⒕
⑴
従業員・清水
新人従業員・川筋
社長・未知
社長の娘で清水の恋人・花梨
須知組四代目組長の妻兼ホテルマン・すち子
組員兼ホテルマン・瀧見ケン
組員兼ホテルマン・多和田マサ
7名。
すち「解決したな」
すち「これで、あんた(=清水)が須知組の五代目組長や」
未知「清水君が組長って、一体どういうこと!?」
♪悲しげな音楽が流れる
清水が未知に事情を説明する。
清水「僕は須知組四代目組長の愛人の息子なんです」
清水「すち子さんは四代目組長の妻なんですけど、跡目を継ぐ子供がいなくて」
清水「それで、すち子さんから五代目になる話を持ち掛けられたんです」
清水「五代目になるなら、吉本組を追い払うって」
未知「そんな…」
⑵
花梨が清水に対し、
花梨「健次さん、組長になっちゃうの?」
清水が頷き、
清水「寂しいけど、お別れや」
花梨「別れたくない!」
未知「ちょ、ちょっと待って!」
未知「二人、付き合ってたの!? こんな歳離れてるのに」
未知「花梨は23。清水君、46やないの!(呆れ)」
感動の場面が続くかと思いきや、歳の差恋愛に呆れ果てる、未知。
未知「清水君が若い子好きなんは知ってたけど…」
未知「花梨、清水君を見てみなさい!」
未知「タニシの裏みたいな顔してるでしょ?」
⑶
花梨が未知に懇願する。
花梨「たとえ組長でも、健次さんと結婚したい!」
未知「そんなことできるわけないでしょ?」
花梨「健次さんはホテルを守るために組長になったのよ!?」
未知「気持ちは分かるわよ!」
未知「でも、組長と結婚したことが世間に知られたら、このホテルは終わってしまう」
花梨「でも…!」
未知「お願いだから、分かってちょうだい」
清水が花梨に優しく、
清水「社長の言うとおりや。分かってくれ」
花梨「…」
⑷
清水「すち子さん、行きましょう」
清水がホテルを去っていく。
ここで、すち子が清水に対し、
すち「ちょい待ち!」
清水が立ち止まり、すち子の方を振り返る。
すち「三日間、あんたという人間を見させてもらいました」
すち「あんた、組長の器やないわ」
すち「喧嘩は弱い。決断力は無い。顔は地味」
すち「暇やったら靴ばーっかり買うてる」
すち「『今、ミナピタポイント10倍デーやで!』言うて」
突然、リアル話を入れる、すち子。
清水「今する話ですか?(苦笑)」
すち「組長の器ちゃう。ミナピタポイントって」
すち「組長失格や」
すち「うち、あんたから手ー引くわ」
すち「その子と結婚でもなんでもしたらええわ」
清水「…!」
見かけによらず人情に厚い、すち子。
ここで、すち子が耳に掛けていた髪を戻し、今公演で初めて普段のすち子になる。
清水「何してんの?」
物語上は深い意味は無い様子。
⑸
未知が清水に対し、
未知「花梨のことをよろしくお願いします」
清水「ありがとうごさいます!」
花梨「お母さん、ありがとう」
未知に祝福される形で二人が結婚できることになった。
すち子が祝福の拍手をし、観客も続く。
すると、すち子が拍手を次第に大きくする。
清水がすち子に対し、
清水「やめて。好きじゃない、そういうの。(苦笑)」
清水「自分が先導してるみたいな拍手、苦手。(苦笑)」
清水「自然なんでいい」
この公演でも何度も見かけた類の拍手に思うが、その観客を前にしても随分正直な清水。
⑹
須知組五代目組長について、
すち「考えたら、近くに組長になりたい情熱的な男がいましたわ」
すち子が多和田に近付き、
すち「よろしく頼むで」
すち「、(瀧見)ケン!」
と、多和田の横にいる瀧見の肩に手を当てる。
喜ぶ瀧見の横で、多和田は放心状態になってしまう。
清水が多和田に近付き、
清水「こいつ(=多和田)、めっちゃ組長になりたがってたのに!」
清水「魂抜かれた顔してる」
清水が多和田に尋ねる。
清水「大丈夫?」
多和田は消え入るような声で、
多和「大丈夫じゃないです…」
すち子が多和田に尋ねる。
すち「(西島)洋介山?」
多和田は消え入るような声で、
多和「洋介山じゃないです…」
多和田は今は随分ショックを受けているが
兄貴分の瀧見が組長なら、幹部格で自分らしく動けるだろう。
⒖ 終
⑴
未知が清水に対し、
未知「私は引退して、旅に出ようと思います」
最後まで社長らしい風格のある言動をさせてもらえない、未知。
未知「清水君、あなたが代わりに社長になってください」
清水「えっ、社長!?」
次第に押問答になる。
未知「あなたが適任です」
清水「流石に早いです!」
未知「そんなことありません」
清水「もう少し勉強したいです!」
未知「勉強だったら社長になってもできます!」
清水「荷が重いです!」
未知「できます!」
清水「無理です!」
次の瞬間、未知が巻き舌で、
未知「じゃかあしいわ、こら! 社長になれ言うとるやろっ!」
清水「…」
未知「チンタラしやがって!」
未知「お前は何事も時間が掛かりすぎや!」
未知「なりたいなりたい言うて、7年! 石の上にも3年言う言葉があるけどなあ!」
未知「もうそろそろ座長にならなあかんのとちゃうんかい!」
未知「こんだけ下もついて来とるのに」
未知「早よならんと、オクレ、死ぬで?」
未知「その次は一の介が死ぬで?」
未知「もうそろそろ決めんとあかんやろ!」
未知「20回目までにならんかったら殺っそ!!」
未知「…」
未知「…」
未知「怖かった~」
未知はこの場面のためにキャスティングされたと言っても過言ではないだろう。
未知も清水の意図を汲み取り、最大限、観客を気持ち良くしてみせた。
⑵
すち「おめでとう」
すち子が清水の社長就任を祝福し、拍手する。
観客もすち子に続く。
すち子が次第に拍手を強めると、
清水「私が拍手を引っ張った感、ほんまやめて?(苦笑)」
繰り返しになるが、この公演でも何度も見かけた類の拍手と思われ、
その観客を前にしても随分正直な清水。
⑶
すち「二人の結婚。社長就任。須知組五代目」
すち「めでたい日やし、今日はホテルに泊まらせてもらうわ」
清水「すみません。暴力団の方は宿泊お断りなんです」
清水の幸せのために身を引いたすち子に対して冷たくも思えるが、
社長として毅然とした態度を見せる、清水。
すち子はすんなり納得したようで、笑顔で清水に対し、
すち「コンプライアンスの厳しい時代やもんな」
すち「ちょっと考えたら分かることや、アッハッハッハ…」
すち「、殺したろかっ!!」
暴力団にも(観)客にも毅然とした態度を取ることのできる清水が社長ならば、
めっきり客足が減り閑古鳥が鳴く花月ホテルもじき賑わいを取り戻すだろう。
終
その12に続く