(第二景)

うどん屋店主・岳夫

アルバイト・まりこ

岳夫の娘で高校生・幸恵

 

TV局ディレクター・諸見里

カメラマン・横地

音声・松元

6名。

 

代理AD・幸恵の活躍でうどんのアップシーンを撮り終えたようで、

幸恵が横地と松元に次の指示を出している。

幸恵「常連客の皆さんには私からインタビュー時刻を伝えますね!ニコニコ

幸恵「インタビューを撮る前に、外観を撮りましょうか!ニコニコ

横地・松元「はい!」

横地と松元もすっかり幸恵に信頼を寄せている様子。

 

3人が店を出て、下手袖に向かった。

その様子を諸見里が不機嫌そうに見ている。

諸見「…えー」 笑い泣き

 

信濃「幸恵、完全に撮影の中心人物やん!」

 

諸見「トイレ、お借りしましゅニコニコ

諸見里がまた上手端通路に消える。

 

少しして、水を流す音がした後、諸見里の絶叫が聞こえてくる。

諸見『なんやねん、あいつら!!ムキー』 笑い泣き

諸見『どんだけ飯奢った思てんねん! 金返せ!ムキー』 笑い泣き

 

信濃「せこっ!」

 

諸見『俺の仲間はあいつだけじゃ! 川筋ーっ!ムキー』 笑い泣き

信濃・森田「…タラー

 

森田「店長。幸恵ちゃん、このままディレクターになっちゃうかも…」

信濃「…、そうかもしれんな」

森田「何、他人事みたいなこと言ってるの!えー

 

信濃が話をはぐらかすように、

信濃「夜の仕込みをしないとニコニコ

森田「『夜の仕込み』!? 参りましょ!ニヤリラブラブ」 笑い泣き

信濃「何か勘違いしてない!?」 笑い泣き

二人が厨房奥に消えた。

 

店内には誰も居なくなる。

 

諸見里がトイレから戻ってくる。

諸見「ありがとうごじゃいました照れ

 

誰も居ないと分かるや否や、

諸見「クソっ、幸恵の野郎ーっ!ムキー」 笑い泣き

 

そこにプロデューサーの佐藤が再び現れる。

佐藤「諸見里君、撮影は順調か?ニコニコ

諸見「はい。後は店長と常連客のインタビューを残すだけでしゅニコニコ

 

佐藤「私はロケ時間を延ばす奴が一番嫌いなんだ」

佐藤「テンポ良く頼むよ?」

 

佐藤「また、インタビューの時に戻ってくるからニコニコ

佐藤「頑張って!」

 

佐藤がスマホの電話に出て、

佐藤「もしもし。ああ、今から向かうからニコニコ

多忙な佐藤が電話をしながら去っていった。

 

諸見里がテーブル席に座る。

諸見「プロデューサーが見に来るのか。気合い入れていこう」

諸見「ん?、待てよ?ニヤリ

何か悪巧みを思い付いた様子。

 

諸見「前の特番で使った下剤をジュースに入れて幸恵に飲ませようニヤリ

(どんな特番?)

諸見「そしたら、幸恵は腹痛で失敗を繰り返し、ロケ時間が伸びる」

諸見「プロデューサーが幸恵に怒ったところで、僕がガン詰めしゅる」

諸見「幸恵は自信を失って、TV業界に入ることを諦める」

諸見「これや!」

 

諸見里がポケットから下剤を取り出し、

テーブルに置かれた2本のすだち微炭酸缶のうち

下手側の一本を取る。

蓋を回して開け、缶の中に下剤を入れ、蓋を閉め、下手側に置く。

諸見「後は幸恵に飲ませるだけやニヤリ 幸恵を呼びに行こ口笛

諸見里が店を出て、下手袖に消えた。

 

缶の蓋を一回開けているため、飲む際に異変に気付くのでは?と思うが、

今作を楽しむ上では、

ディレクター諸見里はそこまで考えが至らないと見るのがよさそうだ。

 

まりこが厨房奥から半泣きで現れる。

森田「痛たっ。店長に襲い掛かったら蹴り飛ばされた。(涙)」

森田「私、フラれてばっかりや!(涙)」

まりこが傷心のあまりテーブルに突っ伏し、

テーブルのすだち微炭酸缶を2本とも床に落とす。

 

森田「テーブルのもん落としてもうた。散々…(涙)」

まりこがすだち微炭酸缶を元の位置に戻す。

 

まりこがお腹を押さえて、嬉しそうにする。

森田「痛たた…、来た、来た!爆  笑照れ

森田「やったー!!爆  笑

その喜びようから岳夫の子供でも妊娠したのかと思わせて、

森田「、10日ぶりの大!口笛」 笑い泣き

まりこが下手端通路奥のトイレに向かった。

 

 

誰もいない店内。

 

諸見里が幸恵を連れて戻ってくる。

諸見「ジュース買ってきてくれて、ありがとう照れ

幸恵「いえ」

諸見「レアなすだち微炭酸、2本あるし、幸恵ちゃんも飲んでみて?ウインク

幸恵「ありがとうございますニコニコ

 

諸見里がテーブル席上手側、幸恵がテーブル下手側に座り、

手元にあるすだち微炭酸缶を手にする。

 

幸恵だけがすだち微炭酸缶を飲む。

諸見「どう?、美味しい?」

幸恵「はい。少し酸っぱいですけれど」

諸見「その酸っぱさがいいニヤリ」 笑い泣き

酸っぱく感じる下剤のよう。

 

幸恵「それで、話っていうのは?」

諸見「プロデューサーがインタビュー撮影を観に来るって」

幸恵「そうなんですね!ニコニコ

幸恵「横地さんと松元さんを呼んできますね!ウインク

幸恵が早足で下手袖に消えていった。

 

諸見「ふふふっニヤリ

諸見「後は下剤が効くのを待つだけニヤリ

諸見里がテーブル上手側のすだち微炭酸缶を手にし、

舞台前側に出てきて、缶を上に掲げ、

諸見「ディレクター初仕事に乾杯ニヤリ

 

そこに、厨房から店内・岳夫が現れる。

信濃「一人で何してるんですか?」

諸見「いや、あの、撮影がひと段落したんで、体を伸ばして休憩を…」

諸見「すだち微炭酸、一緒に飲みましぇん?ニコニコ

諸見里が蓋を開け、コップに注いで岳夫に渡す。

 

諸見「乾杯ニコニコ

二人がすだち微炭酸を飲む。

信濃「美味いニコニコ

諸見「でしょ?」

 

諸見「幸恵ちゃん、失敗して『店を継ぐ』って言うと思いましゅよ」

信濃「そのことやけど、もうええかなと思っているんですニコニコ

諸見「えっ?」

信濃「撮影で幸恵が楽しく働く姿を見て、」

信濃「幸恵がしたいことをするのが一番やな、とニコニコ

 

幸恵にディレクターの座を奪われると脅威に感じている諸見里の反応は、

諸見「何言うてるんでしゅか!プンプン

諸見「今までの努力はどうなる!プンプン

諸見「川筋の死が無駄になるっ!!ムキー」 笑い泣き

 

信濃「死んでない!(苦笑)」 笑い泣き

 

諸見「もう、運命の歯車は回り始めているんでしゅよニヤリ

不敵な笑みを浮かべる、諸見里。 笑い泣き

信濃「…?」

 

 

その11に続く