⒑
⑴
馬のパネルと同化し、麻薬取引の張り込みをする、刑事の吉田。
だが、信濃の娘が響と直子どちらであるかの方が気になっている様子。
小西が上手端通路先のカフェから戻ってきて、
小西「どうですか?」
と、パネルを叩く。
吉田「叩くな!、響くねん!」
吉田「進展無しや」
⑵
そこに、仏前座布団のような赤色スーツを着た池乃(池乃めだか)が現れ、
吉田と小西が注視する。
池乃は自分の背より遥かに高い暖簾を気にし、右手でかき分けるふりをして入館する。
吉田『完全に余計な動きになってる!』
池乃もパネルと同化した吉田に気付いておらず、吉田の心の声のよう。
吉田『右手要らん』
池乃は顔が暖簾に触れることのない身長を気にしていて、無言で泣き始める。
吉田『泣かんでええねん!』
吉田『無茶苦茶怪しいおっさん来たやん!』
池乃を訝しむ、吉田。
池乃が荒木の麻薬取引の運び屋なのだろうか?
⑶
池乃がゆっくりと小西に近づき、
小西の法被の袖にまるで猫のように顔を擦り付け匂いを嗅ぐ。
小西「…」
吉田『おっさん、何してんねん!(苦笑)』
次に、池乃はロビーを歩いたり止まったりを繰り返し、
ゆっくりロビー中を移動する。
吉田『よう、あんな柄で街中歩けるな。(苦笑)』
池乃が「スッ、スッ」と鼻を啜り始める。
吉田『麻薬中毒者の症状や!』
池乃が上手端通路からカフェに向かった。
小西「カフェに向かいました! 僕、行ってきます!」
小西もカフェに向かった。
⒒
⑴
馬のパネルと同化したまま、
麻薬取引、そして信濃の娘について張り込みを続ける、刑事の吉田。
中央奥通路から信濃を追い払うように信濃・辻本・友見が現れる。
辻本「帰ってくれ!」
信濃「娘に合わせてください!」
⑵
中央奥通路から、子供の直子・響・健太が現れる。
直子「どっちが本当の娘なの!?」
友見「聞いていたの!?」
ひび「あんな大声で話していたら、聞こえるわよ!」
友見が辻本に対し、
友見「あなた、いい機会だから、本当のことを話しましょ?」
辻本「…」
吉田『ようやく教えてくれんねや。(期待)』
(パネルの吉田↘︎信濃・友見・辻本→←響・直子・健太、の立ち位置で)
辻本が響と直子に対し、
辻本「今まで黙っていて、ごめんな」
辻本「本当の娘じゃないのは、それは…」
ここで、カフェのある上手端通路から荒木が電話をしながら現れ、辻本が黙り込む。
吉田『何でこのタイミングで出てくんねん!、いつもいつも!』
荒木は顔出しパネルの前に行き、
吉田の顔部分に自分の顔をピッタリ合わせるように横向きに立つ。
アキ「…、フフッ」
自分で仕掛けておいて、笑いを堪えきれない、荒木。
暫く立ち止まり、
アキ「…、(吉田の息、)臭っ」
荒木が客席を意識し始め、下手側最前に立ち観客を見る。
今度は上手側最前に移動し、目の上に手をかざし、客席をチェック。
観客の誰かと目があったのか、微笑みながら一礼をする。
得意とする緩い時間で大きな笑いを起こす、荒木。
吉田『あいつ、何が見えてんねん!(苦笑) 壁やぞ!』
吉田が勢いのあるツッコミで荒木の笑いをサポートする。
荒木がカフェに戻っていった。
⑶
荒木と入れ替わりで上手端通路から池乃が現れる。
吉田『今度はおっさんが出てきたぞ!』
ロビー中をうろちょろする池乃に、
吉田『おっさん、何してんねん!』
池乃も客席を意識し始め、舞台最前に立つ。
観客を見て、暫くして「フフフッ」と笑みを浮かべる、池乃。
