⒕
⑴
摩訶不思議な出来事が立て続けに起こり、
狐につままれた様子の清水がシナキュラに尋ねる。
清水「どういうことですか?、フマキラーさん」
シナ「殺虫剤ちゃう!(苦笑) シナキュラです」
シナ「私はある目的で日本にやってきたヴァンパイアなんです」
清水「ヴァンパイア!?、…本物の?」
シナ「はい」
⑵
清水「では、お連れのモロミーさんは…」
モロ「博士に作られた人造人間でしゅ」
シナキュラが清水に対し、
シナ「やばいでしょ?」
するとモロミーは条件反射のように客席に顔だけ向けて、
モロ「やばぁいねー!」
清水「…、何のプログラム?(呆気)」
シナ「やばいでしょ?」
モロミーがまた客席に顔だけ向けて、
モロ「やばぁいねー!」
⑶
シナキュラが烏川を見てから、清水に、
シナ「あちらはオオカミ男」
烏川がその場で皆に分かるように付け鼻のゴムを耳に掛け、雄叫びを上げる。
烏川「ウォーッ!」
清水「、パーティーグッズですやん。(呆れ)」
シナキュラが清水に対し、
シナ「やばいでしょ?(苦笑)」
モロミーがまた客席に顔だけ向けて、
モロ「やばぁいねー!」
⑷
シナ「透明人間も二人居ます」
清水「えーっ!?」
シナキュラが清水に対し、
シナ「やばいでしょ?」
モロ「…」
清水「言わへんのかい!」
モロ「一日三回って決まってるから」
⑸
清水が各人の顔を見ながら、
清水「えっ!? じゃあ、ヴァンパイアにフランケンシュタイン、オオカミ男に…」
透明人間がどこに居るのか、烏川以外には知る由も無いが
清水「…透明人間が二人」
最後に浅香・若井・珠代を見て、
清水「ほんで、魔女三人」
珠代「私は同僚よっ!」
シナキュラが清水に対し、
シナ「やばいでしょ?」
モロミーが客席に顔だけ向けて、
モロ「やばぁいねー!」
清水「?、一日三回では?」
モロ「あんな可愛い人(=珠代)に喋られたら、言うてしまう」
と、熟女好きのモロミーらしい発言。
すると、珠代がモロミーを誘惑する目で見ながら、自分の股間付近に手をかざし、
珠代「中部地方」
シナキュラの来日目的以外、一通りの状況説明が終わる。
⒖ 終
⑴
響がシナキュラに尋ねる。
咲方「シナキュラさんの目的は…」
シナ「運命の女性と出会うことでした」
シナ「でも、失敗しました」
シナ「、であれば、長居無用!」
シナキュラがモロミーを見て、
シナ「行くぞ!」
シナキュラが男らしく颯爽とホテルを去っていく。
⑵
咲方「待ってください!」
シナキュラが玄関通路前で足を止め、顔は見せずにほんの少し意識を響に向ける。
咲方「『運命の女性』って、もしかして…」
ここで、シナキュラが響の方を振り向く。
♪感傷的な音楽が流れる
シナ「短い間でしたが、響さんと出会えて幸せでした」
シナ「清水さんとお幸せに」
シナキュラが改めてモロミーに、
シナ「行くぞ!」
シナキュラが男らしく颯爽とホテルを去り、モロミーが後に付いていった。
響がシナキュラの背中に向け、精一杯の気持ちを伝える。
咲方「シナキュラさん! シナキュラさぁーん!!(悲)」
烏川が響に対し、
烏川「(伯爵のことは)そっとしておいてやってください」
咲方「違うんです!」
烏川「…?」
響が窓越しの空を見て、
咲方「太陽、昇ってますけど…」
全員「…!」
物語に夢中で気付かなかったが、窓を見ると空がすっかり明るくなっている!
次の瞬間、シナキュラの断末魔の叫びが聞こえてくる。
シナ『ギャーーッ!!!』
モロミーが砂の山のようなものを両手のひらに乗せ、慌てて走り戻ってくる。
モロ「灰になっちゃいましたーっ!!」
颯爽と去り、ダークヒーローらしい格好良い姿を見せつけたはずだったのに…
銃弾も効かない不死身のシナキュラ伯爵だが
ようやく出会えた運命の女性との失恋は心身を打ち砕くには十分だったようだ。
終
[雑感]
⒈
傑作
⑴
2014年末の名作、お正月SP公演『西遊喜』。
お正月感満載、フライヤー通り『吉本新喜劇オールスターズ』出演で楽しかったですね。
座員さんの個性が活きる相性抜群の題材で、舞台上に確かに西遊記の世界が見えました。
今作は、あの西遊喜の空気感に『伏線を張り巡らせた物語』を付け加えた印象でしょうか。
上演中、シナキュラ伯爵のコミカル・ゴシックホラーの世界に完璧にトリップしていました。
⑵
老若男女が知るヴァンパイアは物語に入り易い題材で、
かつ古典的題材を古臭く感じさせず、ポップな内容に昇華していました。
題材選びから扱い方まで、全てが秀逸ですね。
また、ヴァンパイアに疎い観客も想定し、序盤に弱点が分かるよう配慮されていました。
⑶
モンスターではありますが、吉本新喜劇ではタブーとされる劇中死が描かれました。
ただ、伯爵の死の描写に嫌悪感を抱いた観客は一人もいないのではないでしょうか?
