⒊
⑴
シゲオ・アキコ・清水の絡みが続く。
清水に無視され不機嫌になるシゲオに対し、アキコが
アキ「シゲオもストレス溜めたらあかん」
アキ「水羊羹、買ってきたわよ」
と、バッグから水羊羹を取り出す。
シゲ「おお、ワシの好きな『たねや』の水羊羹やないか!」
シゲ「…でも、食べたら、あいつがまた怒るんちゃうか?」
シゲオが子供のように可愛らしく、囁くように歌い始める。
シゲ「♪食~べたいな~」
シゲ「♪食~べたいな~」
シゲ「♪食~べたら し~ずかに な~るのにな~」
シゲ「♪食~べたいな~」
アキ「ホーイ」
シゲ「♪食~べたいな~」
アキ「ホーイ」
シゲ「♪食~べたら し~ずかに な~るのにな~」
アキ「ホーイ」
観客が手拍子を始め、歌のテンポが早まる。
シゲ「♪食ーべたいなっ!」
アキ「ホイ!」
シゲ「♪食ーべたいなっ!」
アキ「ホイ!」
シゲ「♪食ーべたら しーずかに なーるのになっ!」
アキ「ホイ!」
苛立ちが限界に達した清水が置き上がり、
シゲオに対し、
清水「食べたらええですやん!、水羊羹くらい」
シゲ「怒らんの?」
清水「水羊羹食べて、なんで怒らなあかんのや!」
清水「ほんで、『ホイ!』がめっちゃ腹立つ!」
清水「何の祭りや!」
結局怒る、清水。
※
補足
・「ホイ!」の掛け声
・テンポアップしての手拍子
は初日は無く、
二日目に一言「ホイ!」が入れられました。
一週間の公演中にブラッシュアップした印象でした。
⑵
シゲオがアキコに、
シゲ「アキコ、スプーンめくってくれる?」
アキコがビニールの包装からスプーンを取り出し、シゲオに渡す。
シゲオはスプーンで水羊羹を食べるかと思いきや、
水羊羹のカップに直接口を当て、カップを回しながら食べ始める。
シゲ「アハハーッ、チュッチュ、アハッ、アハハーッ、チュッチュ」
変顔で奇声を発しながら水羊羹を食べる、シゲオ。
アキ「素敵」
清水「やかましい!」
清水「何が『素敵』や!」
清水「なんや、その汚い食べ方!」
清水「『アハー、チュッチュ』って」
清水が変顔でシゲオの真似をする。
シゲ「違う」
シゲ「アハハーッ」
清水「アハハーッ」
シゲ「違う、ナァハハーッ」
清水「どっちでもええわ!」
アキ「風情があっていいわね」
アキ「風情があるんは、たねやの水羊羹だけや!」
⑶
清水「ほんで、嫁にスプーン開けさせといて、なんでスプーンで食べへんねん!」
シゲ「スプーンはいざという時のために取ってある」
清水「今や!今、使え!」
シゲオはスプーンを使い、あっという間に食べ切る。
清水「ちょっと、ええか?(苦笑)」
清水「あんた、長丁場で疲れて、甘いもん欲しなって、普通に食べとるな!(苦笑)」
⑷
清水「取り敢えず、水羊羹禁止や!」
清水「痛たっ…」
清水がベッドに横になる。
シゲオがアキコに対し、
シゲ「水羊羹禁止って、どこで言われる?」
シゲ「聞いたことある?」
シゲ「飲食禁止やったら分かるで?」
シゲ「水羊羹禁止って…」
清水が置き上がり、シゲオに対し、
清水「やかましい!」
清水「寝るの、邪魔せんといて!」
シゲ「病名は?」
と、突然、アドリブを入れる、シゲオ。
清水「び潰瘍!」
シゲ「び潰瘍、言うたで。(苦笑)」
清水「噛んだだけや!(苦笑)」
清水が横になる。
シゲ「噛んだん認めるとは、素直なところもあるんやな」
⑴
シゲオ・アキコ・清水の絡みがまだまだ続く。
シゲ「あっ、思い出した」
シゲ「ワシが退院したら、町内会で夫婦漫才を披露することになってるやろ?」
シゲ「アキコ、ワシの大爆笑台本、覚えたか?」
アキ「ばっちりよ」
シゲ「アキコがボケ、ワシがツッコミ」
シゲ「アキコのボケを生かすも殺すも、ワシ次第や」
シゲ「アキコには言うてなかったけど、ワシ、20歳の頃、NSCにおったんや」
清水はシゲオの話に興味を持ったのか、少し頭を上げ、話に耳を傾ける。
シゲ「NSC5期生でな」
