⒓
⑴
新人アルバイト・茂造
番頭・高井
オーナー・要
三名。
三人が麻理奈と健一を別れさせるアイデアを思案していると、
下手寄り奥通路から若者カップル客の松本・香織が現れる。
松本「観光に行きたいんですけど、観光マップはありますか?」
高井「ご用意しますので、少々お待ちください」
高井がフロントから観光マップを取り出し、松本に渡す。
松本「ありがとうございます」
⑵
松本と香織が外出しようとして、人影に気付く。
松本「元カレが来た!」
二人がロビー中央まで慌てて戻ってくる。
元カレらしきポニーテールの細身の男性・サトシ(村井んーとさ)が現れる。
サトシは松本と香織を見ながら、
サト「やっと見つけたぞ!」
サト「そんな奴のどこがいいんだ!」
サト「結婚の約束までしたのに、なんで俺のもとから居なくなったんだ!」
サト「なあ、慎一郎!」
茂造「えっ、そっち!?」
松本がサトシに対し、
松本「普通の恋愛には飽きたんや」
茂造「普通ちゃうって!」
サト「慎一郎と一緒になれないなら、ここで死んでやる!」
サトシがナイフを取り出し、自分の喉元に近付ける。
香織「バカな真似はやめて!、お兄ちゃん!」
茂造「お兄ちゃん!? なんやねん、この関係性」
(松本の現彼女・香織、その兄・サトシが松本の元彼氏)
松本「今、本心に気づいた!」
松本「俺はサトシを愛してる!」
サト「俺とやり直してくれるのか!?」
松本が頷き、二人が舞台中央に駆け寄り、手を握り、見つめ合う。
香織「お兄ちゃんに慎一郎さんは渡さない!」
香織が松本の腕を掴み、引っ張るように逃げていった。
サト「待て!」
サトシが二人を追う。
松本は踏み止まることもできたはずだが、
香織の行動に従ったあたり、香織への未練もあるのだろうか?
吉本新喜劇の演技とも一般のお芝居とも違う、素人感満載の三人の芝居に、
茂造「何、このぎこちない空気。(苦笑)」
⒔
⑴
新人アルバイト・茂造
番頭・高井
オーナー・要
三名。
合間に、松本・香織・サトシの不思議な芝居が入ったが、
そのおかげで麻理奈と健一を別れさせる方法を茂造が思い付いた様子。
茂造「今のぎこちない空気でええ作戦を思い付いた!」
茂造「オーナー、アザラシ呼んできてくれる?」
要がサキを呼びに行き、二人で現れる。
⑵
茂造の案は、
健一が客に因縁をつけられているところをサキが助け、
何もできなかった麻理奈が健一のことを諦める。
、というもの。
要も一芝居打つことに賛成するものの、
要冷「でも、因縁を付ける役は誰が…」
そこに、先程の松本の元カレ・サトシが二人を見失ったようで戻ってくる。
茂造・高井・要冷「(ぅ)おった!」
サト「イヤですよ!、因縁つける役」
高井「何で知ってるの?」
サト「全部聞こえてました」
サト「因縁つける役、やりませんから」
茂造「1万円で」
サト「やりましょ」
高井「簡単やな!」
茂造がサトシに、
茂造「1万はオーナーから後で貰え」
要冷「えっ!?」
茂造「1万で上手いこといくんやったら、安いもんやないか」
要が納得する。
⑶
高井が台詞を付けていく。
①茂造が温泉水に髪の毛を入れて持ってきて、テーブルに置く
②サト「温泉水に髪の毛入っとるやないか!」と健一に怒り、健一が謝る
③サト「謝って済む問題か!」と健一の胸ぐらを掴む
④サキが健一を庇う
⑤サトシがサキに対し、「何で庇うんや!」
⑥茂造「彼のためなら死ねるんや!」
⑦サトシがサキに対し、「覚悟できてるんやな!」
⑧茂造「殴ったらどうや!」
⑨サトシがサキを一発殴る
⑩今度は健一がサキを庇い、「やめろ!」と村井を殴る(はず)
⑪サトシが逆上し、「死ねー!」とナイフを取り出す
⑫再びサキが健一を庇い、サキ「刺すなら私を刺しなさい!」
⑬茂造「許してやったらどうや?」
⑭サト「女の度胸に免じて許したる」→サトシが去る
⑮サキ「健一さん、大丈夫?」→健一「ありがとう」→二人が愛を確かめ合う
⑯麻理奈にとどめを刺す台詞、茂造「諦めたらどうや?」
⑰何もできなかった麻理奈が諦める
⑷
練習の時間。
茂造が上手端通路奥でスタンバイする。
高井「スタート!」
すると通路奥にいる茂造が、
茂造『諦めたらどうや!?』
高井「早い! 茂造さん、リラックスして」
一通り練習し、観客に正解をイメージさせる。
⑸
因縁をつける客役のサトシがテーブル下手側に座り玄関側を向き、
茂造が健一と麻理奈を呼びに上手端通路奥に行く。
茂造「健一さん、麻理奈さん、お客様がご到着されましたー!」
温泉水を持ってくる役目の茂造はそのまま奥で待機。
健一と麻理奈が現れる。
ここで、下手寄り奥通路から手島・美由紀・平山が現れる。
美由「(英治さんとの結婚のこと、佳介は)どうしたら認めてくれるのかしら…」
練習では想定していない三人が現れ、嫌な予感がするが…
⑹
本番スタート。
茂造がコップに巨大ブロッコリーのような髪が入った状態の温泉水を持ってくる。
茂造「温泉水をお持ちしました!」
茂造の声でサトシが振り返り、コップを見て、
サト「温泉水に髪の毛入っとるやないか!」
健一「すみません!」
サト「謝って済む問題か!」
サトシが健一の胸ぐらを掴む。
予定ではサキが健一を庇うはずだが、美由紀が先に間に入ってしまう。
美由「やめなさい!」
要冷・高井・サキ「…!」
計画が狂い始め、焦る三人。
村井が美由紀に対し、
サト「何で庇うんや!」
茂造「彼のためなら死ねるんや!」
サト「覚悟できてるんやな!」
茂造「殴ったらどうや!」
サトシが美由紀を一発殴る。
すると、平山がゆっくり歩いて美由紀の前まで来て、美由紀をガードする。
平山「危ない」←サトシに殴られるから
茂造「遅い!」
手島がサトシに対し、
手島「何しとんや!」
とサトシを殴る。
すると、サトシがナイフを取り出し、「死ねー!」とナイフを手島に向ける。
計画は狂う一方に。
ここで、若頭・相原と組員・玉置が下手寄り奥通路から現れる。
組長にナイフを向けるサトシを見た相原たちは、サトシを龍神組のヒットマンと勘違いし、
相原「ワレ、何さらしとんじゃ!」
相原がサトシを殴り倒し、
玉置がサトシを無理矢理起こし上げ羽交い締めにする。
相原「海に沈めたるっ!」
羽交い締めのまま連れて行かれる、サトシ。
サト「助けてーっ!!」
すると、茂造がサトシに向けて、
茂造「諦めたらどうや!?」
高井「滅茶苦茶や!!」
暗転
(音楽に合わせ、客席から手拍子が起こる)
その10に続く