⒊
⑴
喫茶店の娘は買い出しに出かけた様子。
伊賀「先にお母さんの方を紹介しておこうか」
伊賀が喫茶店に呼び掛けると、喫茶店オーナーの由美(末成由美)が現れる。
由美「ごめんやして、おくれやして、ごめんやっしゃ~」
伊賀「けったいな挨拶はやめてください!」
由美「これを言わないと湯婆婆と間違えられるんで」
由美「何の用でしょうか?」
伊賀「アルバイトを紹介させていただきたくて」
新名と藍五郎が由美に自己紹介する。
新名「アルバイトの新名徹郎です」
酒井「アルバイトの『花月署の』酒井藍五郎です」
新名「あーっと!」
新名「花月町に住んでいる、酒井です」
酒井「上手いっ!」
⑵
由美も自己紹介する。
由美「喫茶店のオーナーでミスユニバースの…」
と、ここから観客に「えっ!」を言わせるまでの一連のくだりに。
藍五郎がギャグを続ける由美に
酒井「…なんやねん?、このオバハン」
由美「『オバハン』って、失礼よ!」
酒井「すいません、もう言いません!約束します!」
酒井「だから、指切りしてください!」
と、藍五郎が小指を由美の前に出す。
由美が小指を交わらせる。
すると、藍五郎だけでなく、由美もビブラートを効かせて歌い出す。
酒井・由美「♪指切りげんまーん、嘘を吐いたら針千本、」
酒井・由美「♪はーりーせーんーぼーん、飲ます! 指切った!」
新名「なんで、知ってんの!?」
新名「ほんで、ビブラートが凄い!(苦笑)」
⑶
由美「娘が買い物から戻ってきたら、紹介するわね」
そう話していると、由美の娘・安世(井上安世)が買い出しから戻ってくる。
安世は買い物を入れたビニール袋を両手に下げている。
安世「ただいまー」
新名が安世の顔を見て驚く。
新名「…安世ちゃんか?」
安世「…徹郎君!?」
新名「…久しぶり」
安世「…変わってないわね」
藍五郎が安世を見て、
酒井「髪、切ったな」
新名「お前は(安世ちゃんのことを)知らんやろ!」
新名と安世は高校時代の同級生のよう。
新名は、たこ焼き屋台で働き始めたことを安世に伝え、
藍五郎・伊賀も自己紹介する。
⑷
由美が安世の持つスーパーの買い物袋を見てから、安世に対し、
由美「重たいやろ?、持っていくわ」
安世「大丈夫よ」
伊賀「それやったら、僕が持っていきますよ」
伊賀が安世の買い物袋を持つ。
由美が安世に対し、
安世「徹郎君と積もる話があるやろ?」
由美「私は大将と積もる話があるから…グェッヘッへ」
伊賀「…」
由美と伊賀が喫茶店に入っていく。
暫くして、「ワーッ!」と伊賀の悲鳴が聞こえ、
喫茶店から助けを求める伊賀の手が見える。
しかし、伊賀の手は、直ぐに喫茶店へと吸い込まれていった。
新名「大丈夫かな…?」
酒井「妖怪や…」
⒋
⑴
藍五郎・新名・安世、三人。
(舞台下手に新名→舞台中央奥寄りに藍五郎←舞台上手に安世、という立ち位置で)
藍五郎を挟んで、新名と安世が話す。
安世「徹郎君がまさかこんなところに…」
新名「安世ちゃんが転校して以来やな…」
藍五郎が新名と安世を交互に見る。
酒井「…」
酒井「何?、この気まずい感じ」
酒井「もしかして、高校の時、付き合ってたんちゃうん?」
新名「いや、その…」
新名と安世がお互いに目線を逸らす。
酒井「マジかよ!…冗談で言うたのに」
酒井「ほな、久しぶりにチューせえ!」
新名「おっさんか!」
⑵
安世と新名が高校時代のことを話し始める。
安世「私がフラれたの」
新名「フラれたんは、俺の方や…」
新名「ユニバでデートの約束をしていたのに、安世ちゃん、来んかった」
新名「その夜に、『さよなら』ってメールをもらった…」
安世「私はユニバに行ったわよ!」
安世「徹郎君が来なかったから、『さよなら』ってメールしたの」
安世「徹郎君、あの日、どこに居たの!?」
新名「約束したユニバに居たよ!、ユニバーサルスタジオジャパンに」
