ここに私を模した人形がある。
なぜ、あるのか?
なぜ、常に持ち歩いているのか?
なぜ、「なぜベストを尽くさないのか」
としか言わないのか?
ここに、その答えを示すのは簡単だが、
それでは諸君のためにならない。
想像は脳を活性化させる。
時には、こうした学術的な問題に、
深く思いを巡らせてみるのもいいだろう。
ただ、ひとつだけ諸君の疑問に答えるとしよう。
多くの者が、この「上田次郎人形」の
一般発売を望んでいるようだが、
残念ながら、当面その予定はない。
なぜなら、次郎人形を手にした者が、
『次郎人形依存症』(Jiro doll dependence syndrome)
に陥ってしまう恐れがあるからだ。
愛ゆえに寝食を共にしてしまうばかりか、
中には“人生のパートナー”に
次郎人形を選んでしまう者すら現れかねない。
ひいては、それが少子化や孤立社会を
助長してしまうかも知れないのだ。
諸君が、次郎人形を欲してしまう気持ちは
痛い程よく分かる。
しかし、実際に一般発売されるのは、
日本社会がより成熟し、
私と同レベルの思考を
持ち合わせるようになってからになるだろう。
人形になってすら、人々を魅了してしまう私。
ただ、次郎人形を所望する諸君にあえて問いたい。
それにいか程の対価を投じる覚悟があるのか、と。