シゲ「当時は入会金と月謝を払う仕組みやった」
シゲ「1年間って約束で入会金を払ったのに、5ヶ月で終わった」
シゲ「『TV番組で忙しくなった』って理由で」
シゲ「こんなん、5期生だけやで~?」
アキ「昔から色々あるんやね~」
清水「ややこしい方向に行くから、止めましょ!(苦笑)」
⑵
シゲ「その時、ワシはツッコミが鋭いって言われて、」
シゲ「当時付いたニックネームが『カミソリのシゲ』や」
シゲ「アキコ、どんどんボケて行けよ」
⑶
漫才の練習をしようと、
シゲオとアキコが舞台前方に立つ。
シゲ「シゲオでーす!」
アキ「アキッ、…コでーす!」
シゲ「アキコ、まだ、大爆笑台本が頭に入ってないようやな」
と、練習を一旦止め、
シゲオがベッドに戻り、アキコも椅子に座る。
シゲ「アキコには言うてなかったけど、ワシ、20歳の頃、NSCに…」
清水「そっからかい!(苦笑)」
シゲ「その時、ワシはツッコミが鋭いって言われて、」
シゲ「当時付いたニックネームが『カマイタチのシゲ』や」
シゲ「アキコ、どんどんボケて行けよ」
⑷
シゲオとアキコが舞台前方に立つ。
シゲ「シゲオでーす!」
アキ「アキコでーす!」
シゲ・アキ「夫婦でーす!」
アキ「歳を取ると、薬が増えてくるね」
シゲ「ワシもや。アキコはどんな薬、飲んでんの?」
アキ「鎮痛剤」
シゲ「へー」
アキ「安定剤」
シゲ「ほう」
アキ「漂白剤」
シゲ「あらー」
清水「…?」
アキ「私、今ダイエットしてるの」
シゲ「ダイエット!、アキコは何のダイエットしてんの?」
アキ「ウォーキング」
シゲ「へー」
アキ「ハイキング」
シゲ「ほう」
アキ「バイキング」
シゲ「ほほう」
清水「…」
アキ「私、南の島でバカンスしたい」
シゲ「バカンス!、アキコはどこの島に行きたいの?」
アキ「グアム島」
シゲ「へー」
アキ「バリ島」
シゲ「ほう」
アキ「自民党」
シゲ「安倍さん、こんちには」
清水「突っ込めやーっ!」
清水がベッドから飛び出してくる。
清水「やめや、やめ!」
清水「こんなん、漫才ちゃう!」
清水「全然ツッコまんな!(呆れ)」
清水「漂白剤言われたら、」
清水「『薬ちゃうがな!』、言わなあかんでしょ!」
シゲオが不思議そうに清水の話を聞く。
清水「…えっ、気づいてないの?(呆れ)」
清水「バイキング言われたら、」
清水「『90分食べ放題でお腹いっぱい!心も満足!…ドアホ!』、」
清水「言わなあかんでしょ!」
客席から拍手が起こる
⑸
清水「ボケは面白かった!」
清水「ツッコミ、全くできてない!」
清水「己は『カマイタチのシゲ』、ちゃうんかっ!!」
アキ「めっちゃ怒るやん」
ここからは清水がノリツッコミのお手本を披露する時間。
シゲオが鎌で斬るフリをすると、
清水が首を押さえ、
清水「あーっ!」
清水「ワオッ、キレテナーイ!…こら!」
清水「これがカマイタチじゃ!」
観客の拍手が起こる
アキコが吹き矢を吹くフリをすると、
清水が首を押さえ、
清水「あーっ!、奇跡的にツボに入って気持ちいい!…バカッ!」
シゲオが手裏剣を投げるフリをすると、
清水が楽しげにお尻を左右に動かし、手裏剣をかわすふりをしながら、
清水「手裏剣ダイエット!…ドアホ!」
アキコが空気入れでタイヤに空気を入れるフリをすると、
清水が飛び跳ねて、破裂するように大の字を作り、
清水「バーン!…御飯!(=晩御飯)」
シゲ・アキ「…(苦笑)」
シゲ「ピヨピヨピヨピヨ」
と、水鉄砲で清水を撃つフリをすると、
清水「えーっ、…パスで」
シゲ「パスすんの?(苦笑)」
清水「それもツッコミのひとつじゃ!、『すかし』じゃ!」
⑹
シゲ「胃が痛い言うてたのに、めっちゃ楽しそうにしてるな。(苦笑)」
清水「やけくそでやっただけや!」
清水「今後、漫才を語るな!」
清水「漫才禁止じゃ!」
シゲ「こないに怒られるかー?」
と、アキコの顔を見る、シゲオ。
頷いて励ます、アキコ。
清水とシゲオがベッドに戻る。