⒔ 終
⑴
はじめが、自分を羽交い締めにしている奥重を引っ張りながら、
(下手袖から)現れる。
はじ「俺は何も悪いとこないって!」
上手袖から靖子も現れる。
はじめが靖子に対し、
はじ「大切な家宝を売りやがって!」
そう言いながら、大島から貰ったお札を落とす、はじめ。
アキ「(お札、)捨ててるやん!」
アキ「全然、大切にしてない」
⑵
靖子を追って、忠志・伊賀・直子が現れる。
忠志が靖子に対して、
忠志「待って、『優子』!」
靖子は、忠志と付き合っている時は優子の名前で通していたよう。
靖子を追っていた伊賀と直子は、一先ず、様子を見守る。
⑶
直子が誤って、交通事故の効果音のボタンを押してしまう。
『(ブレーキ音がした後→)ガシャーン!』
伊賀「事故か!?」
伊賀が下手袖に事故の様子を見に向かう。
ここで、アラームが鳴り、
終了『5分前』のボードを持つスタッフが上手端に現れる。
物語が完結する気配が全く無く、
客席から「えーっ!?」とざわついた声が上がる。
⑷
何かを探している真希が現れる。
真希は忠志を見て、
真希「忠志さん!」
真希「私、真実の愛を探していたんだったわ!」
真希「…3年前、あなたとわざと別れた」
真希「それでも、私を追いかけてきてくれるか、真実の愛を確かめたかったの!」
忠志は3年前、優子(=靖子)、真希、二人の女性と付き合っていたことが判明する。
忠志は優子(=靖子)の方を探していたようだが…
大島「二股!?」
奥重「真面目そうな顔して、最低や」
直子「お兄ちゃん、何を考えてんのよ!」
⑸
終了『3分前』。
忠志「違うんや!」
忠志「二人(=靖子・真希)は似ているから、どっちがどっちか間違えたんや!」
大島「最低な奴の発言やな」
直子「似ているのは、胸の大きさだけよ」
靖子・真希「…!」
直子「…すみません、E(カップ)で」
アキ「私、F」
アキコは直子と張り合おうとしているのか、
靖子と真希に畳み掛けようとしているのか…
⑹
直子が靖子に対し、
直子「あなた、お兄ちゃんを騙して、お札を売りつけたでしょ!」
靖子「私は忠志さんを騙してないわ!」
靖子「これには訳があるの!、それは、」
靖子が一言セリフの入った箱から紙を一枚引き、書かれたセリフを喋る。
靖子『ピカチュウが大好きだったから』
靖子「…(苦笑)」
真希「私も忠志さんに一言、言わせてもらうわ!」
真希が一言セリフの入った箱から紙を一枚引き、書かれたセリフを喋る。
真希『私、綺麗?』
客席側に一歩前に出て、目をキラキラと輝かせ、観客に美しさをアピールする。
⑺
忠志が真希と靖子に対し、
忠志「真希もピカチュウが好きやろ?」
忠志「こうなったら、三人でピカチュウ同好会を作ろう!」
靖子の一言セリフを用いて、二股を丸く収めようとする、忠志。
⑻
終了『1分前』。
警官・伊賀が現れ、手錠を掲げ、
伊賀「高橋靖子、はじめ、逮捕や!」
はじめは、間抜けなフリをし、元嫁を追っているように見せて、
靖子と詐欺を共謀していたことが明かされる。
⑼
すると、はじめがドスを取り出し、
なぜか、仲間の靖子を人質に取る。
はじ「この女を殺されたくなかったら…」
アキ「相手、ちゃうやろっ!!(苦笑)」
終了『10秒前』。
カウントダウンが始まる。
はじめが、(メインストーリーに絡む真希ではなく)奈臣実を人質に取り直す。
アキ「この、『ポンコツ甲子園』!(苦笑)」
観客から募集した三つのお題(甲子園・台風・すいか)、全てクリア。
残り三秒。
伊賀「逮捕っ!」
人質の安全などお構い無しに、はじめに近づき、
伊賀がはじめの腕を、直子が靖子の腕を引っ張り、連行していった。
開始50分で『ドカーン!』と爆弾の音がして、終了。
終
[最終的な役柄]
岡田直子…女子高生→刑事
山本奈臣実…女子高生
大島和久…屋台の大将
池乃めだか…掃除のおっちゃん
前田真希…何かを探している女性→アキコの姉、忠志の彼女
西川忠志…一人で祭りに来た男→靖子・真希に二股している男
奥重敦史…(さて?) (なにが?)→医師
伊賀健二…警官
高橋靖子…バリバリ働く女性→詐欺師
はじめ…悪そうな人→詐欺師、靖子の仲間
アキ…屋台のバイトのおばちゃん→真希の妹
[次回公演等]
⒈
⒉
Joy!Joy! エンタメ新喜劇
NGK…11月1日 19:00~
ルミネ…11月3日 19:30~
[雑感]
⒈
物語について
⑴
物語の核になったのは、
西川忠志さん・前田真希さん・高橋靖子さん、演技力に長けた座員さんでした。
毎回、西川忠志さんが登場すると空気が一変し、
本格的に物語が動き出すことが伝わってきますね
⑵
では、物語の方向性を決めた起点は何なのか考えてみますと、
それは、大島さんが引いた一言セリフ、
『御朱印を貰いに行こう』ではないでしょうか?
靖子さんが話題にした『お札』は、
この一言セリフに閃きを得たものではないかと推察しました。
⒉
笑いについて
皆さん凄く面白い中で、特に、はじめさんが強烈でした
正確には、はじめさんと皆さんのチームワークでしょうか
アドリブに強いから面白い、アドリブに弱いから面白くない、
ではないところがお笑いの奥深さですね
⒊
台本のない新喜劇は、
役柄の思考ではなく、演者さんご自身の思考が垣間見える部分も見所ですね。
咄嗟の台詞等、物事に対する反応が千差万別に感じます。
⒋
⑴
以前の『台本のない新喜劇』公演の際にも申しましたが、
吉本新喜劇においては、役柄や衣装が『大まかな台本』になっていると感じています。
屋台の大将なら回し役、
アルバイトなら賑やかし役、
女子高生二人組ならスタート時の客、
ヤクザなら脅迫する役、
警官なら犯人を逮捕する役、
『何かを探している女性』・『一人で祭りに来た男性』は物語担当、
…といった具合ですね。
『屋台周辺で事件が起こり、大将やアルバイトが巻き込まれる』、
という大筋が公演開始前に既に出来上がっています。
この大筋を根本から崩すには、与えられた設定に全員一丸で抗う必要があって、
現実的にはかなり難しいのではないでしょうか?
⑵
観客からお金を取る商業イベントであるため、
即興劇であっても、新喜劇として綺麗に着地させる必要性を感じられていて、
落とし所として、事前に役柄等を決められているのではないかと思っています。
⑶
…ではありますが、一観客としては、
スタート時に役柄も衣装も用意されない、全員役自由の、
舞台上だけで全てが作られる『真に台本のない新喜劇』もいつか観てみたいですね。
アキさん始め、様々な役柄を演じ分けてきた才能溢れる座員さん達ですから、
衣装が無くとも、どんな役にも成り切ることができると思います。
劇が混沌としても良いと思います。
飛んだ展開を見せる、破茶滅茶な完全即興劇を期待しています
2019/08/08
【台本のない新喜劇】 完