まあ、執事モロミーが伯爵の復活方法を求め東奔西走している頃だと思いますが。笑
以前、森田展義さん主催イベント『きょうと新喜劇』でも触れましたが、
コメディとして楽しい笑いになる死であれば、死の描写もありと考えています。
『死=残酷な描写』ではなくて、生死に関わらず描かれる中身・過程の問題なのかなと。
吉本新喜劇の主武器たる容赦ない容姿・人格弄りの方が遙かに残酷だったりするわけで。
⑷
千葉公平さんとタックルながい。さんの透明人間役(声の出演)は
まるで実際にその場にいるようで、楽しい仕掛けでした。
このような方法で出演者10人を12人に見せられるとは驚きです。
⑸
相変わらず登場人物が生きていて、皆が自分の意思で動き、流れるように物語が展開し、
結果的に面白いオチが生まれる見事な内容でした。
色彩豊かなほど各色が際立つように、
キャラやギャグ主体等様々なタイプの新喜劇が共存することが重要と考えていますが、
仮に吉本新喜劇に『面白い台本』を求めるならば、
その先頭にいるのは、やはり信濃岳夫さんと作家・宮崎さんのコンビではないでしょうか。
(『面白い台本』のみに限定すれば、正直なところ、他より頭二つ分くらい抜きん出ているんじゃないかな、と…)
⑹
僅か9公演で限られた観客しか目にしていないのでは勿体無い作品です。
来年のハロウィン期にブラッシュアップ版をNGKで上演し、TV放映してほしいです。
⒉
シリーズ化への期待
『西遊喜』にも同様の期待を抱きましたが、
毎年ハロウィンシーズンにシリーズ化しても楽しそうです。
シナ「ニンニクは克服したねんけど、今度は筋肉があかんねん」
等と弱点を変更した物語も作れますし、
シナキュラが脇に回って熟女好きモロミーとベテラン女優の純愛ものも作れますし、
オオカミ男とのテーマパーク・バイト編も作れそうです。
小林ゆうさんのエクソシストや松浦景子さんのウェンズデー、大塚澪さんの貞子、
ジャボリさんのジェイソン、川筋ライラさんのチャッキー、
オクレさんのスケルトン、多和田さんの子泣き爺、
島田珠代さんの島田珠代、じゃなくて猫娘
等、座員さんの特徴もモンスターとして活かし易そうですよね。
…と、劇場からの帰宅中、シナキュラ伯爵シリーズを勝手に描いて楽しみました。
[余談]
⒈
オープニングや出演者の傾向
⑴
オープニング
昨今の祇園花月公演は10人芝居の都合、
オープニングシーンは大まかに以下の3パターンに分類されるように思います。
①従来通り新人・若手座員さんが担当 ⇒ 実質8人芝居になりがちで、物語が苦しい
②若手枠削減、主力がオープニング兼任 ⇒ 物語に幅を持たせ易い一方、育成の場が無い
③オープニングシーンのカット ⇒ ②同様
今作は二番目のパターンでしたでしょうか。
⑵
今作の出演者は4リーダーを始め主力揃いで、盛り上がりは確約されたようなものでしたが、
NGK・祇園花月いずれかの本公演に毎週出演する顔ばかりとも言え、
興行と吉本新喜劇全体の戦力維持・強化を両立する難しさを感じます。
⑶
流行り病がひと段落した同週末の祇園界隈は
通行・飲食ともに苦労するほど多くの観光客でごった返していました。
それが壁を隔てると、主力揃い且つ傑作でも僅か数列の観客しかいないのですから、
祇園花月の興行自体、凄く難しく見えます。
どうにかして現況を打開しようとするあまり、
出演者の主力偏重傾向に拍車が掛かってしまうのでしょうか?
⒉
主力偏重の話題で追記的に。
各座組の色がほとんど感じられないほど出演者が被り続ける状況に
4座長4リーダーのポストと百名超の座員さんが在籍する意味を思わず考えてしまいます。
主力偏重・少数精鋭がこのまま続いて大丈夫なのでしょうか?
2021/11/04~08
【よしもと祇園花月・信濃岳夫リーダー週】
『シナキュラ・ザ・ヴァンパイア』 完