意見募集手続き後、集計した意見を青少年問題協議会において検討を行い、協議会に対してその意見を求め、優れた意見であると認められれば改正の内容に積極的に採用する手続きとするべきです。



2.


 有害図書類の指定基準においける、「変態性欲に基づく行為又は近親相かん、乱交等の背徳的な性行為を露骨に表現するものであること。」という項目を削除するべきです。


 近親相かんや乱交等の性行為は、すでに前の各号によって定められる性行為に含まれるもので、特定の性行為のみを「露骨に表現するものであること。」として特別に定義する理由及び根拠はありません。


 また、さきに東京都で可決された青少年健全育成条例の改正における議論で、「近親相姦等の性行為のみを殊更特別に定義し規制する理由はあるのか」という疑義が多く呈されました。


 有害図書類の、性描写における規制基準はあくまでも「著しく性的感情を刺激するもの」であり、その尺度はあくまでも「青少年に対し卑わいな、又は扇情的な感じを与えるものであるか」という事項のみで判断されるべきです。



3.


 有害図書類の指定基準における、「青少年の犯罪を著しく誘発するもの」として定められる各項目に、『(表現技法によるものを除く。)』という文言を加えるべきです。


 メディアコンテンツの内容の多様化により、「作品中において犯罪及び自殺を賛美した表現をすることにより、読者に犯罪及び自殺行うことの価値を問いかけ、犯罪及び自殺を否定・批判をしている」という表現形態が多く存在します。
 しかし、これらのような作品を有害図書に指定する理由はありません。


 よって、これを明確に除外する条文にするべきです。



4.


 有害図書類の指定基準における、「青少年の犯罪を著しく誘発するもの」として定められる各項目の末尾に、『(注意書き、解説及びその他の方法により、青少年の犯罪又は自殺を誘発するおそれがなくなっているものを除く。)』という文言を加え、表現の自由に配慮し、より対象を限定する条文にするべきです。



5.


 いわゆる包括指定の基準を、現在の「10分の1もしくは10ページ以上」から、「5分の1もしくは20ページ以上」に変更するか、基準を厳格化した上で自主的な努力義務を規定するべきです。


 現在、全国の長野県を除く各都道府県において、有害図書類の包括指定が行われていますが、そのうち30以上の自治体においては、その基準は「5分の1もしくは20ページ以上」か、それよりも厳しい基準となっています。


 しかし、その基準を採用していて、しかも個別の指定を休眠している県も少なくありませんが、それらの県において有害図書類を視聴したことで非行や犯罪が誘発されたような事例が多いというような現象は発生していません。


 よって、大阪府の現行の包括指定の基準は、必要以上に厳しすぎるものであると思料します。


 一般の図書類と有害図書類の境界は曖昧であり、条例本体に具体的な規制基準を盛り込んだとしても、なお曖昧さや恣意性は払拭できるものではありません。


 このようなメディアコンテンツの性質を踏まえ、たとえば東京都では「表示図書」制度を採用しています。また、大分県では、平成17年の条例改正の際、包括指定の基準を「3分の1もしくは30ページ以上」に止めたまま「表示図書」制度を並行して導入し、いわゆる「グレーゾーン」においては業界の自主的な取り組みに任せる形態を取っています。


 また、静岡県や岡山県では、有害図書(個別指定・包括指定)の基準に抵触しないけれども青少年への刺激が心配される図書類については、「不健全図書類」という名称で罰則等のない努力規定が盛り込まれ、やはり業界の自主的な取り組みにゆだねています。


 このような、包括指定の基準を厳格化するのではなく、業界の自主的な取り組みにゆだねる施策を採用する都県がある中で、大阪府がこれらの事例を参考にしない理由はありません。


 今回の条例改正において、包括指定の基準を見直し、最も多くの県で採用されている「5分の1もしくは20ページ以上」に変更するか、基準を厳格化した上で自主的な努力義務を規定するべきです。



6.


 条例改正にあわせて、規則で定める有害図書類等の区分陳列の方法、規則第8条(2)で定められる陳列方法において、ビニール包装等が義務づけられているものを「必要に応じて」という言葉を追加して、要件を緩和するべきです。


 大阪府の青少年健全育成条例では、小規模な書店において、有害図書類を店頭に陳列する場合、事実上包装する義務が課せられています。しかし、本来の包装義務の趣旨は、青少年があやまって図書類の内容を閲覧してしまうことを防止するものであり、これを防止するための方策は、それぞれの店舗によって異なります。


 区分陳列において包装が必要であるか否かは、店舗や店舗のある地域の特性によって各々が判断するのが合理的であり、全ての店舗において一律に包装の義務を科すのは明らかに過剰な規制です。


 加えて、一律に包装義務を課すことは、小規模な書店などへの負担を一方的に増やし、結果として書店が有害図書類の取扱いをやめてしまうようなことがあれば、それはまさに府民の権利を事実上制限するもので、条例第9条『この条例は、府民の自主的な活動を尊重しつつ青少年の健全な育成を図ろうとするものであって、これを濫用し、表現の自由その他この条例の規定の適用を受ける者の自由と権利を不当に侵害するようなことがあってはならない。』の趣旨に違反するものです。


 また、地球環境を考えゴミを減らす事が求められる現在において、必要以上に、一律に包装の義務を課すことは環境面からも問題があります。


 そして、一部の地域では、有害図書類の包装に、繰返しの使用が可能な「ゴムかけ」が行われている地域もあり、この方法においても青少年への弊害が報告されていないことから、大阪府の現行規則のとおりの包装の義務を今後も課すことは、このような方法を導入するにあたっての弊害となりえます。



7.


