⒕
⑴
上手側に
うどん屋大将・佐藤
佐藤の小学三年生の娘・ライラ
店員・吉田
新人アルバイト・小西
クリーニング店の大黒・啓之親子
花屋の鮫島・行人親子
下手側に
悪魔のカバキング・コバヤシ・タックル・タワタ
出演者全員が揃う状況。
⑵
鮫島から行人の思い出を吸い取り、ご満悦のカバキング。
カバ「楽しいなあ」
佐藤「(思い出を)返せ!」
佐藤がカバキングに詰め寄ろうとすると、
(コバヤシ・カバ・タックル・タワタ→←佐藤←ライラ達、
タワタに殴られ上半身が仰反る、佐藤。
そのまま倒れそうになるが、
ライ「お父ちゃん!」
佐藤「ふんっ!」
ライラの声で佐藤が仰反った上半身を高速で起こし上げる。
ここからはワンピースやドラゴンボール・マトリックス等、
絶体絶命状態から逆転するヒーローの姿が描かれる。
⑶
タッ「俺が行く」
タワタが下がり、屈強そうで顔も怖いタックルが前に出る。
タックルが佐藤を殴り、上半身が仰反る。
ライ「お父ちゃん!」
佐藤「ふんっ!」
ライラの声で佐藤が仰反った上半身を起こし上げる。
タックルがまた佐藤を殴り、上半身が仰反る。
ライ「お父ちゃん!」
佐藤「うーんっ!」
ライラの声で佐藤が仰反った上半身をなんとか起こし上げる。が、
佐藤「うーんっ!」
と、ダメージで床に膝をついてしまう。
吉田「あかんのかいっ!」
⑷
(タワタ→佐藤←タックル、の立ち位置)
佐藤はタワタとタックルに囲まれ、
二人に無理矢理起こされ、何度も交互に殴られる。
仰向けに倒れる、佐藤。
ライ「お父ちゃん!」
力尽きた佐藤が立ち上がる様子は無い。
様子を見ていた小西が
小西「今のTik Tokにしたらバズりそうですね!」
吉田「黙れ!」
⒖
⑴
カバ「帰るダワサ」
佐藤「…、待て…」
佐藤「行かさへんぞ…っ」
カバ「しつこいダワサ」
佐藤「約束した…っ」
佐藤「ほんとのお父ちゃんに戻るって…っ!」
佐藤「うーんっ!!」
佐藤が必死で立ち上がる。
右足を踏ん張り(ドン!)、左足を踏ん張り(ドン!)、
最後は手のひらを両膝に当て(パン!)、踏ん張る。
奇しくも『We Will Rock You』の『ドンドンパン!』のリズムになり、
カバキングら悪魔たちが苦悶の表情で頭を抱える。
佐藤「…?」
カバ「やめろ、その音…」
佐藤は『ドンドンパン』のリズムが悪魔の弱点と気付く。
⑵
足踏みし手を叩く、『ドンドンパン』のリズムを始める、佐藤。
悪魔たちが苦悶の表情で頭を抱える。
佐藤「みんな、一緒にやってくれ!」
『ドンドンパン』
『ドンドンパン』
『ドンドンパン』
『ドンドンパン』
小西「♪Buddy, you're a boy, make a big noise〜」
フレディ・マーキュリー似の?小西が歌い出す。
佐藤「お前が歌うんかいっ!」
小西「えっ?」
佐藤が小西にそのまま返す。
佐藤「えっ?」
小西「いや、ふざけてるわけちゃうんです」
小西「
佐藤「そうやったんか! 頼んだぞ!」
⑶
『ドンドンパン』
『ドンドンパン』
『ドンドンパン』
『ドンドンパン』
小西「♪Buddy, you're a boy, make a big noise〜」
小西が軽快に歌い出すが、途中から
小西「♪フフフフフフフフ〜」
と鼻歌になり始める。
佐藤「知らんのかい!」
小西「知らん」
佐藤・小西「えっ?」
と、今度は二人で合わせる。
小西「こんな感じでしたっけ?」
小西「♪You got mud on your face!」
佐藤の顔を指差しながら、
小西「♪目玉もフェイス!」
佐藤「そんなんちゃう!」
⑷
カバがコバヤシ・タックル・タワタに対し、
カバ「お前ら、耳栓しろ!」
弱点対策用に持参している耳栓で耳を塞ぐ。
佐藤「耳を塞がれた!」
吉田「くそっ!、どうしたらええんや!」
佐藤「もっとパワーが必要や!」
佐藤が設定を守り入口から店外に出て、観客席に呼び掛ける。
佐藤「街の皆さん! 悪魔を倒すために協力してください!」
ドラゴンボールの元気玉を模した場面に。
『ドンドンパン』
佐藤が作るリズムに観客が合わせる。
佐藤「もっと!」
小西も歌で盛り上げる。
小西「♪We will, we will, rock you!」
『ドンドンパン』
