(第ニ景)
⒎
⑴
従業員・清水
新人従業員・川筋
二人。
清水を五代目組長に据えようとする須知組すち子たちについて、
川筋「昨日はほんま大変でしたね」
川筋「今日も来るんとちゃいます?」
清水「俺が組長の息子であることを社長に知られたら、絶対に交際反対される」
清水が丸椅子に座り、肩を落とす。
清水「はぁ…」
すると、川筋が後ろから近づき、心配する素振りで清水の肩に手を当て、
川筋「清水さん…」
川筋「、ざまあみろ」
清水「なんでや!」
川筋「すみません、励まし方を間違えました!」
慣れないことをしようとして、返って清水を苛立たせる、川筋。
⑵
階段状通路から、若者客の敬介とゆうが現れる。
敬介はなぜかマキザッパを持っている。
ゆうが清水たちに対し、
ゆう「観光してきます」
清水は敬介の持つマキザッパが気になるようで、
清水「なんですか?、この棒」
敬介「僕がゆうちゃんを守らないと」
川筋「自分の髪の毛も守れないくせに」
敬介「なんやとーっ!
敬介は昨日の銃撃戦で皆に盾にされ、トラウマになっている様子。
清水「しっかり警備していますので、ご安心ください」
清水が敬介からマキザッパを受け取り、中央テーブルに置く。
⑶
ゆう「オススメの観光スポットはありますか?」
川筋「それやったら、花月神社がいいですよ。願い事が叶うって有名なんです」
敬介「なら、知り合いのことをお願いしようかな?」
清水「知り合い?」
敬介「はい。その知り合いは頑張ってるんですけど、願い事が一向に叶わないんです」
敬介「座長になれない人で、7年くらい(イベントを)やってる」
敬介「もう、諦めたらいいのに」
清水「よくわからないですけど…頑張ってたらなれるんちゃいます?(苦笑)」
すると、敬介が早口で、
敬介「無理無理無理無理っ!」
清水「そんなことないでしょ。(苦笑)」
敬介「無い無い無い無いっ!」
清水「仲は良いんですよね?(苦笑)」
敬介「仲は良いです」
敬介が『知り合い』のエピソードを清水に話す。
敬介「変な人なんですよ」
敬介「コロナが流行る前に家に呼ばれたんですけどね」
敬介「家に入ったら、開口一番、『俺、男、嫌いやねん』」
敬介「呼んどいて!?」
敬介「どうも、狭い空間で男と一緒に居るのが嫌やったみたいで」
清水「…(苦笑)」
敬介「ほんで部屋に居たら、『お前、足臭いな』」
敬介「今まで言われたこと無い。 その人、異常に鼻が良いんです」
清水「…(苦笑)」
敬介「『ここ踏まんといてくれる?』言われて、」
敬介「荷物置き出して、足臭い人が歩くロードが作られた」
敬介「たぶん、後で掃除し易いようにやと思います」
清水「…(苦笑)」
敬介「僕、気まずいし、聞いたんです。『帰った方がいいですか?』って」
敬介「そしたら、『居ていいよ』言われて」
敬介が首を傾げる。
清水「…(苦笑)」
敬介「それから、その人、僕にご飯作ってくれたんです」
清水「優しい人ですね」
敬介「で、食べてたら、その人がTVをつけて、僕に言うたんです」
敬介『ごめんな。お前の咀嚼音、気になんねん』
敬介が首を傾げる。
異常に神経質なあまり他人には無神経過ぎる『知り合い』のエピソードの連続に、
清水「もうそろそろ、ええんちゃいます?(苦笑)」
敬介「で、『帰りましょうか?』言うたら、『おって』って」
敬介「その人、滅茶苦茶寂しがり屋なんです」
清水「…(苦笑)」
敬介のその『知り合い』は、世の中に何人もいる座長よりも
唯一無二な存在・チャーリー浜の後釜こそ相応しいのではなかろうか?
