⒒
⑴
居間には、祐貴だけにしか見えていない幽霊・友見、一人。
上手端通路から花月ブライダルの社員・吉田と小西が現れる。
吉田と小西は幽霊の友見が見えておらず、二人で話し始める。
小西「アニキ。騙せそうですね」
吉田「しっ!、静かに。 聞かれたら不味い」
小西「すみません」
吉田「みんな気付いてないようや。俺らが詐欺師ってことは」
友見『…!』
小西「騙し取った金は何に使うんですか?」
吉田「そやな。パーマを掛ける」
小西が吉田のもじゃもじゃの髪を指差し、
小西「パーマやん!」
小西「カーリーやん!」
小西「実験失敗したやつやん!」
吉田「どんだけツッコミ入れるねん!(苦笑) 一ボケに一ツッコミって決まりや」
吉田「小西、お前は何に使うんや?」
小西「僕は貧しい子供にパンとワインを恵みます」
吉田「キリストかっ!」
小西「イエス」
吉田「上手いこと言うな!」
吉田「とにかく、家の人間には俺らが詐欺師ってことバレんように」
小西「分かりました」
⑵
幸恵の父・耕一、母・泰恵、妹・綾、弟・健太が上手端通路から現れる。
小西が耕一たちに、
小西「リハーサルは完っぺっきっですね」
台詞を噛んだ小西に対し、耕一が
耕一「あなたが完璧じゃない」
見事なアドリブで客席を沸かせる。
台詞を噛んだ理由について、小西が耕一に対し、
小西「あなたの顔がおもしろかったんで…」
小西が下手なアドリブを入れたことに対し、
耕一「俺のせいにすな」
吉田「一旦、会社に戻ります」
吉田と小西が家を出ていった。
⑶
吉田と小西が詐欺師と知り焦る、友見。
友見『どうしよう!?』
耕一たちもやはり友見の姿も声も認識できないようで、
耕一が泰恵・綾・健太に対し、
耕一「昼飯どうしようか?」
友見が耕一たちにアピールする。
友見『大変、聞いて!』
しかし、耕一たちには友見の声は届かず、
耕一「洋食がええな」
友見が背後から、
友見『もうっ! しっかりし、ひょっとこ!!』
耕一が振り向き、
耕一「誰がひょっとこや!」
泰恵「あなた、急にどうしたの?」
耕一「今、なんか声が聞こえたような…」
泰恵「和食も良いわね。中華も」
友見『気付いてよっ! 食べ物のことばっかり! この、白ブタッ!!』
泰恵「誰がっ…!」
耕一「泰恵、どないしたんや?」
泰恵「今、何か言われた気が…」
神様が設けたルールは『友見を認識できるのは最初に会った人物(=祐貴)のみ』。
だが、友見の切迫感がルールの壁を打ち破りつつあるように見える。
⑷
声が聞こえると言う耕一と泰恵に対し、綾が
あや「二人とも体調悪いんじゃないの?」
短パンにアロハシャツ姿の健太が自分の体をさすりながら、
健太「僕も寒いな…」
耕一「服のせいや!」
耕一「でも、やっぱり寒いな」
どうやら、幽霊の居る場所は気温が下がるよう。
友見『気付いて!』
しかし、誰も友見に気付かず、友美とは目線が合わない。
耕一の体が友見を弾き飛ばし、友見が床に倒れる。
友見『当たってるのに何で気づかへんの!?』
耕一は友見とは目線を合わさないまま、倒れている友見を踏みつける。
次に綾が友見とは目線を合わさないまま、小刻みに友見の背中に蹴りを入れる。
友見『気付いてるでしょ!』
しかし、全員、友見には気付かない様子。
耕一「お昼食べに行こ」
耕一「健太、どこがいい?」
健太「マクドナルドに行きたいな」
あや「えー、違うよー」
