脱隊兵騒動の渦中にあったためか,この辺りは長く綴られている。
之レヨリ脱隊兵ハ旧隊名ヲ以テ小郡関門勝坂関門一ノ坂等ノ諸口ヲ固メ舩木ヲ固メ等ヲナシ乱暴ヲ極メタリ。
此時私廻顧スルニ,自宅ニ帰リ居ル萩地方ノ常備軍残員ハ長府ニ集マリタル模様ナルヲ察シ,其処ニ至ントスル一刹那又候 山口ニ在ル脱隊兇徒山田五郎兵衛ナル者曰ク,富永有隣ノ命ナリトテ足下ハ鋭武隊ヘ復帰セラルベシト。然ル上ハ自分砲兵長ナル故當分ノ間我砲兵タリ居ラルレバ不日足下ハ役人ニ昇進セラルルデアロー。此レ丈ケノコトニテ別段罪ハナシ。今晩ハココニ一泊シテ,明朝,青木武雄,安澤鼎三ト足下連レ帰ルヲ約ス。足下ハ氣ノ毒ニアロフガ,暫ク堪ヘラレヨト。之ヲ諾シ,自分ハ一ケ月ヤ二ケ月ノ中ニ帰宅出來ヤ否難計事ニ付,今ヨリ大海ノ親戚ヘ行キテ談シオカネハナラヌコトアリ,然レバ帰リニ夜深更ニ及ブト察セラルレバ直チニ帰宅シ,明支度調ヘ此方ヘ來ルト山田ニ申シ向ケ別レタリ。山田ハ片山ナル上田良弼宅前岡廣長次郎方部屋ニ青木武雄ト山田五郎兵衛ノ両人止宿シタリ。安澤鼎三ト戸田操九郎,江嵜與三郎方部屋ニ止宿シ居レリ。上田良弼不容易斡旋ニテ私ト戸田操九郎,安澤鼎三ヲ其夜半頃上田宅ヘ集合シ,酒肴飯等饗應シ上田氏ハ銕鉋猟トシテ岩屋沖ニ行クト稱シテ私共ヲ秋穂浦西ノ端小林平太郎ガ漁舩ヲ雇ヒ三河内英造寄宿シ居ル石田孫助ヲ私ガ誘ヒ出シ,共々漁舩ニ乗込ミ濤ノ中ヘ漕行キレハ,既ニ四方明ルシ。山田五郎兵衛ハ,此策ニ陥リ青木武雄ヲ一人連レテ山口ヘ帰りタリシ。
富永有隣からの命というのは,それまでの付合いからみて,間違いないことだろうと思う。しかし,行かなかった。どういう情報のもとにいたのか,富永有隣は,脱退兵騒動の首謀者の1人とか。行っていたら,どうなっていたか?死んでいたか,処刑されていたか・・・。生命の危機の何度目になるのだろう。
次は,秋穂→岐波→床浪→長府である。船で移動している。
之レヨリ脱隊兵ハ旧隊名ヲ以テ小郡関門勝坂関門一ノ坂等ノ諸口ヲ固メ舩木ヲ固メ等ヲナシ乱暴ヲ極メタリ。
此時私廻顧スルニ,自宅ニ帰リ居ル萩地方ノ常備軍残員ハ長府ニ集マリタル模様ナルヲ察シ,其処ニ至ントスル一刹那又候 山口ニ在ル脱隊兇徒山田五郎兵衛ナル者曰ク,富永有隣ノ命ナリトテ足下ハ鋭武隊ヘ復帰セラルベシト。然ル上ハ自分砲兵長ナル故當分ノ間我砲兵タリ居ラルレバ不日足下ハ役人ニ昇進セラルルデアロー。此レ丈ケノコトニテ別段罪ハナシ。今晩ハココニ一泊シテ,明朝,青木武雄,安澤鼎三ト足下連レ帰ルヲ約ス。足下ハ氣ノ毒ニアロフガ,暫ク堪ヘラレヨト。之ヲ諾シ,自分ハ一ケ月ヤ二ケ月ノ中ニ帰宅出來ヤ否難計事ニ付,今ヨリ大海ノ親戚ヘ行キテ談シオカネハナラヌコトアリ,然レバ帰リニ夜深更ニ及ブト察セラルレバ直チニ帰宅シ,明支度調ヘ此方ヘ來ルト山田ニ申シ向ケ別レタリ。山田ハ片山ナル上田良弼宅前岡廣長次郎方部屋ニ青木武雄ト山田五郎兵衛ノ両人止宿シタリ。安澤鼎三ト戸田操九郎,江嵜與三郎方部屋ニ止宿シ居レリ。上田良弼不容易斡旋ニテ私ト戸田操九郎,安澤鼎三ヲ其夜半頃上田宅ヘ集合シ,酒肴飯等饗應シ上田氏ハ銕鉋猟トシテ岩屋沖ニ行クト稱シテ私共ヲ秋穂浦西ノ端小林平太郎ガ漁舩ヲ雇ヒ三河内英造寄宿シ居ル石田孫助ヲ私ガ誘ヒ出シ,共々漁舩ニ乗込ミ濤ノ中ヘ漕行キレハ,既ニ四方明ルシ。山田五郎兵衛ハ,此策ニ陥リ青木武雄ヲ一人連レテ山口ヘ帰りタリシ。
富永有隣からの命というのは,それまでの付合いからみて,間違いないことだろうと思う。しかし,行かなかった。どういう情報のもとにいたのか,富永有隣は,脱退兵騒動の首謀者の1人とか。行っていたら,どうなっていたか?死んでいたか,処刑されていたか・・・。生命の危機の何度目になるのだろう。
次は,秋穂→岐波→床浪→長府である。船で移動している。