吉田『そこに何があんねん!(苦笑) 壁やぞ!』
池乃がカフェに去っていった。
⑷
荒木と池乃の邪魔者二人が居なくなり、辻本家と信濃の娘の話が再開。
直子「お父さん、どっちなの!?」
辻本「それは…」
するとまた、カフェのある上手端通路から荒木がスマホを見ながら現れ、
辻本が黙り込む。
吉田『わざと出てきてんのちゃうか!』
池乃も下を見ながら上手端通路から現れる。
吉田『おっさんも出てきた!』
(パネルの吉田↘︎荒木→←池乃、という立ち位置で)
スマホを見る荒木と下を向く池乃が少しずつ距離を詰め、
その様子を吉田が固唾を呑んで見守る。
が、二人は何も話さず、お互いに気付かず、すれ違う。
吉田『すれ違うだけかいっ! 何やねん、この時間!』
荒木と池乃がそれぞれカフェに戻っていった。
⑸
荒木と池乃の邪魔者二人が居なくなり、辻本家と信濃の娘の話が再開。
直子「お父さん、どっちなの!?」
辻本「それは…」
するとまた、カフェのある上手端通路から荒木がスマホを見ながら現れ、
そのすぐ後に池乃も下を見ながら現れ、辻本が黙り込む。
吉田『一緒に出てきたやん!』
吉田『荒木が気付かへんのは百歩譲るとして、小さいおっさんは気付いてるやろ!』
吉田『上向けっ!』
(パネルの吉田↘︎←荒木←池乃、の立ち位置で)
荒木の背中に池乃がぶつかるが、それでもお互いに存在に気付かない。
吉田『当たってるやん!(苦笑)』
荒木が身体を上手方向に向け、池乃と至近距離で向かい合い、僅かに体が当たるが、
スマホを見る荒木と下を見る池乃はお互い気付かない。
吉田『向き合ってるやん!』
吉田『(体が当たって、荒木が)小さく「すいません」言うたやん!(苦笑)』
吉田『何で気付かへんねん!』
荒木と池乃がそれぞれカフェに戻っていった。
⑹
荒木と池乃の邪魔者二人が居なくなり、辻本家と信濃の娘の話が再開。
ひび「お父さん、どっち!?」
直子「どっちなの!?」
辻本「それは…!、それは…!」
辻本「、言われへん!」
吉田『言うてくれよ!』
友見「あなた…」
辻本が響と直子を見て、
辻本「二人とも大切な娘や。響…、直子さん…」
吉田『ちょっと距離置いてるやん!(苦笑)』
辻本の絶妙な間と言い方に吉田の勢いのあるツッコミが加わり、大きな笑いが起こる。
辻本の発言から、直子が信濃の娘であることが見えてくる。
響と直子が辻本に対し、
ひび「お父さんにはずっと感謝してる」
直子「例え血が繋がってなくても、お父さんはお父さんよ」
辻本「響…、信濃さん…」
吉田『「信濃さん」言うてもうてるやん!(苦笑)』
ひび・直子「お父さん!」
二人が抱き付くが辻本は響を抱擁し、直子を跳ね除ける。
直子「…?」
吉田『拒否してるやん!』
辻本「覚悟を決めた!」
ついに、辻本が直子と響に真実を打ち明ける(。打ち明けるまでもないが)。
辻本「本当の娘じゃないのは…!、本当の娘じゃないのは…!」
吉田『引っ張るなあ!』
辻本「それは…!、それは…!」
吉田『溜め要らんねん!』
辻本「直子、お前や!」
直子「…!」
吉田『そうやろなっ!』
信濃の娘であることを知らされた直子がショックで中央奥通路に走り去ってしまった。
辻本「直子!」
友見「直子!」
ひび・健太「お姉ちゃん!」
辻本家の全員、そして信濃、皆が直子を心配し直子を追いかけていった。
パネルと同化した吉田、一人きりになる。
その8に続く