安世「えっ!?、ユニバって、『ユニットバス卸売市場』じゃなくて!?」
酒井「どこにあるんや!」
安世「…大山の方」
酒井「鳥取やん!」
酒井「普通、ユニバ言うたら、USJのことやろ!(呆れ)」
安世「えっ、じゃあ、私がユニバのことを勘違いしてたの?」
安世「私がユニバーサルスタジオジャパンに行ってたら、今も付き合ってた…」
安世「ふふっ…私、めっちゃアホやな。(微笑)」
酒井「アホやで。(呆れ)」
新名と安世は誤解で別れたことが分かる。
⑶
安世「私が勘違いしなければ、あの人と付き合って苦労することもなかった…」
新名「…あの人?」
安世「前の彼氏」
安世「私のお金を持ち逃げした」
安世「調子の良いことばかり言っておいて…私、嘘を吐く人は大嫌い!」
安世「あのボケカス!」
と、安世が屋台の椅子を蹴る。
酒井「ワシの店になんしてくれとんねん!」
新名「お前の店、ちゃう!大将の店や!」
安世の話す『前の彼氏』が目当ての犯人のよう。
⑷
新名「しかし、大将、遅いな…」
すると、大将で警部の伊賀がベルトを外し、チャックを下ろし、服を乱れさせ、
疲れた顔で喫茶店から現れる。
由美から激しいアタックを受けた様子。
伊賀の姿に、観客の女子中学生が「キャーッ!!」と悲鳴を上げる。
藍五郎が一瞬客席の方を見てから、伊賀に
酒井「…思春期やから。(苦笑)」
新名が伊賀に尋ねる。
新名「喫茶店で、何かありました?(苦笑)」
伊賀「ギリギリセーフや…。何も無かった」
⑸
(新名→藍五郎←安世、という立ち位置で)
自分の誤解で新名と別れたことを知った安世は
新名を意識したのか、恥ずかしそうにする。
安世が新名に対し、
安世「買い物、行ってくるね!」
買い物から帰ってきたばかりで、また買い物に行こうとする、安世。
安世は早足で新名の前を通り過ぎた辺りで、新名の方を振り向き、
安世「徹郎君とまた会えて、嬉しい」
安世「…運命ってやつかな?」
安世が下手袖に消えた。
新名「安世ちゃん!」
次第に小さくなる安世の背中を見つめる、新名。
⑹
(←新名←藍五郎、という立ち位置で)
藍五郎が新名に対し、可愛らしく、
酒井「…運命ってやつかな?」
と安世と同じセリフを言い、額を新名の背中にそっと当てる。
新名「何してんや!」
酒井「安世さん、『彼氏とは別れた』言うてましたね」
伊賀「新名。捜査に私情は挟むなよ」
新名「分かっています」
⑺
伊賀「犯人のことをもう一度確認しておく」
伊賀がポケットから大きめの紙を取り出す。
紙を広げると、男(太田芳伸)の顔写真が現れる。
伊賀「これが犯人の太田や」
藍五郎が太田の顔写真を見て、笑い始める。
酒井「めっちゃ、オモロい顔してますね!」
酒井「角刈りに髭面って!」
新名「それはお前や!」
藍五郎が再び太田の顔写真を見て、
酒井「よう見たら、バリィさんにも見えますね」
客席の修学旅行生が沸く
バリィさんは、愛媛県今治市のゆるキャラで、
この回の藍五郎は、修学旅行生相手に徹底的に媚び笑いを狙う作戦のよう。
藍五郎は伊賀を見て、
酒井「警部は新幹線みたいです」
伊賀「どこがや!」
酒井「…『どこが』?(苦笑)」
⑻
伊賀「私は一旦本部に戻る」
伊賀「娘の話では犯人と別れたようだが、太田は娘と連絡を取ろうとしている」
伊賀「郵便物の方も見張っておいてくれ」
新名・酒井「分かりました!」
伊賀が去っていった。
⑼
藍五郎が新名に、
酒井「先輩、まだ安世さんのことが好きなんですね」
新名「まだ、忘れられへんて言うか…」
酒井「好きなんやろ?、オイッ、オイーッ!」
新名「…」
返答に困っている様子の新名。
次の瞬間、藍五郎が新名の股間を握る。
新名「チンチン触るな!」
酒井「好きなんやな。会えて良かったやん」
新名「俺、先輩やぞ!」
その4に続く