⑷
ゆう「その人のこと、私も思い出しました」
敬介が話した人物は、ゆうとも共通の知り合いのよう。
ゆう「その人、クイーンにハマってて、」
ゆう「『We Are The Champions』のマネをするんです」
と、アッパー気味に拳を前に突き出すフレディ・マーキュリーのマネをする。
ゆう「でも、側から見たら、ただの元気なおじさん」
清水「…(苦笑)」
⑸
川筋「私もその人、知ってる!」
なぜか、従業員の川筋も加わる。
清水「ええって!、お前は他人やろ!(苦笑)」
川筋「その人に『一緒に写真撮ってくれ』、言われたんです」
川筋『嫌やと思うけど、俺と顔がそっくりやから』
川筋「嫌やっ!!」
清水「…(苦笑)」
川筋「YouTube、毎回6時間くらいやってます」
川筋「その人、座長になれないと思います」
すると、『知り合い』とは無関係なはずの清水がなぜか川筋の顎を掴み、
親指と人差し指で頬を押さえ、川筋の口をくねらせる。
⑹
清水が敬介とゆうに対し、
清水「もう、行ってください!(苦笑)」
川筋も含めた3人を見ながら、
清水「(3人の今後のキャスティング等、)いろいろ考えさせてもらいますので」
ゆうと敬介が観光に出かける。
敬介が玄関通路前で振り返り、清水に対し、
敬介「(YouTube配信、)8時間って聞きましたよ?」
清水「6時間やっ!(苦笑)」
ゆうと敬介が玄関通路に消えた。
⒏
⑴
従業員・清水
新人従業員・川筋
二人。
客の敬介・ゆう、そして従業員の川筋までが
『知り合い』の神経質ぶり・他人への無神経ぶりを暴露したところで、
社長の未知が上手端通路から現れる。
未知「二人、ここにいたのね」
未知「清水君、変な汗が出てるわよ?」
清水「…(苦笑)」
未知「今日から新しい従業員が来るから、清水君には教育係をお願いします」
清水「分かりました」
未知「言うてたら、来たみたいよ」
⑵
ホテルマン姿の須知組すち子・瀧見ケン・多和田マサが現れる。
ホテルマンとしてのすち子は閉じた口から舌をぺろぺろと出すキャラ設定のよう。
清水「ペロペロ、気持ち悪い。(苦笑)」
三人のホテルマン姿に、
清水「お前ら、なんしてんねん!?」
すち「『どんな手を使ってでも、あんたの首を縦に振らせてみせる』言うたでしょ?」
すち子はまた、閉じた口から舌をぺろぺろと出す。
清水「ペロペロ、止めろ!」
このキャラ設定は続くことなく、ここで終わる。
すち子たちは清水を須知組五代目組長にするため、
わざわざ面接を受け、ホテルに入社してきたようだ。
⑶
(多和田・瀧見・すち子→←清水←未知・川筋、の立ち位置で)
未知「この三人の教育係をお願いします」
清水「ホテルマンになるには、後ろ二人(=瀧見・多和田)、汚いと思うんですけど」
すち「これ(=瀧見・多和田)は私が綺麗に洗うてきました。ウタマロ石鹸で」
清水「自分の意思じゃなくて!?」
⑷
清水が未知に対し、
清水「この3人には接客は無理ですって!」
そこに、若者カップルの行人(生瀬行人。オープニングのヤクザとは別人で、一人二役)と
響(咲方響)が宿泊しに訪れる。
すると、すち子が接客を始める。
すち「いらっしゃいませ。お客様、ようこそお越しくださいました」
すち「こちらにお掛けください」
すち子がソファに案内し、行人が下手側、響が上手側に座る。
清水「…!」
すち子らしくない完璧な接客に清水が驚く。
すち「ウェルカムドリンクを二種類ご用意しております」
瀧見「ももを一つ丸ごと使い、もも本来の味を活かしたももジュースと、」
多和「シャインマスカットに炭酸を加えた、果肉たっぷりのマスカットジュースです」
清水「…!」
瀧見と多和田も完璧に接客をこなす。
生瀬「じゃあ、僕はマスカットジュースで」
咲方「私はももで」
すち「マスカットジュースとももジュースですね。かしこまりました」
すち「お部屋の方までお持ちいたしますので」
すち「こちらがお部屋の鍵でございます」
すち子が行人に丁寧に鍵を渡す。
すち「こちらの階段からどうぞ」
すち子たちが部屋に向かう行人たちを見送る。
すち「このご旅行がお客様の思い出の一ページとなることを願い、」
すち「サービス!サービス!サービス!、」
すち「サービスのミルフィーユで対応させていただきます」
すち「それではお客様、」
すち・瀧見・多和「ごゆっくりどうぞー!!!」
行人と響が客室に向かった。
⑸
すち子・瀧見・多和田の接客ぶりに、
清水「完璧や!」
すち「言うたでしょ?、『ホテルマンの仕事を奪う』って」
ここで、瀧見がすち子よりも舞台客席側、更には随分下手側に出て、清水に対し、
瀧見「ワシら、これから、」
瀧見の台詞を清水が素気味に遮る。
清水「行き過ぎや! あんた、二番手!(苦笑)」
瀧見が二番手らしい控えめな位置に慌てて戻り、台詞を言い直す。
瀧見「ワシら、これから、あんたより信頼を勝ち取っていく」
最後に多和田が三番手らしく少し前に出て、清水に対し、
多和「そして、あんたの仕事を奪い取る」
清水が瀧見に対し、
清水「あんたがグダグダやから、(3人1組の台詞が)決まらんかった。(苦笑)」
瀧見「…(苦笑)」
三人は清水を五代目にするため、接客まで学んできたよう。
多和田は独り言のように、ヤクザ映画の似非関西弁風に(歌舞伎口上風に?)、
多和「とは言え、俺は五代目組長になること〜、諦めてへんで〜?」
野心を前面に出す、多和田。
その7に続く