⒍
⑴
(第二景)
由美が喫茶店の前を掃除している。
そこに、伊賀が現れる。
伊賀「由美さん、こんにちは」
由美「伊賀さん、久しぶりですね」
伊賀「新名が藍五郎に骨を折られて、入院。…大変でした」
由美「でも、藍五郎さんも悪気は無かったみたいだし…」
由美「藍五郎さん、あれから、しっかり店番をしていましたよ」
伊賀「安世さんは?」
由美「安世は毎日、徹郎君の看病をしに行っているわ」
⑵
新名が退院し、右腕にギプスをした状態で現れる。
新名の横には安世が付いている。
新名「安世ちゃん、ありがとな」
由美「安世は、徹郎君のお見舞いに行くの、楽しみにしていたのよ?」
由美「徹郎君、うちの娘を貰うてくれへんかしら?」
安世「ちょっと!、お母さん!」
新名「そうなったら、嬉しいです」
安世「…私も」
由美「お似合いね」
由美「徹郎君と安世」
由美「私と大将」
と、伊賀の腕に手を回す、由美。
伊賀が慌てて、由美から離れる。
伊賀「やめてください!、どさくさに紛れて…!」
由美「どさくさに紛れましょうよ?」
⑶
新名「でも、安世ちゃん。前の彼氏は…」
安世「何で、前の彼氏の話ばかりするの!?」
由美「ヤキモチよ」
安世が不機嫌そうに喫茶店に入り、由美が安世をなだめに向かった。
⑷
新名と伊賀、二人。
伊賀「復帰できて良かった」
伊賀「お前が入院している間、犯人の太田と安世さんは接触が無かったみたいや」
伊賀「藍五郎が言うてた」
伊賀「麻薬の取引相手の情報も少しずつ入ってきてる」
伊賀「俺は取引相手の方を追うから、ここは任せた」
新名「分かりました」
新名「藍五郎は?」
伊賀「どこに行ったんやろな?…まあ、そのうち、戻ってくるやろ」
伊賀が去っていった。
⒎
⑴
新名、一人。
劇冒頭に怒って帰った客、椎森と本山が現れる。
椎森が屋台を見て、
もり「昨日は行列でめっちゃ混んでたけど、今日はラッキーや!」
新名「…行列?」
二人は屋台の常連客になっている様子。
あれから、何があったのだろうか?
⑵
藍五郎は買い出しに行っていたようで、
買い物袋を両手に持ち、帰ってくる。
藍五郎は椎森(敬介)と本山(悠斗)を見て、
酒井「けいちゃん(=敬ちゃん)、ゆうちゃん(=悠ちゃん)、いらっしゃい!」
酒井「しかし、毎日来て、よう、飽きへんな」
新名が上手に藍五郎を呼び寄せる。
椎森達に聞こえないように、小声で藍五郎に尋ねる。
新名「行列ができてるらしいけど、どういうことや?」
酒井「犯人来うへんし、暇やから、たこ焼き屋も頑張ってみようかなって」
酒井「そしたら、客来るん、快感になりました」
新名「何、頑張ってんねん!」
新名「俺たちの仕事は!?」
酒井「分かってます!、たこ焼き屋っす!」
新名「刑事や!」
藍五郎はたこ焼き屋の仕事にのめり込んでいて、メイドも雇ったよう。
新名「メイドって、何、考えてんねん!」
⑶
メイド服を着た、スタッフの鮎美(木下鮎美)と花子(山田花子)が出勤してくる。
新名「一人、無理してるやん!(苦笑)」
花子が新名に対し、
花子「あなた、なんてことを言うの!」
花子「この子(=鮎美)に謝りなさいよ!」
新名「あなたのことです!」
⑷
どうやら、たこ焼き屋台が流行ったのは、メイド化が理由で、
椎森達もメイドスタッフ目当てで屋台に通っているよう。
もり「待ってたよ!」
本山「最高や!」
鮎美と花子が椎森達に対し、
鮎美「お帰りなさいませ、ご主人様。ニャンニャン!」
花子「お帰りなさいませ、ご主人様。ゲロゲ~ロ!」
新名「後の奴、全然、可愛いない!(苦笑)」
鮎美「鮎美で~す!」
花子「エリザベスで~す!」
新名「後の奴、全然、名前と印象が違う!(苦笑)」
花子「ハーフなんです。…四国と九州の」
新名「なんや、それ!」
新名「本名は?」
花子「花子です」
⑸
鮎美が恐る恐る、藍五郎に話し掛ける。
鮎美「あの、店長、シフトの件なんですが…」
新名「いつから店長になったんや!?」
鮎美「月水金でお願いできないでしょうか?」
酒井「それは困るな」
鮎美「バイトを掛け持ちしていまして…」
酒井「知らん!、ワシには関係あらへん
」
酒井「週7で働け!目ーから血ー出るまで働けや!」
すっかり、ブラックバイト化している様子。
花子が鮎美を庇う。
花子「店長!私が鮎美の分まで働きます!」
酒井「お前は15分でええ!」
⑹
椎森と本山がたこ焼きを注文する。
鮎美「二人前ですね。かしこまりました」
鮎美が人差し指と親指で丸を作り、可愛らしくOKサインをする。
花子「かしこまりました」
花子は人差し指と親指で丸を作り、手のひらを上に向け、『銭』のポーズをする。
新名「金儲け、露骨すぎるやろ!(苦笑)」
⑺
たこ焼きが完成。
鮎美と花子がたこ焼きを持ち、下手に立つ。
鮎美が椎森と本山に対し、
鮎美「たこ焼きを食べたかったら、こっちにいらっしゃい」
鮎美「ふーふーしてあげるわ」
鮎美「ふー、ふー」
と、たこ焼きに息を吹きかけ、熱を冷ます。
新名「あくどい商売してるなあ…」
花子が椎森と本山に対し、
花子「たこ焼きを食べたかったら、こっちにいらっしゃい」
花子「ふーふーしてあげるわ」
花子「ぶっ!、ぶっ!」
と、たこ焼きに唾を吹きかける。
新名「唾やん!、汚な!(苦笑)」
⑻
花子「たこ焼きより、私を食べて?」
花子「カモ~ン」
花子「早くしないと、花子が逃げちゃうぞ」
新名「誰が行くか!」
もり・本山「最高やーっ!」
と、花子に吸い寄せられる。
新名「嘘やろ!?(苦笑)」
すると、様子を見ていた藍五郎が、
酒井「花子ーっ!」
と、花子に吸い寄せられる。
椎森・本山よりも前に行く、藍五郎。
新名「お前も!?」
⑼
新名が三人を止め、藍五郎に尋ねる。
新名「さっき、冷たく当たってたやん!、『15分でええ!』って」
酒井「花子が可愛すぎるから、15分以上、働かせたくなかった」
新名「まじか…」
その6に続く