⒘ 終

悪魔のタワタが起き上がる。

 

直ぐに倒れたタックルを見つけ、駆け寄る。

多和「お父ちゃん!アセアセ


タワタがタックルの身体を揺すると、タックルが意識を取り戻す。
多和「お父ちゃん!アセアセ

タッ「上人!照れ

助っ人二人は親子だった。

 

小西「もしかして、イルカとクジラ!?口笛

吉田「親子や!(苦笑)」

 

タックルとタワタが立ち上がり、頭頂部を合わせ、

合わせた場所を支点として、お互いが駒のようにクルクル回り始める。

途中、顔と顔が接近し、

吉田「今、チューしそうになってたぞ!?(半笑)」 笑い泣き

 

タワタがタックルに身を寄せる。

吉田「まあ、二人がよかったらそれでええけど。(苦笑)」

 

カバキングとコバヤシが意識を取り戻す。

カバ・小林「うっ…アセアセ

 

佐藤「思い出は返してもらったぞ!プンプンニヤリ

 

カバキングとコバヤシは観念した様子でツノ(の着ぐるみキャップ)を脱ぐショボーン

吉田「脱げんの!?」 笑い泣き

 

カバキングが佐藤に語り始める。

カバ「元々は人間で、こいつ(=コバヤシ)とは夫婦やったんや」

カバ「子宝に恵まれず、あらゆる病院で手を尽くしたが無理やった」

カバ「子供がいる家庭が羨ましくて、そのうち憎く思うようになってな」

カバ「悪魔に心を売ってしもうた…ショボーン

 

コバヤシが佐藤たちに謝る。

小林「こんなこと許されることじゃない」

小林「ほんまにすみませんでしたショボーン

 

子供ができないことを悲しみ、涙する、コバヤシ。

小林「うっ…(涙)」

小林「うう…(泣)」

小林「うぇっ!ガーンアセアセ

急に吐き気を催す。

 

カバ「どないした?キョロキョロ

 

小林「トイレ、借りてもいいですか?ガーンアセアセ

コバヤシが上手端通路に消えた。

 

佐藤「体調悪いんかな?」

吉田「『ドンドンパン』のせい?」

 

コバヤシがトイレから戻ってくる。

 

お腹に手を当てながら、カバキングに対し、

小林「できたみたい…」

 

話を聞いていた小西が

小西「まさか!」

小西「、賄い?口笛

吉田「なんでトイレで賄いできんねん!」

 

小林「赤ちゃんや…(涙)」

カバ「父親になれる…(涙)」

 

佐藤「おめでとう照れ

 

カバ「悪いことをしたのに、祝福してくれるんか?」

 

佐藤「俺のところもなかなか子供ができんかったから、気持ちは分かるニコニコ

佐藤「それに、生まれてくる子供に罪は無い照れ

 

カバたちが改めて謝る。

カバ「すみませんでした」

小林「心を入れ替えて、子供のために働きます」

カバキングがコバヤシに対し、

カバ「仕事探さなあかんな…」

 

カバ「失礼します」

二人が将来のことを心配するようにとぼとぼと去っていく。

 

佐藤「ちょっと待て!」

カバキングとコバヤシが足を止める。

佐藤が二人に優しく声を掛ける。

佐藤「仕事が無いなら、うちで働いたらどうや?ニコニコ

吉田「いいですね!ニコニコ、人手が足りてなかったですし」

 

カバ「いいんですか?」

佐藤「その代わり、しっかり働いてや?ウインク

カバ・小林「ありがとうございます照れおねがい

 

小西「良かったニコニコ

 

小西がカバキングとコバヤシに近づき、先輩風を吹かせる。

小西「俺、先輩やからなニヤリ

小西「お前ら、しっかり働けよ?ニヤリ」 笑い泣き

 

すると、吉田が小西に対し、

吉田「小西君、そのことなんやけどタラー

小西「…?」

吉田「やる気のある人が入ってきたから、君はもう要らんわ」

小西「えっ!? 僕、この店に必要でしょ!?ニコニコ

吉田「役に立ったん、『ドンドンパン』したときだけやタラー」 笑い泣き

 

吉田「今日でクビ!えーニヤリ

 

小西「そんな、」

(Bohemian Rhapsodyの歌い出しで)

小西「♪ママー!ガーンアセアセ」 笑い泣き

 

