⒊
⑴
40歳くらいの男性・新名(新名徹郎)がやってくる。
新名「ここや」
もう一人の主役の登場に、客席から大きな拍手が起こる
新名が背後に声を掛ける。
新名「自然な感じでいくぞ」
だが、誰もおらず、下手袖方向を見て、
新名「健太、何してんねん!」
新名より少し若く見える、長髪を後ろで束ねた健太(けんたくん)
しゃがんで脛を摩る。
健太「痛たた…」
新名「どないしたんや!?」
健太「目の前で事故が起きて…」
新名「大丈夫か!?」
健太「大丈夫です。見てただけなんで」
新名「ほな、なんで摩ってんねん!」
健太「貰い事故です」
新名「もらい泣きみたいに言わんでええ!(苦笑)」
健太「兄貴、摩ってください」
新名「しゃあないなあ」
新名が健太の脛を摩ろうとすると、寸前で健太が立ちあがり、
健太「治りました!」
新名「まだ摩ってへん!(苦笑)」
この場面全体のウケの悪さを健太ははっきり感じ取っているようで
健太「今からなのに、こんなことでいいんですかね?」
新名「大丈夫や!(苦笑)」
⑵
健太「息子に成り済ましたことはありますけど、」
健太「今回は息子に成り切るんですよね?」
健太「本当に大丈夫なんですか?」
新名「店のことなら調べ上げてる」
新名「老夫婦の二人暮らしで、
新名「昨日、
新名「どうやら、息子と俺はそっくりみたいや」
蒲島が駅前で声を掛けた男性は、うどん屋の息子ヒロシではなく、新名だった。
新名「ジジイとババアを騙して、土地の権利書を奪い取る」
新名「権利書、5千万で買うてくれるって話やからな」
新名たちには地上げ屋の知り合いがいる様子。
新名と健太は詐欺師だった。
⑶
新名「行くぞ」
二人が入店する。
すると、上手端通路奥から声が聞こえてくる。
直之『展代! いったい、どういうことや!』
展代が先に出てきて、直之が展代の背中を追って出てくる。
展代「ええやないの」
直之「また打ちにいくんか!、ワシに黙ってコソコソと!」
展代「打ちにいったら落ち着きますねん」
直之「打ちにいったら、仕事にならんやろ!」
展代「あんたが何言おうと打ちに行きますからね!」
展代「、ワクチン」
新名「パチンコちゃうんか!」
展代「(ワクチン)4回目」
新名「でも、『仕事にならん』って…」
展代「副反応があるから」
展代「保健所のかた?」
新名が私服姿の健太を指差しながら、
新名「こんな保健所の人いないでしょ!(苦笑)」
しかし、どちらかと言えば新名の方が派手な服装で、
展代「あんたの方がもっとおらんでしょ!(苦笑)」
⑷
展代が新名を見て、
展代「えっ?、TV局のかた?」
展代「店の宣伝に来てくれた? 嬉しいわ〜」
新名「すみません、誰のこと言うてます?」
展代「ダイアモンド・ユカイさんでしょ?」
新名「誰がダイアモンド・ユカイや!」
客席からパラパラと拍手が起こる。
新名「10人くらいしか拍手が無かった。(苦笑)」
新名「ほぼ誰も似てる思うてない!(苦笑)」
展代「ユカイちゃうの? 不愉快な人ですね」
得意の言葉遊びをする、展代。
展代が今度は健太に対し、
展代「R-指定さん?」
こちらは比較的盛り上がり、
新名「こっちの方が拍手が多い。(苦笑)」
新名が展代に対し、
新名「お父ちゃん、お母ちゃん、俺やがな!」
展代「誰?」
新名「俺や!」
直之「ひょっとして、ヒロシか?」
新名は直之から息子の名前を出させると、
新名「そうや、ヒロシや!」
直之「隣の人は?」
新名「俺の後輩や」
新名「お父ちゃん、お母ちゃん、ただいま」
⑸
直之「ほんまにヒロシか?」
直之「得意な絵、描いてみてくれ」
直之「お父ちゃん、ヒロシの絵が好きやった」
直之「帰ってきたら描いてもらおう思って、
直之がスケッチブックとペンを新名に渡し、
ヒロシかどうか確かめることにする。
この場面は新名画伯が即興で絵を描くようで、
直之「展代、何描いてもらおう?」
展代「じゃあ、ミッキーマウス」
展代「あんたは?」
直之「そやな…、輪ゴム」
展代「何で輪ゴム!? 輪ゴムなんか誰でも描ける!(苦笑)」
直之「久しぶりにヒロシが帰ってきたから、情緒不安定なんや」
展代「でも、確かにヒロシの輪ゴムの絵は素晴らしかったわね」
展代「お母ちゃんももう一回輪ゴムの絵が見たいわ」
※
補足
観覧した別回では、チンパンジーと巻物でした。
⑹
新名が客席から見えないようにミッキーマウスと輪ゴムの絵を描き
絵を描く時間を稼ぐため、展代と直之がヒロシの思い出話をする。
直之「ヒロシは小学生の時、賞を貰ってたなあ」
展代「嬉しかった」
新名の絵を見ている健太が「ぷーっ!」と吹き出し笑してしまう。
展代「描けた?」
新名がスケッチブックを客席に向けると、
得体の知れないキャラクターと◯、
新名はヒロシと違い絵を描くことが不得意なようで、
独り言のように
新名「こんなん、バレるやろ!」
しかし、直之の反応は、
直之「やっぱりヒロシや!」
直之「展代、帰ってきてくれて良かったなあ」
⑺
だが、展代はまだ受け入れきれていないようで、
展代「ヒロシは右の二の腕にホクロがあったはず」
展代「ごめんやけど、確認させてくれる?」
すると、新名が展代に背を向け、
健太が慌ててペンで新名の二の腕にホクロを描く。
新名が客席の方を振り向くと、
新名が独り言のように
新名「デカすぎるやろ! バレてまう!」
しかし、新名の二の腕を見た直之の反応は、
直之「やっぱりヒロシや!」
展代「あんた、何言うてますの。あんなホクロ、誰でもある」
新名「あるかいっ!(苦笑)」
⑻
展代はまだ受け入れ切れていないようで、
展代「ヒロシはお腹にアザがあったはず」
展代「ごめんやけど、確認させてくれる?」
すると、新名が展代に背を向け、
健太が慌てて新名の腹にアザを描く。
新名が客席の方を振り向くと、腹に「あざ」の文字が現れる。
新名が健太に対し、
新名「何でひらがなやねん!」
健太「カタカナの方が良かったですか!?」
新名「そういう意味ちゃうねん!」
新名が独り言のように
新名「こんなん、バレてまう!」
しかし、『あざ』を見た展代の反応は、
展代「ヒロシー!(嬉し泣)」
新名「行けんのー!?」
新名「、こんな息子、おるー?」
暗転
その5に続く