アドマイヤグルーヴの話 | 上村洋行オフィシャルブログ「うえちんのひとりごと」Powered by Ameba

アドマイヤグルーヴの話

この前のリクエストやけど
たくさんのコメントもらえたことはとても嬉しい。
僕としても皆さんの声に応えて行きたいと思うんやけど
サイレンススズカなど、一言では語りつくせない馬も多いんで
それはまたその都度ということでお願いします。

今日はアドマイヤグルーヴの話をします。
僕がアドマイヤグルーヴに乗せてもらったのは
秋の天皇賞とエリザベス女王杯の2回だけなんやけど

これだけの馬に乗せてもらえて
橋田先生や近藤オーナーにはすごく感謝してます。

思い出深いエピソードは天皇賞のときのこと。
実はこのレースの前の日
京都で乗っていたんやけど
1レースで落馬して足を怪我してたんです。

馬の下敷きになって足が抜けなくなってしまって
「うわ~、これはやばい」って思ったね。

その日は大事をとって騎乗を取りやめたんだけど
足の痛みはどんどんひどくなって
東京駅に着いたときは手すりにつかまらないと
歩けなくなってた。

普通ならそのまま翌日も乗り替わりやったと思います。


でもせっかくもらったGIで勝負できる馬に乗れるチャンス。
男としては、このチャンスを逃したくなかったし、
乗りたいという気持ちも強かった。
もちろん、ホンマに乗るのが厳しかったら
オーナー、先生、スタッフさん、そして馬にも失礼やから
止めといたと思う。

レース当日、東京競馬場の医務室にいる先生が僕を助けてくれた。
大学ラグビーなども担当しているお医者さんで
僕の足の具合をみてくれて
痛み止めの注射を打ってくれた。
けっこうたくさん注射打ったよ。
5,6箇所打ったと思う。

その痛み止めが効いて
その日の8レースで勝ってね。
これなら「なんとかなる!」っていうくらいになり、
万全とはいかへんかったけど戦うことができた。

天皇賞のレースはスローペースになり
この馬には厳しい流れになったけど
その次のエリザベス女王杯では名誉挽回もできたかな。

あのときはレース前から
「いけるんちゃうかな」って
騎手独特の勘みたいなものがあって
(たまにそういうのあるんです)
レース前に馬に話しかけたね。

馬と人に暗示をかけたんです。
「やってやろうぜ!」
っていう具合に。

あのレースは勝ったスイープトウショウが
強かったというしかない。
でも、僕自身も夢をみられたレースだった。

いつかGIの舞台で勝ちたい。
やっぱり騎手としてそれが目標だよね。