吉田「『ママー』ちゃうねん! 笑い泣き

 

 

 

 

 


 

[カーテンコール]

佐藤「ファンタジーな世界観の新喜劇にしましたニコニコ

佐藤「ファンタジーを感じていただけていたら嬉しいです」

 

小西さんが客席を見て、

小西「まあ、今日ファンタジーを感じても、」

小西「明日(=月曜)からまた上司に怒られる日々が始まるわけですけどニヤリ」 笑い泣き

音羽さんが客席を見渡し、

音羽「見渡す限り、全員怒られるニヤリ」 笑い泣き

佐藤「なんてこと言うんや!(苦笑)」 笑い泣き

 

 

次回以降の公演アナウンス

 

もじゃさんがポスターが貼られた立派なボードで自身の担当公演を告知。

吉田「岡田直子ちゃんと一緒に作りますニコニコ

 

すると、鮫島さんが折りたたんだ紙を清水啓之さんに手渡す。

啓之さんがボロボロになった紙を広げると、B5サイズ程度になる。

何かメモされているのかもしれないが

文字が小さ過ぎて?、観客からはほぼ『白い紙』にしか見えない。

佐藤「これ、ポスター?(半笑)」

啓之「はい、ポスターですニヤリ」 笑い泣き

というひと笑い。

 

啓之さんが『白い紙』を観客に見せながら説明。 笑い泣き

啓之「太田芳伸さんと鮫島幸恵ちゃんと僕で公演しますニコニコ

 

啓之「ゲストも来てくれますニヤリ

観客「おおー!」

 

佐藤「誰?」

啓之「叶姉妹さん口笛」 笑い泣き

カバさんが話に加わり、

カバ「多分、馬車で登場するニヤリ」 笑い泣き

 

佐藤「そろそろ、(観客に)謝ってください。(苦笑)」 笑い泣き

啓之「誰も来ませんアセアセ

 

啓之「あっ、二日目のゲストは亀田の親父ですニヤリ」 笑い泣き

佐藤「来るかもしれない。(苦笑)」 笑い泣き

 

 

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[雑感]

シンプルながら良質な物語

質よりも量に偏った笑い
という両極端な内容。

 

佐藤太一郎さんのイベント『佐藤太一郎企画』として見れば心温まる良作で、

トータルでは大満足でした。


以下、物語と笑いに切り分けて記述します。




物語


基本は佐藤太一郎さんのイベント『佐藤太一郎企画』の印象です。
佐藤太一郎企画の照明や音響も活かした熱い内容に吉本新喜劇要素を塗し、
吉本新喜劇座員で演じた、といったところでしょうか。


子供にも分かり易い、いたってシンプルな展開

大筋は、
① 仕事一筋で遊んでくれない父に寂しさを感じる、小学生の娘
② カバキングが父から娘の思い出を奪う

③ ②をきっかけに、娘に好かれる父に変わろうとする
④ 自分のために仕事をおざなりにする父に困惑する娘 → 昔の方が好き
⑤ カバキングを倒し、思い出を取り戻す目標ができる
⑥ 隣人の思い出を食べ、増長するカバキング
⑦ 絶体絶命の父
⑧ 娘の声でヒーロー覚醒 → 大逆転でカバキングに勝利する
⑨ 娘との思い出を取り戻す
⑩ 父子の愛が深まる
というものでした。

最後は悪魔にも救済が用意されていて、優しい結末でした。

生き生きとしたキャラクター


後述する一名を除き、キャラクターが生きていました。
キャラクターが自分の意思で生き生きと動き、
(新入りにうどんを作らせる場面を除き、)不自然な展開が見られませんでした。

名作漫画はキャラクターが勝手に動き出し、自分で物語を作ると言われますが、
受け手にそう思わせるのが作り手の力量ですよね。

 

 

ドンドンパン!

