4年生になると、ジュニアチームの最高学年ということで、レギュラーで大会に出させてもらう機会が増えた。

町のリーグ戦、郡のリーグ戦、招待試合…

これらのジュニアの部で他チームとの試合経験を積んでいった。

仲間は4人。変わらずだ。
ひとつ下の学年の人数が多かったので、その子達と一緒に試合を作っていた。

そしてぼくには弟がいる。

弟も同じチームの一員である。
その学年も、人数こそ少なかれど野球センスに溢れたやつが何人かいた。
その子達とも一緒に試合を作っていった。

ある日の天理で行われた冬の招待試合。
師走のここらは寒い。

いくら動いても体はあったまらず、アップがアップの役割をはたしているかというと、果たしてはいなかっただろう。

そんな寒い中、プレイボールだ。

最初ぼくはサードだかキャッチャーだかを守っていたんだ。
幼馴染がショート。
意識として、ぼくはこのまま内野手として成長を遂げて行くんだろう、と思っていたのだが…

なんと監督が(父です)僕をピッチャーに送り出した。

僕は戸惑った。
確かに寒い中長いイニングを投げさせるのはよくない。
しかしぼくをマウンドに上げるのはもっとよくないんじゃない?

なんせ初ピッチャーだ。
実は小学校のときは試合より練習の方が好きで…というより、プレッシャーがかかる試合が嫌いだっただけ。

そんなメンタルを持った僕が、一番責任の重いポジションに回された。

なんてこった。
これで何かしでかしたらまた監督に怒られるやないか。

そんなことも考え、マウンドへ。
要はあまり気乗りのせぬまま、責任者になったわけだ。

もちろんストライクを投げれば話は簡単なのだが、ストライクを投げるということ自体は全く簡単じゃない。

ボール連発やったらどないしょ。

いろいろ不安がよぎる中、ぼくの脳裏にあのかっこいい先輩の像が浮かんだ。

そうだ、あの人の投げ方を真似しよう!
そしたらなんとかなるかもしれない!

真似してみた。
真似になっていたかどうかはわからない。
そう、こういうのは自己満足なのだ。

結果ストライクがポンポン入る。
面白いように入り、試合が有利に進んで行く。

ベンチに帰ると、監督は目をまん丸にしていた。
ヘッドコーチ(監督の友達)も、なんてこったというような顔をしてぼくを迎え入れた。

きっとダメ元だったんだろうな。
それがうまいこと行ったわけなんだから、そりゃあそんな顔もするよな。

試合会場にいたみんなが、ぼくのピッチャーデビューに驚きを隠せなかったと思う。
そりゃそうだ、投げた本人が一番驚いているのだから。

これがキッカケで、ぼくはピッチャーもやることになった。

自然と人よりボールを投げる回数も増えるのだ。

そう、みんなより肩と肘を使うのだ。

苦しい桜の季節がやってくる。


悠介