 条例改正にあわせて、規則で定める有害図書類等の区分陳列の方法、規則第8条で定められる陳列方法において、他の都道府県を参考にして、より多様な区分陳列の方法を採用するべきです。


 たとえば、


 ・有害図書をビニール包装・ひもとじして陳列する方法
 ・扉等の内側に有害図書を陳列する方法
 ・その他知事が認めた方法


 を追加するべきです。


 区分陳列の方法に多様性を持たせることにより、小規模な書店等でも区分陳列がしやすくなることで、結果として区分陳列の実効性が上がり、また区分陳列について創意工夫がなされることが期待できます。


 特に、「その他知事が認めた方法」については、これを加えることにより、新たに実効性の高い区分陳列の方法が発案された場合に、速やかにそれを取り入れることが出来ます。



8.


 前項の区分陳列において、女性に配慮した区分陳列の方法を新たに模索するべきです。


 近年の有害図書においては、レディースコミックやボーイズラブ等、女性向けの商品が増加しています。

 しかし、女性がいわゆる成人向けコーナーに入ることは、まだまだ差別的な目で見られることが多く、結果としてそれらの商品群の区分陳列が躊躇されている原因のひとつであると思料します。



9.


 包括指定および団体指定の定義については、現行の「青少年に有害な図書類とする」というみなし規定から、「有害な図書類と同様の方法で陳列及び販売するよう努めなければならない」と、努力規定に変更するべきです。


 包括指定および団体指定のみなし規定は、法律上では「同等とする」という意味として解釈されます。しかし、包括指定の基準は、条例によって定まってはいるものの、「卑わいな姿態」や「ただし好色的興味に訴えるものを除く」など、個人の価値観によってその解釈に幅が出る可能性がある曖昧なものです。


 包括指定で有害図書類と見なされた商品についても、区分陳列や青少年への販売禁止義務は罰則付きで規定されていますが、前述のとおり包括指定に係るか否かの基準が曖昧なため、これを罰則付きで義務づけることは、書店等への負担が大きなものとなります。


 東京都などでは、包括指定ではなく、図書類の発行者に年齢制限をするか否かを自主的に決定する表示図書制度が導入されています。表示図書類の区分陳列と青少年への販売禁止義務については、「努めなければならない」という文言で、罰則も設けられていませんが、店頭においてはおおむね守られており、有害図書類とみなさず、罰則を課さなくても販売制限や区分陳列が問題なく行われる証左となっています。


 よって、大阪府においても、わざわざ基準に該当するか否かが曖昧である包括指定について、法律的に強いみなし規定にするまでの必然性は存在せず、区分陳列の義務規定だけ明記すれば十分であり、書店等に無為に罰則という圧力をかけている現在の条文はあまりに過剰な規定であると思料します。


 仮に導入するとすれば、自動販売機への収納禁止等を規定する項目において包括指定を規定すればよいものであり、現に東京都ではそのように運用しています。



10.


 条例中で使用されている、「有害図書」「有害がん具」という名称を、たとえば「年齢制限図書」「年齢制限がん具」というような名称に変更するべきです。


 たとえば有害図書は、「青少年に有害な図書類」の略称ですが、その名前から、「存在そのものが有害な図書類」と誤解されるおそれがあります。


 これでは、「性表現や暴力表現そのものが有害であり、排除・弾圧すべき対象である」という偏見を生み出しかねません。


 これは、条例第9条『この条例は、府民の自主的な活動を尊重しつつ青少年の健全な育成を図ろうとするものであって、これを濫用し、表現の自由その他この条例の規定の適用を受ける者の自由と権利を不当に侵害するようなことがあってはならない。』の趣旨に違反するものです。


 加えて、表現・コンテンツの多様化によって、有害図書として発表された作品の中から、その内容が評価されて、表現内容をアレンジした上で他のメディアに移植されたり、海外に翻訳される作品が出てくるようになりました。


 また、東京都および岩手県および東京都では条文中で「指定図書類」という名称が、新潟県においては「販売制限図書類」という名称が使われており、また店頭に置いては「成人向け」等の呼称が使用され「有害図書類」という呼称は使われていないことから、条例中においても「有害図書類」の名称でなければならない理由は何もありません。


 このような現状を踏まえ、有害図書という名称は、変更するべきです。