 

観客が手拍子で劇に参加する場面。

会場が一体となる効果抜群の仕掛けではなかったでしょうか。

 

佐藤さん・小西さんのユニット『人間ごっこ』はTVゲームネタ多めですね。

ドラクエ勇者、ラスボス戦、Now Loading、

コンティニュー画面、バグ→リセット、プレイアブルキャラ増加…

ネタバトル公演のお二人のコントには、毎月のようにゲームネタが登場します。

 

私もここ2年、自宅でTVゲームをする時間が増えまして。

最初は自宅時間を増やす意味合いだったのですが、色々遊んでみると面白くて。

 

何が面白いのか考えたところ、

受動的に観る映画やドラマと異なり、

自分自身が物語を動かすことで深い体験になっているのだと気付きました。

 

今回の劇では観客がリズムを作ることでカバキングを倒すことができた、

つまり、観客自身の物語にもなったわけですね。

 

勿論、実際には作り手の手のひらで踊らされているわけですが。

 

時間や金銭を割いて劇場に出向いた結果、

劇場ならではの体験が得られず、TVで受動的に観る内容と大差なく感じるなら、

TVで観ればよいわけでして。

 

舞台と客席は完全に切り離すべきと考える方もいるかもしれませんが、

客席が作品に何らの悪影響も及ぼさないのであれば、

観客参加型『に見せた』演出非常に魅力的に感じています。




笑いの核


小西さんがイチボケとして笑いの核を担うのですが、

まるでアレクサが事前に記憶したボケを高速で発し続けているようで、

一人だけ浮いて見えました。


すち子や茂造は身近にいると錯覚する親近感ある魅力的キャラクターですが、
小西さんのキャラクターはまるで生きておらず、ボケを言うための器でした。


なぜキャラクターが生きていないのか考えると、

(例えば、三度の飯よりお金が好きといった)人間味のあるキャラ描写が皆無
喜怒哀楽の喜怒哀もほぼ描かれなかったからではないかと思います。


身近には存在しないただの変人
一定(=楽)の感情で高速でボケ続ける⇒機械的に見えた、
というわけです。


台本の段階で小西さんのボケの時間を半分程度に減らし、
小西さんのキャラクターを魅力的に見せる時間に充てるだけでも、ボケが生きて、

お笑いの吉本新喜劇としても凄く楽しい作品になったのではないでしょうか?

(と、一観客なりに思いました。)

 

 

補足 

ぱっと思い浮かんだところで、例えば、祇園花月公演の傑作シナキュラ回。

若い女性の生き血を吸いに来たシナキュラ伯爵、その執事モロミーが熟女好き設定で、

若井みどりさんや浅香あき恵さんの登場にがっかりするシナキュラの横で

モロ「たまんねえ-っ!チュー

と狂喜乱舞し、床に落ちた浅香さんの鼻脂を四つん這いで夢中で舐める姿は、

キャラ付けに沿ったボケだからこそ爆発的な笑いになりました。

 

一方、今回の小西さん。

例えば、このページ=『その10』内の本編内容で言えば、

キャラ付けも人間らしい感情もほぼ無描写のままの新人アルバイトが、

トイレから戻ってきた(、店員ですらない)コバヤシの「できたみたい…」に

「まさか!、賄い?」と反応するのはただただ不気味で機械的に聞こえてしまって…。

ボケのためのボケ、みたいな。

 

加えて、『その4』では「(うどんより)蕎麦の方が良かった」と言っており、うどんには興味が無く、

うどん屋の賄いに意識が向かうことも一貫性を欠いていて。

 

これが『店の賄いを制する都度バイト先を変える賄いオタク』『グルメ』『食いしん坊』等、

賄い料理に目が無い設定があれば、

キャラに沿ったボケとして大きな笑いになったと思うんです。

 

 

佐藤さん・小西さんコンビの次回作を楽しみにしています。

 

 

 


 

[余談]

吉本新喜劇座員総選挙について

 

 

投票期間中、一人一回ではなくて、一日一回なのですね。


企画自体は刺激的で面白いと思うのですが、この重めの投票システムでは、

一般的な新喜劇ファンと熱心な座員ファンで投票行動に大きな差が出そうですね。

 

一般層は企画に8週間毎日張り付くことはしないのではないでしょうか?

逆に、熱心な座員ファンは複数アカウントでの連日投票も容易に予想できます。

つまり、期間中の投票は数回未満の人もいれば、何百票入れる人も出てきて、

世間一般の人気と今回の順位は必ずしもイコールにはならないだろう、と。

 

今回は熱心な座員ファンに重きを置いた総選挙と言えそうですね。

どのような結果が待っているでしょうか?

 

 

 

2022/05/07〜09
【セカンドシアター新喜劇 佐藤太一郎さん・小西武蔵さん班】
『立ち上がれ!、お父ちゃん!』 完