⒕
⑴
(第三景)
青年団主催の夏祭りの日。
祭りの開催を直前に控えた、夕刻。
たこ焼き屋台の前方に、『玉花火』と書かれた筒が置かれている。
上手には、お面の屋台も設置されている。
森田と真希は青の法被を身に纏っている。
森田「真希ちゃん、安心して。俺、カタギになったから」
森田「花火も楽しみにしてな」
真希「うん…」
森田「どないした?」
真希「花火の筒を見たら、なんだか気分が悪くなって…」
森田「…?」
⑵
啓之と健太も法被を着て現れる。
健太はあたふたしながら、森田に対し、
けん「祭りの第一部の司会がダブルブッキングで来られないみたいで…」
けん「森田さん、第一部の司会をしてください!」
森田「俺は第二部の花火の準備で忙しいわ」
森田「第一部は演歌やったな」
森田「有名司会者をキャスティングしたらしいけど…」
森田「司会は誰に頼んだんや?」
けん「タモリさん」
森田「予算、大丈夫やったんか!?」
けん「名前が似ているから、森田さん、お願いします」
森田「無理やって!」
真希「展義さんの司会、楽しみ!」
森田「やります!、やらせていただきます!」
けん「そう言えば、歌手の付き人が司会に相談があるって言ってました」
⑶
健太の彼女・奈臣実が
ビジネススーツ姿の男性・筒井(筒井亜由貴)を連れて現れる。
奈臣「健太さん、お待たせ!」
筒井がゴミ箱の横にキャリーケースを置く。
森田が筒井を見て、
森田「こちらは?」
奈臣「投資コンサルタントの筒井さん」
奈臣「健太さんから青年団の資金を増やしたいって相談を受けて、お願いしたの」
けん「お金が増えたら、祭りが賑やかになって、青年団も復活できると思って」
森田「このこと、皆、知ってんの?」
けん「まだ、知りません」
奈臣「でも、大丈夫よ。凄い人なんで」
筒井「抜けたところもありますが、仕事はしっかりしています」
妙な自己PRをする、筒井。
奈臣「筒井さんは世界を回っているのよ」
筒井「こんな感じです」
と、ブレイクダンスのターンをし、客席に顔を向け、決めポーズをする
客席から拍手が起こる
森田「『世界を回る』って、そういう意味!?」
⑷
けん「あちらが特別席です」
と、健太と奈臣実が筒井を上手袖(奥手側)へと案内する。
筒井は上手端奥手で立ち止まり、
筒井「あっ、キャリーケースを忘れてました!」
と、下手端まで戻ってくる。
筒井はキャリーケースではなく、ゴミ箱を引っ張っていく。
屋台前に居る森田が
森田「抜け過ぎでしょ!」
筒井がゴミ箱に気付き、キャリーケースと交換する。
筒井は森田の前を横切る際に、森田を指差し、
筒井「髪の毛、抜け過ぎてますね!」
筒井が上手袖の特別席に向かっていった。
森田「…ウケたみたいな顔しやがって。(苦笑)」
⒖
⑴
森田、真希、青年団の啓之
三人。
夏祭り第一部に出演する演歌歌手の付き人・佐藤(佐藤太一郎)が現れる。
・森田によるタイガーウッズ弄り
・啓之によるピッコロ大魔王弄り
佐藤登場時の定番ネタが行われる。
啓之のピッコロ弄りに続き、森田が佐藤に対し、
森田「あっ!、あの人ですやん!」
森田「…フレディ・マーキュリー!?」
佐藤「…」
佐藤が曲を歌いノリツッコミするかと思われたが、
佐藤は、苦笑いしながら手足で『ドンドン、パン』とリズムを取り、
武蔵の登場を促すように下手袖を見る。
しかし、武蔵は一向に現れず、
森田「…出てこうへんね。(苦笑)」
最後の顔弄りはアドリブだったのかもしれない。
⑵
佐藤が言うには、
出演歌手はプロ意識が高く、リハーサル無しで一発勝負するタイプのよう。
森田「普通、プロ意識が高い人って、リハーサルを重視しません?」
佐藤「プロにもいろんな人がいてるんです」
森田「言うてること、おかしいって」
佐藤「ドン、シャラップ!(=Don't shut up!)」
森田「…」
森田「それやと『喋れっ!』って意味やで?」
佐藤「素人考えはやめて、先生の紹介文をしっかり読んでください!」
⑶
レイ「そろそろ、第一部が始まるぞ」
青年団のレイとまみが上手袖から現れる。
まみ「楽しみ。晴れて良かったわ。」
⑷
森田がMCを務め、第一部がスタート。
森田は、佐藤が作った紹介文を見ながら、
演歌番組のアナウンサー風に紹介する。
森田『芸歴45年』
森田『恋、酒、夢…男の気持ちを歌います!』
青暗い照明に変わり、『男の子守唄』の前奏が流れる。
奈落を光が照らし、金色のジャケットを着たオール巨人がせり上がってくる。
舞台中央で一番を歌い上げ、大きな拍手が起こる
⑸
森田が巨人に対し、
森田「めちゃくちゃ、歌、上手いですね!」
森田「でも、歯医者の先生でしょ?」
佐藤「何を言ってるんですか!、歌手ですよ」
巨人はプロの演歌歌手でありながら歯科医でもあるようで、
佐藤のことを皆に説明する。
巨人「彼は記憶喪失で、少々混乱しているんだ」
真希「記憶喪失!…私もよ!」
⑹
佐藤「先生。それより、大切な方も来られてます」
森田がMCに戻る。
森田『あの方が来てくれています』
森田『こいつが出るなら、俺も出る』
森田『こいつだけに目立せるわけにはいかない』
森田『五木ひろし…ふるさと』
皆がオール阪神の登場を期待する。
歌声が聞こえてくるが、オール阪神の声ではなく、聞き慣れた声に思える。
現れたのは、花月組の組長・池乃。
池乃がオール阪神の真似で、
池乃「巨人君、一人で何してんねん!」
森田「似てるん、背の低さだけですよ。(苦笑)」
森田「てっきり、阪神さんが来るんかと…(苦笑)」
巨人「阪神君は、今、淡路島で釣りしてる」
⑺
巨人「ほんまは歌唄うたらあかんねん。…『直営業』言われるから」
すると、まみが封筒を巨人と池乃に渡す。
まみ「先生。組長。お車代です」
巨人「一番あかん組み合わせや。(苦笑)」
再度、物語に時事ネタを入れていく。
⑻
巨人「最後まで、ごゆっくりお楽しみください!」
大きな拍手の中、巨人と池乃が去っていった。