(第三景)
⒒
⑴
夜明け前。
ヴァンパイア・シナキュラ伯爵
シナキュラの執事・モロミー
オオカミ男・ウルフ川ウル男(説明上、『烏川』表記)
3名。
(モロミー→シナキュラ←烏川、の立ち位置で)
傷心のシナキュラ。
シナキュラの左右に立つモロミーと烏川が
モロ「まさか、清水しゃんが響ちゃんのこと好きやったやなんて…」
烏川「響ちゃんの方も好きやった…」
モロ・烏川「ハッハッハ!」
シナ「何笑うてんねん!」
モロ「アホや」
シナ「清水さんさえ出てこんかったら上手いこといったのに…(ガックリ)」
モロミーがシナキュラを励ます。
モロ「気持ち切り替えましょ。世の中には素敵な女性が沢山いましゅよ」
⑵
深酒で泥酔気味の浅香と若井が街から戻ってくる。
随分盛り上がった様子で、
浅香「酔っ払ったわ~」
若井「ほんまやね~」
浅香「今やったら、男、誰でもええ!」
若井「男はおらんのかー!」
二人が中央奥客室通路に消えた。
モロ「大チャンス!」
シナ「どこがや!」
すると、烏川が
烏川「いただきます.」」
と、中央奥通路に向かおうとする。
シナ「えっ!?」
烏川「二人まとめて」
烏川もモロミー同様熟女好きのよう。
シナ「ちょっと!」
烏川はそのまま浅香たちを追いかけることはせず、シナキュラのためにロビーに留まる。
⑶
響と清水が上手端通路から現れる。
清水が響に対し、
清水「そろそろ夜明けやな」
清水「俺は館内のチェックをするから、響ちゃんは外の方をお願い」
咲方「分かりました」
下手寄りまで足を進めたところで、清水が響より手前の床にあるゴミに気付く。
(←響←中央床のゴミ←清水、の位置)
清水「ゴミが落ちてる」
清水の声で響が振り返り、響も床のゴミに気付く。
清水と響が同じタイミングでゴミを拾いに行き、二人の指が触れ合う。
清水・咲方「あっ…」
二人が恥ずかしそうに手を引っ込め、少し距離を取る。
清水がまた、
清水「ゴミが落ちてる」
清水と響が同じタイミングでゴミを拾いに行き、また二人の指が触れ合う。
清水・咲方「あっ…」
二人が恥ずかしそうに手を引っ込め、少し距離を取る。
二人の初々しい恋愛を見せられたシナキュラは耐えかねた様子で、
シナ「何回すんねん!」
シナキュラが三度目を阻むべく床のゴミを拾おうとすると、
モロミーと烏川も近づいてゴミに手を伸ばし、三人の指が触れ合う。
シナ・モロ・烏川「あっ…」
三人が手を引っ込め、少し距離を取る。
烏川は直ぐにスタンバイの姿勢を取り、床を見つめる。
シナ「二周目しようとしてる!」
モロミーは響を真似て恥ずかしそうにしていて、
シナ「照れんな!」
清水と響は二人の世界に入っているのか、
シナキュラたち三人のやりとりは全く見えていない様子。
清水「じゃあ、仕事しようか」
咲方「はい」
響が玄関通路に、清水が上手端通路に消えた。
⑷
響と清水の間に自分が入る隙は無いことを悟った、シナキュラ。
シナ「国に帰るっ!」
シナキュラが荷物をまとめに行くため、中央奥・客室通路に消えた。
烏川がシナキュラの心情を慮る。
烏川「目の前であんなん見せられたら、辛いわな」
その9に続く