『立ち上がれ!、お父ちゃん』
[セット紹介]
花月うどん店
吉本新喜劇の最も基本的なセットです。
⒈
下手に屋外あり
下手端…クリーニング店
クリーニング店入口を挟んで、客席側と奥側が道路になっている。
⒉
店内
⑴
下手寄り…お店入り口(引き戸)
下手寄り奥…レジ
上手寄り奥…厨房、厨房奥に通路あり
上手端…トイレ・居住部分への通路
⑵
レジ前と上手寄りにテーブル有り
[物語]
(敬称略)
⒈
⑴
舞台は花月うどん店。
30代後半と見られるクリーニング店主・大黒(大黒笑けいけい)
美味しそうにうどんを食べている。
大黒は髪をオールバックにし、広い額を強調している。
20代の若めのうどん屋店員・吉田(もじゃ吉田)は
厨房前カウンターに置かれた電話で客に応対中。
吉田「はい、夜8時まで営業しております」
吉田「はい、出前もできます」
吉田「よろしくお願いします」
吉田が受話器を置く。
吉田「忙しい…」
花月うどん店は人気店で人手が足りていない様子。
⑵
大黒は常連客らしく、吉田に気安く声を掛ける。
大黒「吉田君、一人で忙しそうやけど、大将は?」
吉田「大将なら商工組合の寄合で出掛けています」
大黒が吉田と向かい合い、吉田の顔を見て、
大黒「吉田君、疲れてるんちゃうか?」
大黒「手ー出して?」
すると、吉田が大黒にビンタを喰らわせる。
大黒「痛ーっ! 何で!?」
吉田「『手ー出せ』言うから」
大黒がお腹の前辺りで手のひらを上にし、
大黒「こうや!」
大黒「疲れてそうやから、サプリメントあげよう思たんや」
吉田「汚そう」
大黒「きたなない!」
吉田「また後でいただきます」
やんわり拒否する、吉田。
大黒「しかし、お店が繁盛していて大変やな」
吉田「人手が足りないから、アルバイトを雇うことにしたんです」
吉田「それが、今日から来る予定やのに、遅刻していて」
吉田「初日から遅刻って何考えてるんや」
吉田「言うてたら来ましたわ。(呆れ)」
⑶
新人アルバイト・小西(小西武蔵)が出勤してくる。
小西は帽子を被り、上唇に沿って髭を生やしている。
吉田「なに遅刻しとんや!」
小西「すいません、今から真面目に働きます」
吉田「小西君、謝る時は帽子取ろうか?」
小西が帽子を脱ぐと、ツインテールが現れる。
吉田「セーラームーンやん!」
ツインテールの髪型だけでセーラームーンとする、かなり強引な笑い。
(見た目は風変わりなおじさんでしかなく…)
小西「母にセットしてもらいました」
吉田「お母さん!?」
小西「お父さんちゃいますよ?」
吉田「そういう話ちゃう!」
吉田「(ヘアゴム、)取って!」
小西がヘアゴムを取ると、ますます清潔感が無くなる。
吉田「飲食店で髭はダメ」
小西「生やしてませんよ?」
吉田「生やしてるやん!」
小西「これ、刺青です」
吉田「刺青!? 面接の時は無かったぞ!?」
小西「面接で刺青してたら落とすでしょ?」
吉田「とんでもないバケモンが来た!」
※
注記
今作では小西さんがボケ役として主たる笑いを担うのですが
そのボケが質よりも量になっていると感じました。
今回は全てのボケにマークを付けることは控え、
観客に効果的であったと思われるボケにマークを付けることとします。
⑷
様子を見ていた大黒が小西に注意する。
大黒「ええ加減に仕事したらあかん」
(大黒→←小西←吉田、の立ち位置で)
小西が大黒の顔を見て、
小西「随分、真面目ですね。イメージと違う」
大黒「イメージ?」
小西「よくTVで観てます」
大黒「TV?、誰と待ちがえてる?」
小西「おしりかじり虫でしょ?」
大黒「NHK出てない!」
小西「歌ってみて?」
大黒「なんで歌わなあかんねん」
小西が先に歌う。
小西「♪おしりかじり虫〜」
大黒が仕方なく歌う。
大黒「♪お、(しりかじり虫〜)」
歌い始めた瞬間、小西が吉田の方を見て、
小西「ニセモンや」
大黒「歌わせろ!(苦笑)」
吉田が小西に注意する。
吉田「失礼なことすな!」
吉田「クリーニング店の大黒さんや!」
小西に紹介するとともに、
⑸
吉田が小西に対し、
吉田「エプロン着けて」
小西は自分で着ようとせず、可愛らしい顔をしながら吉田に背を向ける。
背後に立つ吉田が仕方なく着せる。
大黒「自分でせえよ!」
普段、小西の世話は母親がしている様子が目に浮かぶ。
⒉
⑴
鮫島「こんにちはー!」
近所の花屋の鮫島(鮫島幸恵)がうどん鉢を持ち現れる。
小西が鮫島の顔を見て、
小西「えっ!?、待って!?」
小西「嘘やん!」
鮫島「えっ?」
小西「あなたとは初対面ですよね?」
吉田「初対面かいっ! 一回会ってる雰囲気出すな!」
鮫島「びっくりした…(苦笑)」
⑵
鮫島が吉田にうどん鉢を返却する。
鮫島「美味しかったです」
吉田「ありがとうございます」
吉田「すみません、わざわざ持ってきてくださって」
鮫島が小西について、吉田に確認する。
鮫島「新しいかた?」
小西「今日からお金が発生している小西です」
吉田「いやらしい言い方すな!」
吉田が紹介し直す。
吉田「今日から働いてもらっている、アルバイトの小西君です」
⑶
鮫島が小西に自己紹介する。
鮫島「花屋の鮫島です」
小西「好きな花があるんですけど、名前が分からなくて…」
鮫島「特徴を話してもらえませんか?」
小西「花屋の店先に並んでいたんですけど、」
小西「バケツの中誇らしげにしゃんと胸を張っていて」
と、『世界に一つだけの花』の歌詞を話し始める、小西。
吉田「それは『世界に一つだけの花』や!」
小西「珍しい花なんですか?」
吉田「曲のタイトルや!」
⑷
小西の勤務態度に立腹する、吉田。
吉田「こいつはあかん」
吉田「さっきから、お客さんに迷惑掛けてばっかりや」
吉田「大将が帰ってきたら、説教してもらうからな!」
小西「そうしましょ」
吉田「何やねん!、他人事みたいに」
その3に続く