⒕
⑴
盗人の裕と敦史
女将・友見
女将の娘・美優
刑事・椎森
四名。
瀧見の提示した小切手を証拠品として預かる、椎森。
⑵
友見が美優を心配し、
友見「美優、大丈夫?」
美優「ごめんなさい。私のせいで権利書を奪われるところだった」
友見「謝ることないのよ」
椎森「美優ちゃんが帰ってきてくれて、天国のアイツも喜んでると思うよ」
椎森の言葉に美優が涙ぐむ。
美優の涙を見た敦史が
奥重「美優ちゃんが泣いたら、お父さん、悲しむと思うよ」
裕も美優に何か声を掛けようと、
吉田「美優ちゃん、人っていうのは、」
吉田が言い切る前に、
美優「みなさん、ありがとう!」
吉田「まだ喋ってる!」
美優が友見に対し、
美優「これからは旅館とお母さんを支えられるよう頑張る」
友見「ありがとう」
友見と美優の親子関係も昔に戻ることができた。
⒖
⑴
美優のために犯人に立ち向かうとした裕と敦史に、
友見「お二人とも、ありがとうございます」
吉田「いえ」
西郷の壺を黒ボストンバッグに入れている裕たちは
刑事・椎森がいるこの場から一刻も早く立ち去りたく、
吉田「急いでますんで…、宿泊代は3万でしたね?」
裕が3万を払い、テーブル付近に置かれた黒ボストンバッグを手にする。
すると、椎森が裕たちに声を掛ける。
椎森「そのバッグは私のもので、私が間違えたみたいなんです」
椎森「それでですね…」
椎森が自分の持つ(本来裕のものである)黒ボストンバッグを開き、
椎森「これが入っていたんです」
と、西郷の壺を取り出す。
友見「うちの壺!」
美優が棚に置かれた壺を見て、
美優「でも、あるわよ?」
友見「そう言えば、昨日『譲って』って言われた」
美優「昨日帰ってきた時、壺で変なこと(=ハンバラバー!)
椎森が裕たちに質問する。
椎森「なぜ同じものがカバンに入っているのか、」
吉田「あのー…」
椎森「はっきり言ってもらえますか!」
根が優しい裕はあっさり観念し、
吉田「偽物と交換しました」
奥重「アニキ…!」
椎森「署で詳しく聞かせてもらう」
⑵
犯人を連行した岩崎が戻ってくる。
岩崎が椎森に尋ねる。
岩崎「壺の件は?」
椎森「こいつら(=裕・敦史)」
岩崎「窃盗容疑で逮捕する!」
岩崎が裕たちに手錠を掛けようとすると、
友見「待ってください!」
岩崎「…?」
友見「私が交換しました」
吉田・奥重「…!」
友見「旅館を守ってくれたお礼です」
美優「そやった!」
美優「うっかりしていました。私達を守ってくれたお礼です」
吉田「女将さん、美優さん…」
椎森「…、じゃあ仕方ないな」
⑶
(玄関付近に椎森→岩崎・裕・奥重、のポジションで)
①
玄関付近にいる椎森が岩崎を呼ぶ。
椎森「岩崎(、行くぞ)」
岩崎「はい」
次の瞬間、岩崎が裕と敦史に対し、
岩崎「窃盗容疑で逮捕する!」
椎森「ちゃうちゃう!」
②
椎森が岩崎を呼び、状況を説明する。
椎森「二人は壺を盗もうとしていた」
椎森「でも、旅館のピンチを救った」
椎森「だからっ!」
椎森も刑事として「見逃す」と明言するわけにもいかない。
岩崎「あっ、分かりました」
椎森「分かった?」
次の瞬間、岩崎が裕と敦史に対し、
岩崎「逮捕や!」
椎森「ちゃう!」
③
椎森が岩崎を呼び、状況を説明する。
椎森「二人が旅館のピンチを救った」
椎森「だから、女将さんたちはっ!」
岩崎「そういうこと…!」
椎森「そういうことや!」
次の瞬間、岩崎が裕と敦史に対し、
岩崎「逮捕や!」
椎森「ちゃう!」
④
椎森が岩崎を呼び、状況を説明する。
椎森「女将さんたちはな!、」
椎森「二人の犯行に目を瞑って、」
岩崎の理解力の低さから全て説明せざるを得ない、椎森。
次の瞬間、敦史が椎森に尋ねる。
奥重「刑事さん、刑期はどれくらいですか?」
椎森「だからっ!」
椎森が敦史の元に駆け寄り、
敦史の両顎にたっぷりある肉を両手でペタペタと触る。
椎森「だからーっ!!」
ペタペタされる側の敦史は
敦史「恥ずかしー(半笑)」
吉田「ペタペタやめてください!(半笑)」
椎森「こっちもなかなか上手く進まんから、テンパって…」
汗だくの椎森に、
吉田「これで汗を拭いてください。(苦笑)」
と、腕に巻かれている友見のハンカチを渡す。
椎森「きたねーな!」
友見「私のハンカチよ!?(半笑)」
⑷
椎森と岩崎は裕たちを見逃し、去っていった。
その9に続く