⒉
⑴
清水「建て替えで、旦那様は仮住まいに引っ越すことになったけど、」
清水「引越し業者、遅いな…。2時に来る言うてたのに」
『ピンポン』
玄関のチャイムが鳴る。
引越し業者の信濃(信濃岳夫)とアキ(アキ)が現れる。
二人は青のつなぎを着て、黒の帽子を被っている。
アキは大小様々な段ボールを乗せた台車を押している。
信濃「信濃引越センターです!」
清水「執事の清水です」
⑵
①
(アキ→信濃→←清水、という立ち位置で)
信濃とアキは客席の方を向き、CM風に、
信濃『荷物を運び!、』
アキ『希望を運ぶ!、』
アキ・信濃『僕たち、信濃引越センターです!』
と、上手側に立つ信濃がしゃがんで、下手側を指差し、
下手側のアキが信濃の背後で上手側を指差し、スーパー戦隊のような決めポーズを作る。
同時に『シャキーン!』と決めポーズの効果音が流れる。
清水「…何?(呆れ)」
信濃「挨拶です」
②
信濃とアキはまた客席の方を向き、CM風に、
信濃『スピーディな仕事で!、』
アキ『お客さんが満足!、』
アキ・信濃『僕たち、信濃引越センターです!』
と、決めポーズを作り、
『シャキーン!』と決めポーズの効果音が流れる。
清水「いい加減にしてください」
③
信濃とアキは、清水を挟む形で客席の方を向き、CM風に、
信濃『豊富な経験と!、』
アキ『確かな技術!、』
アキ・信濃『僕たち、信濃引越センターです!』
と、清水を間に入れて三人で決めポーズを作り、
『シャキーン!』と決めポーズの効果音が流れる。
清水「巻き込むな!」
⑶
アキ「お客様には好評なんですよ?」
清水「好評か知らんけど、旦那様の前ではしないでください」
信濃「…旦那様?」
清水「はい。自ら会社を立ち上げ、大きくした、立派な社長なんです」
アキ「自ら会社を立ち上げ、大きくした、立派な社長なんですね」
清水「…今、なんで、繰り返したんですか?」
アキ「清水さんに教えてあげようと思って」
清水「自分で言うてるんで、分かってます」
アキ「理解できてるんですね?、OK!」
アキのトークに首を傾げる、清水。
清水「…(呆れ)」
⑷
信濃とアキが清水に自己紹介する。
信濃「社長の信濃です」
清水「あんたが社長?」
信濃「少数精鋭でやっています!」
アキ「従業員のアキです」
アキ「皿を包む競技・近畿大会で6位になりました」
清水「…微妙ですね」
清水「社長は何位?」
信濃「僕ですか?…えーっと、41位です」
清水「だいぶ負けてるやん。(苦笑)」
アキのアドリブを起点に、執事が信濃にアドリブを振ったようにも見える場面。
清水「ほんまに、引越し、任せて大丈夫ですか?」
信濃とアキは客席の方を向き、CM風に、
信濃『大きなことはできませんが!、』
アキ『小さなことからコツコツと!、』
アキ・信濃『僕たち、信濃引越センターです!』
と、決めポーズを作り、
『シャキーン!』と決めポーズの効果音が流れる。
清水「西川きよしやん!(苦笑)」
清水「パクってるやん!」
アキ「パクってないです!」
清水「ほんまですか?…そりゃ、ごめんなさい」
アキ「パクってないです!」
清水「今、ごめんなさい言ったでしょ?」
アキ「しつこく否定してからゴメンなパターンですか?」
清水「…この人、よう喋るな。(呆れ)」
⑸
(アキ・信濃→←清水、という立ち位置で)
清水が信濃・アキと自分との間に手で線を引く素振りをし、
清水「あの、ここから先(=自分側)はお金が発生してるんでね」
清水「ちゃんと仕事してください」
清水が、帽子を斜めに被った信濃に対し、
清水「帽子も真っ直ぐ被れ!」
すると、信濃がさらに斜めにして被る。
信濃は爽やかな顔で清水に尋ねる。
信濃「こういうの、好きですか?」
清水「面白いって意味で?」
信濃が頷く。
清水「それやったら、全くおもんない」
アキが清水を指差し、
アキ「気難しい人ですね!」
アキ「大人として、そういう態度、やめましょ!」
信濃「ほんまですよ!」
信濃も清水を指差すと、
清水「顔差すん、やめろ!」
と、信濃の手を「バチン!」と音をさせ払い落とす。
信濃がまた清水を指差すと、
清水「やめろて!」
と、信濃の手を「バチン!」と音をさせ払い落とす。
アキ「叩くんはダメです!」
アキ「誰も得しない」
アキ「時間が勿体無い」
清水「…(イライラ)」
信濃「イライラしてる。(苦笑)」
アキ「顔、怒ってはる。(苦笑)」
信濃とアキは客席の方を向き、CM風に、
アキ『清水さんの怒りと!、』
信濃『みんなの笑顔!、』
アキ・信濃『僕たち、信濃引越センターです!』
と、決めポーズを作り、
『シャキーン!』と決めポーズの効果音が流れる。
清水「…今の、よう鳴ったな。(苦笑)」
アドリブの決めポーズだったよう。
アキ「もう一人スタッフがいる。鳴らす役」
清水「スタッフ、ここに呼んでくれる?」
アキ「呼べません!」
清水「呼べんのね?」
⑹
信濃たちが作業に取り掛かることにする。
清水が中央奥の棚に近付き、木箱を持ち、
清水「たくさん荷物がありますが、特にこの木箱は気を付けてください」
清水「高価なお皿が入っていますので」
清水は台車に積まれたダンボールを見て
清水「その荷物、うちのとちゃうよね?、うちのはまだ梱包してないんで」
アキ「これは隣の引越しのやつです」
アキ「外に置いていたら、盗まれるんで」
清水「『シャキーン』に見張らせろよ」
アキ「シャキーン専門やから、無理」
清水「客に溜め口はおかしいやろ!」
アキ「パーソナルスペースを侵略されて、イライラしてる。(苦笑)」
アキの発言に電車の通過音が重なり、
清水「…電車の音で何言うてるか、わからん。(苦笑)」
⑺
清水「旦那様を呼んできます」
清水が屋敷の主人を紹介すると、上手端通路に消える。
⑻
信濃とアキ、二人。
信濃はロビーを見渡し、
信濃「しかし、大きな会社やな!…あっ、屋敷やな!」
アキ「アッハッハッハ」
信濃のセリフ間違いを笑ってスルーする、アキ。
アキ「あの執事、めんどくさい奴でしたね」
⑼
アキ「この屋敷、お化けが住んでいる噂がありますけど…」
信濃「どうせ、ガセネタやろ」
アキ「でも、僕、何か居るように感じるんです」
若干、不安そうな顔をする、アキ。
その4に続く