会場全体でリズムを作る。
佐藤「後ちょっと!!」
小西「♪We will, we will, rock you!」
『ドンドンパン』
会場全体で更に大きなリズムを作る。
耳栓でも防ぎきれないリズム音。
カバ「なんなんだ、このパワー!? 頭に響いてくる…」
苦悶の表情を浮かべるカバキングたち。
カバキングを倒すには十分な音量と見た佐藤が店に戻る。
⑸
(中央奥側にカバキング、中央客席寄りに佐藤、の立ち位置で)
照明が暗めになり佐藤とカバキングがライトアップされる。
ここはワンピースでルフィがボスを倒す瞬間を模した場面。
佐藤がカバキングに対し、
佐藤「親に取って子供との思い出は何より大切なものなんや!」
右拳に力を込め、音響・照明も全力で力が溜まる様子を演出する。
佐藤「思い出を俺たちに返せーっ!!」
佐藤がカバキングの腹に渾身の一撃を食らわせる。
(『ドン!!』の効果音が聞こえてきそうだ)
その瞬間、カバキングが食べた思い出が一気に放出され、
その際の衝撃で皆吹き飛ばされてしまった。
暗転
⒗
⑴
明かりが戻る。
立ったまま優しい顔で目を閉じた小西以外は皆床に倒れている。
吉田が意識を取り戻す。
吉田が辺りを見回し、
吉田「皆さん、大丈夫ですか!」
と、ここで小西に気付く。
吉田「えーっ!?」
吉田「嘘でしょ? 立ったまま気絶してる?」
吉田「意識無い時はこんな穏やかな顔してるんや」
吉田「起きろ!」
小西が意識を取り戻す。
小西「はっ!、タキシード仮面は!?」
吉田「夢見てたんかい!」
⑵
啓之が意識を取り戻す。
直ぐに倒れた大黒を見つけ、駆け寄る。
啓之「お父ちゃん!」
啓之が大黒の身体を揺すると、大黒が意識を取り戻す。
啓之「お父ちゃん!」
大黒「…啓之、大丈夫か?」
啓之「僕のことが分かるの!?、お父ちゃん」
大黒「当たり前やないか…」
⑶
行人が意識を取り戻す。
直ぐに倒れた鮫島を見つけ、駆け寄る。
行人「お母さん!」
行人が鮫島の身体を揺すると、鮫島が意識を取り戻す。
行人「お母さん!」
鮫島「…行人、大丈夫!?」
行人が頷く。
吉田「思い出、戻ってきてる!」
⑷
ライラが意識を取り戻す。
直ぐに倒れた佐藤を見つけ、駆け寄る。
ライ「お父ちゃん!」
ライラが佐藤の身体を揺すると、佐藤が意識を取り戻す。
佐藤「うっ…」
佐藤が立ち上がる。
ライ「私のこと、分かる?(涙)」
佐藤「いつも言うてるやろ?」
佐藤「嫌なことがあっても直ぐに泣いたらあかん、って。(涙)」
佐藤「ライラ!(涙)」
ライ「お父ちゃん!(泣)」
佐藤「ライラーッ!(泣)」
親子が泣きながら抱き合い、幸せを噛み締める。
その様子を嬉しそうに見つめる、吉田と小西。
吉田「良かった…」
小西「良かったです」
⑸
(佐藤→←ライラ←小西、の立ち位置で)
佐藤がライラに対し、
佐藤「そや、ライラの誕生日、ディズニーランドに行こう!」
ライ「えっ?」
佐藤「ライラとの約束、大事にする」
佐藤「約束は守らなあかん決まり事や」
ライ「信じていい?」
ここで、何故か小西がライラに熱く語りかける。
小西「ライラちゃん、約束は相手がいないとできん」
小西「なかには守れへん約束もあると思う」
小西「約束っていうのは、」
小西「怖いこと、失敗しそうなことを信用できる人に打ち明けて、
小西「『できる!』って勇気付けてもらう意味もあるんや」
小西「手ー出してみて?」
ライラが手を出すと、小西も手を出して合わせる。
小西「二人でこうやって約束すると、不可能が可能になる」
小西「一人ではできないことが起る」
小西「二人の力で、できないこともできる」
吉田「大将、超えてくんなよ!(苦笑)」
吉田「ええこと言うな!(苦笑)」
吉田が小西の熱い語りを止める。
吉田「大将の顔、見てみろ!(苦笑)」
小西に気を取られて気づかなかったが、
大将の顔を見ると目を見開き茫然としている。
小西「いや、大将、ワードがペラペラやったから」
小西が佐藤を誇張して真似る。
小西『約束は守らなあかん決まり事や』
小西「、酷かった」
吉田「もうええわ!(苦笑)」
吉田「どんだけ大将に恥掻かすねん!」
⑹
佐藤が大黒親子や鮫島親子、吉田らに感謝する。
佐藤「みんな、協力してくれてありがとう」
その10に続く