綾は別のお店に行きたいのかと思いきや、
あや「、マクダーナルズ」
耕一「発音かいっ!」
泰恵が最後にアドリブを加える。
泰恵「ポテトが無いのよね~」
4人がマクドナルドに向かった。
⒓
⑴
幽霊の友見、一人。
友見「どうしよう…?」
花月ブライダルの社員を名乗る吉田・小西が詐欺師であることを家族に伝えたいが
姿も声も認識されず、伝える方法が見当たらない。
幸恵を追いかけていった祐貴が家に戻れば、祐貴に伝えられるのだが…
⑵
幸恵と岩崎が(下手端まで)戻ってくる。
幸恵「ごめん、財布を忘れて」
岩崎「じゃあ、先に喫茶店に行って待ってますね」
今作は謎の青年・岩崎周りの台本が非常に甘く、この場面でも
一緒に家まで来ながら、財布を取る僅かな時間を待たないことに不自然さが残る。
が、次の場面の都合もあるのだろう。
岩崎が下手端で客席の方を向く。
独特の間の後、ブロック塀上部に右手を当て身体を支え気味にし、
物思いにふけるように、
岩崎「幸恵さん…」
そして、(客席から見て岩崎の右側に立つ)幸恵の方を見て、
岩崎「、また後で」
岩崎が喫茶店に向かった。
幸恵「…」
幸恵「苦手やわ」
幸恵の発言は観客の声を代弁するようで、その場の笑いとしては盛り上がる。
だが、同時に岩崎とは恋愛関係に無いことが薄ら分かってしまい、
岩崎の正体を明かす場面を残しながら大きくブレーキがかかった瞬間にも見える。
⑶
幸恵が財布を取ろうと居間に上がる。
友見『花月ブライダルの二人、詐欺師なのよ!』
しかし、幸恵も友見を認識しておらず、そのまま箪笥に向かう。
友見『伝われへん!』
幸恵が箪笥の上の財布を取る。
幸恵「あった」
幸恵が立ち止まり、財布を見る。
(この場面は劇団コケコッコー寄りの重めの芝居)
幸恵「お婆ちゃんがくれた財布、大事に使ってるよ」
幸恵「祐貴さんは少し頼りないところもあるけど、いい人なの」
幸恵「お婆ちゃんも結婚式に来て欲しかったな」
友見は孫の言葉を黙って聞いている。
幸恵「でも、会いに来てくれるわけないか…」
幸恵「喧嘩別れが最後になるなんて思わなかった」
幸恵「なんで、お婆ちゃんに素直に謝られへんかったんやろ…」
幸恵が些細なこと友見に強く当たり、その直後亡くなったことが分かる。
幸恵が岩崎の待つ喫茶店に向かった。
⑷
友見、一人。
友見「あの子、そんなこと気にしてたんか。アホやな…」
友見がちゃぶ台の奥側に座ったところで、祐貴が戻ってくる。
祐貴「幸恵を見失った」
友見「わぁーっ!!(号泣)」
突然、友見がちゃぶ台に突っ伏し、号泣する。
幸恵の優しさを感じ、また、そんな幸恵に迫る危機に
何もしてやれない不甲斐なさを感じているのかもしれない。
祐貴「何で泣いてるの!?」
友見「しっかりしてちょうだい!(泣)」
友見は祐貴に八つ当たりするよりも、
花月ブライダルの吉田と小西が詐欺師であることを
祐貴に逸早く伝えるべきに思うが…
⑸
祐貴の親友レイが結婚式用のスーツ姿で現れる。
レイ「あの男の人(=岩崎)、見つからんかった」
祐貴「スーツ、早い! 明日や!」
レイ「テンション上がっちゃって」
レイ「ネクタイで悩んだ」
レイ「沢山持ってきたんやけど、どれがいい?」
と、バッグから葬式用の黒ネクタイを両手で掴み取る。
祐貴「何で黒やねん!」
暗転
(吉本新喜劇の景オチとしては非常に軽く、場面転換の意味合いが大きい暗転)
その8に続く