⒋
⑴
うどん屋店長・岳夫
アルバイト・まりこ
二人。
森田「店長、TV局の人は何時に来るの?」
信濃が腕時計を見て、
信濃「1時間後に来るみたいや」
すると、撮影スタッフらしき川筋(川筋ライラ)、
カメラを手にした横地(よこっちピーマン・
集音マイクを手にした松元(松元政唯)が現れる。
川筋「本日の撮影を務めます、AD川筋とカメラマンの横地、
信濃「いただいたメールでは1時間後と…」
川筋「えっ?」
岳夫が川筋にスマホのメールを見せる。
川筋「すみません!、出直します!」
信濃「いえ、今からで大丈夫です」
⑵
信濃「あの、ディレクターは?」
川筋「車に忘れ物をして遅れていまして…」
川筋が下手袖方向を見て、
川筋「言うてたら来ました!」
ディレクターの諸見里(諸見里大介)が勢いよく現れる。
諸見里はジーンズに袖なしの白シャツを着ている。
諸見里が岳夫に自己紹介する。
諸見「シュシュシュシュシュッシュ エシュエシュ」
信濃「、一文字も分からんかった」
諸見「シュシュシュシュシュッシュ ペシュペシュ」
諸見「ペシュペシュペシュ」
信濃「はい!?」
諸見「はい!?」
信濃「こっちの台詞です! 滑舌悪すぎません!?」
諸見里が丁寧に言い直す。
諸見「しゅいましぇん」
諸見「ほんじぃちゅの しゃつえいをしぃきる(=本日の撮影を仕切る)、」
諸見「ディレクターの もろみじゃと でしゅ」
信濃「ギリギリ分かった!」
諸見「テンション上がると何喋ってるか分からなくなっちゃって」
諸見「
諸見「シュシュシュシュシュッシュ!!」
信濃「また分からん!(苦笑)」
岳夫とまりこも自己紹介する。
⑶
諸見里の白シャツは薄地で乳首が透けて見えていて、
信濃「乳首、ビンビンやないか!(苦笑)」
信濃「もうちょっと厚手のやつを着てきてください」
諸見「以後、気を付けましゅ」
⑷
AD川筋が諸見里に対し、
川筋「ディレクター、
諸見「えっ?」
諸見里が岳夫に対し、
諸見「メール見せてもらっていいでしゅか?」
岳夫が諸見里にスマホを見せると、諸見里がスマホを奪い取り、
諸見「本当だ!、しゅみましぇん!」
諸見里が土下座して謝る。
諸見「俺の馬鹿野郎!」
諸見里が立ち上がりながら、岳夫のスマホを床に叩きつける。
諸見「この野郎っ!」
床に叩きつけた岳夫のスマホを踏みつける、諸見里。
信濃「俺のスマホや!」
岳夫がスマホを拾い上げる。
諸見「しゅみましぇん、
諸見「以後、気を付けましゅ」
信濃「今、気を付けろよ!」
⑸
諸見「手土産をお持ちしました」
と、白の紙袋から青のミトンを取り出し、岳夫に渡す。
信濃「…、鍋つかみですよね?」
諸見「はい」
信濃「お土産にするタイプじゃない」
諸見「手作りの方が気持ちが伝わると思って、
諸見「何回も失敗して、中にちょっと血が付いてましゅけど」
信濃「汚っ!」
諸見「大丈夫でしゅ。ちゃんと消毒してましゅんで」
信濃「そういう問題ちゃうでしょ!」
まりこがミトンを上手奥の部屋に置きに行き、直ぐに戻ってくる。
⒌
⑴
岳夫が諸見里に確認する。
岳夫「
岳夫「何て番組ですか?」
諸見「日曜夜に放送中の『情熱大国』です」
信濃「ああ、それなら知っています」
⑵
諸見里が岳夫に撮影時の振る舞いをアドバイスする。
諸見「下町を支えるうどん屋店長の働きぶり・
諸見「緊張せず!」
諸見「ありのままで!」
諸見「力まずっ!!」
信濃「あんたが一番力んでる!」
諸見「以後、気を付けましゅ」
