人間臭さを描くジェームズ・マンゴールド監督作が好きで、欠かさず観ています。

特に『フォードvsフェラーリ』は繰り返し劇場鑑賞しました。

 

また、小さな頃から映画と同じくらい音楽が好きですので、

若き日のボブ・ディランを題材にした作品は私にうってつけでした。

 

今作も見応えがありました。

 

 

ボブ・ディランの描き方


ボブ・ディランを美化・神格化していない点がいいですね。

 

「寸暇を惜しんで音楽に真摯に向き合い、ノーベル文学賞を受賞するほどの詩人が

人としては欠落している」

そんな姿が一貫して描かれています。

 

・恩人が必死の思いで築き上げた音楽フェスをエゴ優先で台無しにする

・意中でない女性に重めに言い寄られて、「気持ち悪いよ…⤵︎」と冷酷に突き放す

・平気で二股し、彼女Aが旅行中、彼女A宅で別の彼女Bと楽しく過ごす

・彼女と共演するライブに別の彼女を悪気なく連れてきて(!)、酷く悲しませる

…等々、気難しく我儘で、乱暴な言い方をすればクズ寄りエピソードの多いこと。笑

 

作中のディランにとって女性は自身の苦悩や孤独を紛らわせるためだけの存在で、

真に心が通じ合えたのはウディ・ガスリーら同じ立場のミュージシャンだけでした。

まあ、天才を苦悩させ孤独にしたのは周囲やファン等の凡人なのかもですけれど。

 

エドワード・ノートン演じる『良き凡人側』ピートに親しみを覚える人はいても、

作中のディランの言動に深く共感できる人はごく僅かではないでしょうか?


常に凡人たちに囲まれ求められ居心地の悪い天才を見ながら、

また、天才の抱える苦悩に寄り添えず、ただ振り回される凡人たちを見ながら、

凡人天才違う世界の住人であることを再認識する作品でした。

 

(個人的には、特殊な才能で生きる芸能人やスポーツ選手に高潔な人格までは求めていません。

才能と人格は全く別もので、結果的に人格者の場合があるのかな、と。

専門分野外であれもこれも求めて、勝手に作り上げた理想像と現実が違った際に辛いだけですから。

求められる方は何倍も辛いかも。)

 

 

ティモシー・シャラメ


ボブ・ディランを演じたティモシー・シャラメは更に人気が出そうですね~。

ボブ・ディランにしっかり似ていたし、

時折、グリーン・デイのビリー・ジョーにも似て見えました。

 

…つまり、ボブ・ディランとビリー・ジョーが似ている?

 

 

アル・クーパー

 

超私感ですが、まだ名も無いアル・クーパー(役)が録音スタジオにふらりと現れ、

皆が実力を訝しむ中、オルガンを華麗に弾く場面で最もテンションが上がりました。

物語上は枝葉の部分ですけれど。

 

シャラメのディラン以上に似ていませんでした?