(第三景)
⒔
⑴
新郎・祐貴
祐貴の親友・レイ
幸恵の亡き祖母で幽霊の友見
三名。
ちゃぶ台には結婚式用の料理が並べられている。
ちゃぶ台を囲むように祐貴が下手側に、友見が奥側に、レイが上手側に座っている。
レイ「いよいよ、本番当日やな!」
祐貴「呑気やなあ」
祐貴「どうしよう? 幸恵、帰ってきてから一言も口を利いてくれへん」
レイ「誤解を解こう」
友見『あかん、昨日のこと思い出したら…(涙)』
祐貴「泣いてばかり!」
友見を認識していないレイは自分が言われたと思い、
レイ「泣いてない、泣いてない!」
レイ「この顔のどこが泣いてんの!? 怖い、怖い!」
友見『わぁーっ!!(号泣)』
友見がちゃぶ台に突っ伏し、号泣する。
祐貴「わっ!」
友見の大声に祐貴が驚く。
友見を認識していないレイは祐貴が突然叫んだと思い、
レイ「何、急に! 怖い、怖い!」
⑵
タキシード姿の耕一を始め、結婚式用の服装に着替えた泰枝・綾・健太が
上手端通路から現れる。
耕一が祐貴に対し、
耕一「結婚式の準備はできたか?」
祐貴「はい…」
誤解で幸恵と喧嘩しているため、歯切れが悪い、祐貴。
⑶
花月ブライダル社員を名乗る詐欺師の吉田・小西が上手端通路から現れる。
吉田「準備ができました」
友見『この二人は、』
友見が祐貴に対し、吉田・小西が詐欺師であることを伝えようとするが、
上手端通路を見る吉田の言葉が被さってしまう。
吉田「どうぞ!」
♪ピロリン
着替えの効果音の後に現れたのは、幸恵ではなく、幸恵の祖父・朗功。
祐貴「お爺ちゃんかい!」
吉田「お爺さんのトイレが終わりました」
⑷
吉田「改めまして」
吉田「どうぞ!」
♪ピロリン
着替えの効果音の後に、ウェディングドレス姿の幸恵が現れる。
耕一「結婚、おめでとう」
泰恵「おめでとう」
あや「Congratulations!」
健太「ぐすーじさびら」
幸恵「…」
幸恵「やっぱり結婚は無理!」
祐貴に愛人がいると勘違いしている、幸恵。
祐貴「幸恵、話を聞いてくれ!」
⑸
そこに、幸恵が勘違いしている相手、酒屋の響・珠代親子が現れる。
響と珠代がウェディングドレス姿の幸恵を見て、
ひび・珠代「誰よ!」
次に、祐貴が『幸恵に見える影』と考えている岩崎が現れる。
岩崎「幸恵さん」
すると、レイが舞台最前に出て、客席に向けて、
レイ「盛り上がってまいりました!」
祐貴「出てこんでええ!」
⒕
⑴
酒屋の珠代・響親子や謎の男性・岩崎が現れ、混沌とした状況。
幸恵が祐貴に対し、
幸恵「顔も見たくない!」
祐貴「誤解や!」
祐貴「それやったら、あの人(=岩崎)は誰なんや」
幸恵「あの人は、」
⑵
幸恵が岩崎の正体を明かそうとすると、
下手袖から女性(酒井藍、台詞は『あい』表記)の大きな声が被さる。
あい『遅れてごめんやでー!』
ドリフの雷様のようにも見える、
黄色い服にパーマ姿の大阪おばちゃん衣装の藍が現れる。
祐貴が藍を見て、
祐貴「おかん、遅いわ! 何しとんねん」
藍が耕一たちに対し、
あい「大事な日やのに、遅れてすんまへん!」
あい「お久しぶりですっ!」
祐貴の母親・藍は気さくな性格のよう。
⑶
レイが藍を見て、
レイ「祐貴のお母ちゃん、また太ったんちゃう?」