信濃「『以後、気を付けます』って言うの、やめてください」
初ディレクター仕事の諸見里が一番張り切り過ぎている様子。
⑶
入り口レジ棚辺りに立つ諸見里がAD川筋・カメラマン横地・
諸見「準備しぇえ!」
諸見里はミトンの入っていた白の紙袋を厨房カウンター前の床に置
まりこが岳夫を上手側に呼び寄せ、ヒソヒソと、
森田「あのディレクター、気合い入りすぎ」
信濃「ホンマやな」
川筋・横地・松元が岳夫たちのところに来て、
川筋「ディレクターは熱血でなんです」
横地「真っ直ぐで」
松元「バカ正直って言うか…」
川筋「でも、そこが諸見里さんのいいところでもあるんです!」
横地「僕たち、みんな慕っています!」
松元「ディレクターのためにも最高の映像にしてみせます!」
川筋が横地と松元に対し、
川筋「よし、みんな、用意しましょう!」
川筋・横地・松元「おーっ!!」
三人が拳を突き上げ、仕事に戻る。
信濃「全員、変や」
三人も諸見里に似て、熱血で真っ直ぐでバカ正直な性格のよう。
⒍
⑴
諸見里たちが撮影準備をしていると、「バンッ!」
全員「…!?」
信濃「この音は…っ!」
信濃「皆さん、気を付けてください!」
運動会の音楽が流れ、
舞台下手端クリーニング店の奥側道路から
波平のような見た目の老人・寛平(間寛平)
寛平はテーブルや壁等を杖で思い切り叩き、「バンッ!」
全員を追いかけまわす。
その間にテーブルの位置がずれ、様々なものが床に乱れ飛ぶ。
寛平に疲れが見えてきて、舞台中央で立ち止まり、
客席の方を見て、とぼけた言い方で、
寛平「まいど〜」
全員がずっこける。
⑵
全員立ち上がり、
川筋「あの人、何ですか!?」
信濃「町内会長です」
諸見里が激昂し、両手で寛平の胸ぐらを掴み、耳が痛いほどの大声で怒鳴り上げる。
諸見「今からロケやのに、何してくれとんじゃ!!!」
そのまま寛平を揺さぶる。
諸見「おいっ!!!」
寛平を振り回し、最後は突き飛ばし、
寛平が尻餅をつくように倒れ、横地が持つカメラに後頭部を打ち付ける。
寛平「…」
寛平「…、鼻血出てない?(苦笑)」
ここは諸見里の当たりが強すぎて、
「!」が一つ分少ないくらいで丁度良かったのではなかろうか?
ディレクター諸見里以上に芸人・諸見里大介が
こけら落とし公演を成功させようと張り切りすぎているのかもしれ
⑶
岳夫が諸見里に対し、
信濃「落ちついて!」
しかし、諸見里の怒りは収まらず、
諸見「何してんねん!、今からロケやのに」
寛平「お前、無茶苦茶やな。(苦笑)」
諸見「ロケの邪魔しゅんな!」
寛平「え?」
諸見「滑舌悪いんや!」
寛平「何言うてんの? (サ行、)喋れるやんな?」
諸見「は!?(苦笑)」
寛平「ほんまはちゃんと喋れるのに」
諸見「何言うてんの?(苦笑) 滑舌悪いんや!」
寛平「わざとやろ?」
諸見「わざとじゃない!(苦笑)」
寛平「絶対喋れるって」
諸見「序盤でそんなこと言われたら、この後できへんやろ!(苦笑)」
寛平「お前の芸風、潰したるからな!」
諸見「なんや、お前っ!」
寛平が逃げ去り、諸見里が追いかけていった。
信濃「あの人、若手を育てる言うて、育てる気ひとつもない!(
⑷
諸見里が寛平の杖を持ち、戻ってくる。
諸見「しばいてきた」
信濃「やめてください! 町内会長がおたくらの話を受けたんですよ?」
諸見「気を取り直して撮影開始しましょう!、ハァハァ…」
寛平との戦いは体に堪えたようで、諸見里が息を整える。
信濃「大丈夫ですか?(苦笑)」
その5に続く