ジークフリート@Met Opera HD | マンハッタンのランダムウォーカー

ジークフリート@Met Opera HD

神と邪悪な種族と人間が世代を超えて、世界を支配できる力を持つ指輪を求める物語、『ニーベルングの指輪』4部作の3作目ジークフリート(Siegfried)を見てきました。

あらすじ http://www.and.or.tv/operaoperetta/73.htm


メトロポリタン歌劇場で見たかったのですが、あいにく、チケットが完売で、舞台を映画館で生放送するHDで見ました。生の舞台でないのが残念でしたが、歌劇場だと手元の字幕画面を見るところを、映画館では字幕が画面上に流れるので、よりオペラに集中できたのは、良かったです。


さて、オペラですが、今回も舞台セットは、ロベール・ルパージュ(Robert Lepage)監督の下、総重量40トン、総工費は約15ミリオンドルのコンピュータ制御式パネルです。音響効果で雑音を抑えているとはいえ、40トンを無音で動かすのは無理で、パネルの回転するときの音が気になりました。


ジークフリートでは、ニーベルングの指輪4部作の中で、主人公ジークフリート役の歌が難しく、更に5時間の舞台に耐えられる声と体力が求められるという、テノール歌手には相当きつい作品です。当初、キャスティングされていた歌手が辞退し、後任も開幕1週間前に辞退してしまいました。そこで、急遽、抜擢されたのがテキサス出身のジェイ・ハンター・モリス(Jay Hunter Morris)です。


ジークフリートは、世界を支配できるラインの黄金で作った指輪を取り返すために、神ヴータンが計画的に、人間との間に作った子供達が禁断の恋に落ち、生まれた子。その後、その指輪を虎視眈々と狙う醜いドワーフのミーメに育てられ、何も恐れを知らない勇敢な17歳に成長しました。ただ、ミーメと二人で森で生活していた為に、母親も知らず、女性を一度も見たことがありません


そんな勇敢だけど純真無垢なジークフリートを、若くてハンサムで男らしい体系のジェイ・ハンター・モリスは、すでに見た目だけで、ジークフリートらしさが出ているだけでなく、17歳の若者のような若々しい声と演技を見せ、まさにワグナーが思い描いたものと、思われるほどのジークフリートでした。


代役の代役がこんなに活躍するなんてMetとしては大成功だと思います。

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http://www.nytimes.com/2011/10/29/arts/music/metropolitan-operas-siegfried-is-led-by-impressive-singing.html?_r=1&ref=metropolitanopera

育ての親、ミーメにけしかけられて、指輪によってドラゴンと化した巨人族に挑みます。その際に、ドラゴンの血を浴びたことで得た鳥の声を理解できる能力により、女神ワルキューレのブリュンヒルデが、真の勇者しか通れない炎に守られて山で眠っていることを知ります。
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ここで、初めて女性を見たジークフリートは、驚き、生まれて初めて恐怖を感じたのです。一方、ジークフリートによって目覚めたブリュンヒルデは、自分が神ヴータンに背き、ジークフリートの両親を助けたために、その罰として神聖を解かれて、人間になってしまったことを思い出し、混乱します。この人間となったブリュンヒルデの苦悩、そして、宿命の子、ジークフリートとの新しい愛の誕生を描くシーンは、じっくりと30分もかけて演じられます。


全体として、育ての親ミーメ(歌手:ミーメ役100以上のプロ、ゲルハルト・シーゲル)と子ジークフリート、ジークフリートと祖父の神ブータン(歌手:ブリン・ターフェル)、ジークフリートと妻となるブリュンヒルデ(歌手:デボラ・ヴォイト)、どの人物関係にもドラマがあり、どの歌手も演技も歌も素晴らしく、また、オーケストラの演奏もファビオ・ルイージ指揮のもと、ダイナミックで豪華な演奏でした。おかげで、合計5時間に及ぶ大作ですが、飽きることなく楽しめました。


次、4部作の最終作品、神々の黄昏(Götterdämmerung)です。引き続き、ジェイ・ハンター・モリスがジークフリート役で登場します。


Götterdämmerungは、なんと読むのでしょう、グッテデマロン?


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上司に背いて罰として解職させられ、17歳の童貞に求婚を迫られるブリュンヒルデを見ていると、涙がでてきました。しかも、次で、その彼に裏切られるからね。