あい「おお、レイ君か!」
あい「今、おばちゃんに言うたんか。可愛い子や」
あい「よっしゃ!…、殺す」
と、レイの首を絞め、親指に力を入れる。
祐貴「あかん、あかん!」
藍がレイの首から手を離す。
あい「頸動脈を、グッと」
⑷
祐貴「親父は?」
あい「お父ちゃん、早ように酔うてもうた」
親類に一人はいるパターンが今回は新郎の父だったよう。
藍が下手袖に呼び掛ける。
あい「あんた!、あんたーっ!」
すると、祐貴の父親・スチ太郎(すっちー)が一升瓶を持ち、
随分勢いのある千鳥足で現れる。
スチ太郎は茶色がかったカツラをしていて、結婚式用のタキシードを着ている。
スチ太郎は引き戸が開いた状態の玄関で引っ掛かり、
玄関の奥端に左肩が当たると手前側に弾かれ、
手前端に右肩が当たると奥側に弾かれ、というように、
まるでピンボールのように玄関の両端に弾かれ続ける。
祐貴「ピンボールになってる!」
スチ太郎が土足で居間に上がってくる。
祐貴「土足や!」
スチ太郎が土足に気付き、
靴を脱ぎに玄関に戻ろうとした勢いで屋外まで出てしまう。
祐貴「どこ行くねん!」
スチ太郎が屋外に居ることに気付き、戻ってくるが、
また玄関に引っかかり、ピンボールのように弾かれる。
スチ太郎が土足で居間まで来て、フラフラしながら、
スチ「皆さん、じっとして」
祐貴「親父や!」
⑸
スチ「酔うてもうた…」
あい「あんた、何考えてんねん」
藍が耕一たちに対し、
あい「すんまへん。私が代わりに謝ります」
あい「深く反省しております」
と、深々と頭を下げるが、ちゃぶ台に置かれた饅頭に目が行き、
頭を下げたまま饅頭を手掴みで口に入れる。
スチ「食うてる!、アーッハッハッハ」
酔っ払い、笑い上戸になっている、スチ太郎。
藍がまたスチ太郎の代わりに謝る。
あい「まことに申し訳ありません」
と、深々と頭を下げるが、
頭を下げたままちゃぶ台の饅頭を手掴みで口に入れる。
スチ「アーッハッハッハ!」
藍がまたスチ太郎の代わりに謝る。
あい「まことに…」
あい「、丸鷄あるわ」
藍はちゃぶ台の丸鷄に目が行き、掴んでバッグに入れようとする。
スチ「アーッハッハッハ!」
藍がスチ太郎の方を向き、
あい「まことに」
と言いながら、既に掴んでいた饅頭を口に入れる。
スチ「アーッハッハッハ!」
今度はスチ太郎が一升瓶の口に息を吹き掛け、音を出そうとする。
ほとんど音は出ていないが、藍がスチ太郎のボケに乗り、客席の方を見て、
あい「あれ、船かしら?」
ここは観客の反応が小さく、
スチ「(吹き掛けた一升瓶の)音が小さい。(苦笑)」
あい「アーッハッハッハ!」
藍が大笑いし、力技で客席を沸かせる。
⑹
祐貴が両親の代わりに耕一たちに謝る。
祐貴「お父さん、お母さん、すみません」
耕一たちは気にしていない様子。
祐貴がスチ太郎に対し、
祐貴「靴だけ脱いで!」
スチ太郎が手を使わずに足の遠心力で靴を投げ捨てるように脱ぐ。
⑺
スチ太郎が祐貴に対し、
スチ「酒飲み過ぎて、喉渇いた。水くれ」
スチ「うっ…」
祐貴「…!」
スチ太郎が胃の内容物を戻しそうになるが、口まで来たものを飲み込む。
スチ「…、酸味がえぐいわ」
スチ「もう、大丈夫」
胃酸が水の代わりになったらしい。
その9に続く